このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください






IC定期の読み取り問題



※写真は2009年4月撮影


首都圏に舞い戻ってきてIC定期を使うようになって半年以上が過ぎましたが、先日ある経験をしたところ、その話題から意外な体験談を耳にしました。そして何気なく使っているIC定期に関して、構造としての拙い面が目に付いたのです。

●傍迷惑な経験
それが発生したのは朝ラッシュ時の混み合う都心の駅でした。
津田沼駅で入場したIC定期を出口改札でタッチしたところ、「ピンポーン」となっての通せんぼです。
タッチの仕方が悪いのか、と見ると、モニターには「もう一度」と言うありがちなメッセージではなく、「入場記録なし」と言うメッセージが出ています。

これではタッチし直しといったレベルではなく、有人改札に回るしかありませんが、ただでさえいっぱいいっぱいの処理でさばいている改札です。たちまち滞り列が出来てしまいました。普段はこの手の通せんぼを食らった人が出ると思わず舌打ちをしてしまうこともしばしばでしたが、いざ自分がその主になってしまうと非常に申し訳ない、というか、恥ずかしい気分で列を離れ、有人改札に向かったのです。

有人改札に申し出ると、特に理由を聞くでもなく処理してくれましたが、あまりにもスムーズな?処理に、津田沼駅では確かにタッチして改札機を通過したはずなのに、という愚痴もこぼす間もなく追い出された格好で、もやもやが残りました。

●そういえばの視点
毎朝晩IC定期で改札を通過していますが、確かに入場時にきちんと記録されているかが不安になることはありました。
モニターに自分のIC定期のチャージ額がきちんと出てないことも多く、たいがいは自分の前の人の記録が消えないうちに通過したせいとはいえ、一瞬不安を覚えることは確かです。

そう言えばその日の津田沼駅でも自分のデータではなかったような気がするわけで、でも入場では撥ねられなかったしと、どうしてこんな目に、と思うと同時に、そう考えると、毎日のように見かける「通せんぼ」も、何度もタッチし直す接触不良系のトラブルでない場合、実際にはこの手の入場記録の読み取り問題がかなりの数を占めているのかもしれないな、と思ってきました。

もちろん本当に入場記録なしといったケースも多いでしょうが、ここまで入(退)場記録が無いと扉が閉まると言われていてこの頻度でその規制に引っ掛かるのか、とも思えてくるのです。

●意外な体験談
さて改札で愚痴をこぼす間もなく通されてしまった恨みつらみじゃないですが、会社で昼休みに同僚と話している中でこのネタを振ってみました。すると意外なことに「経験者」がけっこういることが判りました。
そしてモニターの表示が違っていることに不安を覚える人が多かったり、その一方で全く見ていないという豪の者もいました。

そうした中で出てきた「体験談」には驚きました。
羽田空港から京急に乗り、品川の連絡改札を通過して山手線の駅で降りたところ、品川とその駅の間は定期券に含まれているにもかかわらず、800円程度の引き落としが出て面喰ったというのです。

通常なら品川で400円が引き落とされ、山手線の駅では「定期利用」の表示なのですが、その同僚いわく、その日はたまたまモニターを見ていて気がついた、とのことで、さっそく有人改札でクレームを付けて返金してもらったとのことです。
金額から察するに、品川での中間改札通過時に読み取りエラーとなり、通過記録が付かなかったので、中野経由か八丁畷経由か、それとも別のどこかの経由が記録されたのか、はっきりとしたことは定かでないですが、とんでもない経路判定が実行されたようです。

●エラーが発覚しないリスク
このケースを聞いて考えたのは、単純に入場時に読み取りエラーとなった場合は降車時に引っかかることでエラー発生が把握できますが、本件のような中間改札での読み取りエラーは非常に厄介と言うことです。
入出場は正常ですから出場できるのですが、経路判定が異常と言うケース。チャージが十分にあれば異常判定の経路で計算されてしまったうえに、正常に出場できるのです。

モニターの表示で確認できるとはいえ、特に混雑時には自分のデータがタイミングよく表示されるとは限らない状況ではそれも期待できないわけで、こうなると気がついたら取られ損と言うことも十分あり得ます。

●読み取りエラーをどうやって減らすか
こうした体験をすると、改札機へのタッチをことさらに慎重にするようになるのが人情ですが、実際意識してタッチするようになって気がついたのが構造的な問題です。

接触不良系のエラーや、「タッチ1秒」の励行のために、接触部を傾斜させてタッチしやすいようにしているのですが、パスケースや財布と言った厚みのある入れものごとタッチする際には、この構造は有効です。
しかし、IC定期やカードをむき出しでタッチする際には、この構造がかえって徒になるのです。

接触部が傾斜している改札機

パスケースや財布の場合は鷲掴みして押し当てる格好となり、その動作における財布などと接触部の角度は一致しており、読み取りが正確になされる確率が高くなります。
ところがむき出しになると、カードを指でつまんでタッチすることになります。接触部が傾斜しており、かつ平板で大きいため、接触部と角度をもって、しかもつまんでいる指の部分が邪魔になって必ず空間が生じる格好でタッチする傾向が強いです。つまり、カードの端部をタッチする格好になりがちで、ICチップがある箇所は必ずしも接触部に近づかない可能性があると言えます。

接触不良系のエラーの大半はパスケースや財布でのタッチのようでもあり、その意味では今の構造は理にかなっているのですが、交通系だけでもICカードが複数所持することも多く、さらに電子マネーや会社のIDカードなど、ICカードを複数枚持つことが一般化するなかで、ICカードや定期券をむき出しでタッチさせる人は決して異端ではないはずです。

要は確実なタッチと読み取りが担保できれば良いわけで、そう考えると、例えば会社のセキュリティ対応でのICカードの接触部、またバスの料金箱における接触部のように、小さめの接触部が出っ張っている形態だと、カードをつまむように持ってタッチする際に無理なくタッチできるように思えますし、パスケースや財布でのタッチにも十分対応できるでしょう。

読み取りエラーによるリスクの低減としては、読み取りエラーの発生頻度を下げるしかないわけです。
その観点で改札機の接触部を見ると、改善の余地があるのではないでしょうか。






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