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指定席券売機は便利だが



※写真は2010年2月、5月撮影


かつては主要駅だけだったみどりの窓口も機械の高性能化、小型化に伴いほとんどの駅に設置されるようになって久しいです。
おかげで身近な駅で色々なきっぷを購入できるようになったのですが、最近ではさらに進んで券売機で指定券をはじめとする多彩なきっぷの購入が出来るようになりました。

それ自体は便利ですし、歓迎すべき事態なんですが、券売機の普及とともに困った事態も起きているのです。

指定席販売機(直江津)


●指定席券売機の増殖
1990年代から新幹線の主要駅を皮切りに増えてきましたが、当初は発売できる列車、区間が限定されるとか、座席指定が窓側、通路側といった単純区分ですら出来ないとか、使い勝手に難がありました。
そのため券売機がずらりと並ぶその脇のみどりの窓口は混雑、券売機は閑散と言うシーンも珍しくなかったのですが、2000年代に入るとこうした欠点も徐々に補正され、窓口発券と遜色ない機能を提供できるようになっています。

みどりの窓口での発券というと定期券ですが、こちらも券売機による発行が推進され、上記の指定席券売機の一機能として存在するなど、今や小型のみどりの窓口端末を乗客が自分で操作する感覚です。

座席指定もシートマップで行えるようになっているものもあり、長距離券や定期券など高額の購入に対しては、紙幣を1枚ずつ入れずとも、束ねて入れれば後は機械が勘定、というわけで、金融機関のATMと匹敵する使い勝手と言えます。

●有人窓口は
みどりの窓口の需要の大半が券売機で代替できる、ということになると、それなりのスペースと要員の確保が必要な有人窓口の縮小に向かうのはある意味必然的な流れと言えます。

特にJR東日本ではその傾向が顕著で、地方や近郊の駅だけではなく、都心部の駅ですらそうした傾向にあります。こうした例としては、単純にスペースを削ったケースもあれば、旅行業の相談窓口を拡充したケースもあります。

ただ、券売機となったことでこれまで複数の改札口、きっぷ売り場があった駅においてはみどりの窓口はメインとなる改札付近にあったものですが、各改札、きっぷ売り場に設置することで利用者がいちいち違う改札まで出向かなくて済むようにもなっています。

券売機の台数も有人窓口のそれよりも多く確保されていることが多く、そういう意味では上記のように高機能化もあり購入が非常に楽になったことは確かです。

●だが弊害も
しかしそうしたメリットを享受できるのも一般的な購入の場合のみです。

券売機で対応できない事例は特殊なケースだけではないわけで、証明書を使った購入や、変更、領収書の発行などそれなりの頻度があります。一方で券売機が対応できない企画商品の発行もあるわけで、こうした商品の発行には時間がかかるうえに、窓口は縮小されているため、みどりの窓口における処理能力が極端に下がっているのです。

都心部の某駅もそうした駅の一つで、みどりの窓口は1つに縮小されていますが、概ね1人の乗客をさばくのに10分はかかっている印象です。
また、スタッフの外注化、非正規化が進んでいるのか、業務知識に難があるとしか言いようがないケースもあるようで、後ろで見ていると客の注文を理解していない(別に特別な注文をしているわけではない)ため会話がかみ合わず、とんちんかんなやり取りで時間だけが過ぎていくケースも見受けられます。

先日は20時半頃に並んだのですが、5人ほどの先客が何とか終わり、自分の番になったのは21時も大きく回っていました。この時間帯は、各新幹線の最終が絡む時間帯で、指定席などの発券需要が高まるうえに、時間との戦いとも言えるのですが、その時間帯にこのような有様では困ります。

●そういう時の券売機だが
この駅では遅々として進まぬ行列に、「ご案内係」が歩み寄り、券売機での購入を勧めていましたが、そもそもそんな対応をするくらいなら窓口を2口座にして、こういう時間帯のみ2列にするのが正しい対応でしょう。スーパーマーケットでは混み合ってくるとレジの対応を増やしたり、2人対応にして流す工夫をしていますが、こっちのレジへどうぞ、と言う「ご案内係」だけを置くようなことは決してありません。

結局券売機に流れたのは少数、それもそのはず、変更、領収書発行など、券売機では対応できない客です、というか、そういう客しか並んでいないのに、対応しきれないというのは論外でしょう。

ちなみに領収書は発行できる、と言うかもしれませんが、機械発行の領収書は税務対応上は容認できるフォームかもしれませんが、所詮はレシートであり、宛先記入の領収書しか認めないケースが多いです。
特に定期券のように10万円を優に超える高額もある金額の場合は、企業の出納管理上も「名宛人」記載の領収書が好ましく、特にコンプライアンスや内部統制が厳しく喧伝される昨今は、こうした需要が増えてくる方向にあります。

●ところが券売機も
確かに券売機も高機能化して、それこそ上記の駅じゃないですが、遅々として進まない処理能力にイラつくくらいなら自分で操作したほうがマシなケースがほとんどです。
しかし、いざ購入しようとして、首をかしげるようなケースもまだ残っているのです。

例えば定期券。実はこれは「ネットde定期」の話でもあるんですが、券売機でも同じ操作と記憶していますので、その時の体験です。

購入しようとしたのは連絡社線との連絡定期券です。新京成某駅と山手線某駅の区間で、津田沼、秋葉原、品川経由の経路です。(余談ですが、錦糸町以東、東京以南の区間で、秋葉原経由で購入すると、途中下車は出来ないが馬喰町経由で乗車できる。この区間は選択乗車ではないので、馬喰町経由の定期で秋葉原経由の乗車は出来ない)

で、利用区間の入力ではたと悩んだのは、以下の表記です。

「経由駅はオプションで1駅のみ指定できます。」
「経由駅は1駅のみご指定できます。 」

新京成との連絡定期は、津田沼経由か松戸経由に大別されます。
さらにJR線区間でも、品川経由か代々木経由か。また、秋葉原経由か馬喰町経由か、という選択があるのですが、上記の表記を前にしてどう思いますか?

「1駅のみできます。」とあると、「やっぱり機械は経由が1つ程度の単純な定期しか対応できないんだな」と思うのではないでしょうか。

実は基本的な経由地である「津田沼」を指定して「次へ」をクリックすると、希望する経路はもちろん、山手線池袋経由とか京葉線経由まで含めた考えられる経由が8種類出てきて、それを選択するようになっており、心配は杞憂に終わるのですが、初めてこれに触れる場合、「1駅のみ出来ます」の次に8種類もの選択肢が出てくると思いますでしょうか。

要は日本語がおかしいのです。「1駅のみ指定できます。」ではなく、「1駅を指定してください。」として、さらに「次画面で経路を候補から選択して頂きます。」とすれば迷いが発生する余地はありません。

機能上ここでは1駅をまず指定するのだから2駅以上書いたらNG,という意味だと思いますが、これは作る側の論理そのものであり、使う側の視点に立っていません。
「のみ...できます」というのは限定的な可能、言い換えればそれ以外は禁止という意味を伴うネガティブな表現であり、ここで操作を断念するケースも出てくるはずです。

●おかしな表記はその他にも
これも結局窓口に並んだケースですが、今はなき「土・日きっぷ」を購入した際の話です。

券売機で発売しているとポスターに大書しているので、混むと分かっている窓口に行くこともなく券売機に向かい操作してみました。

きっぷの種類をお選びください、とあり、「おトクなきっぷ」を選べば候補が出る、と思いきや、次画面は「方面を押してください」となり、「ツーデーパス」(当時発売)と、「東海道・山陽新幹線」「東北・山形・秋田新幹線方面」などの方面を示す選択肢が示されたのです。

「方面」と言われても微妙だな、と思いつつ、じゃあ東北新幹線かな、と押して見ると、回数券や往復割引の企画券しか出てきません。上越新幹線方面も同じです。
「ツーデーパス」の口座はあるのに、と不思議に思いましたが、発売終了がアナウンスされただけあって「ツーデーパス」に口座を明け渡したのか、と思いつつ断念して窓口に並んでドツボにはまったわけです。

実は窓口でようやく購入したあと、まだいた「ご案内係」に聞いたところ、「方面を押してください」の画面右下に「次に」というボタンがあり、それを押すとフリーきっぷ系の企画券の口座が並んでいたのです。

これも日本語がおかしいわけで、指定券、定期券、企画券を選択し、企画券の方面を選択し、と来た流れでの「次に」はさらに絞り込んだ選択肢の提示を想像します。
ここでの正解は「このほかの商品(方面)は右下の「次に」を押してください」とトップの「方面を押してください」の下に書くことです。もしくは「その他の方面・きっぷ」とすることでしょう。

そもそもここで「ツーデーパス」という特定商品を表示したのも間違いです。
「東北・山形・秋田新幹線方面」を押して次に各商品が出る建付けなら、ここは「フリータイプのきっぷ」として、それを押したら「ツーデーパス」など各商品が列挙されているのがグルーピングの整合性でしょう。

●さらに問題が
この一件があってから、いろいろな駅で券売機の「おトクなきっぷ」の口座を見てみました。

そこで気がついたのは、表示がバラバラということ。
例えば武蔵小杉駅の場合、「フリーパス(乗り放題タイプ)」となっており、こういう表示なら分かりやすいですが、津田沼駅は違いました。

このように駅によって表示の体裁が違うと言うのも厄介です。前回はこうだったのに、と別の駅で悩む人も出てくることは必至です。家の最寄り駅、勤務先の最寄り駅、出かけたついでに、ときっぷを買う駅は必ずしも一定とは限りません。

このあたり、Suica定期のフォーマットがバラバラ(更新するとかすれて残っている前回の印字位置と全然違うことが多々ある)であるように、どうも「統一性」ということに無頓着な傾向が見て取れます。

まあ「おすすめ商品」(最近では「ウィークエンドパス」)を左肩におくのはこれは商売ですから仕方が無いにしても、その他は「各方面」と「フリーパス(乗り放題タイプ)」で表示は統一できるはずです。

もうひとつ、これは武蔵小杉駅ですが、「フリーパス(乗り放題タイプ)」を押すといきなり利用日選択画面に飛ぶのです。
実は右側の欄外に「ホリデーパス」とあり、この時期口座に入っているのが1種類なので選択を端折ったようですが、「ホリデーパス」を購入する気でない(他の商品が買えると勘違いしていた)人にとっては不親切どころか誤操作を誘導する対応であり、気になるところです。

フリーパスの口座がある(武蔵小杉)



冒頭で券売機も金融機関のATM並みになったと書きましたが、確かに高機能ですがその操作性に若干の難があるのは残念です。
また、手数料に差があるとはいえ、窓口での対応も待たせないことをモットーにしている、銀行によっては何分以上は待たせないことをセールストークにしているわけで、券売機に誘導して窓口の質が劣化している駅とは大違いです。

このあたりは、手数料を取るとなったらそれはそれで悩ましいですが、窓口の改善も怠らないで欲しいですし、券売機の操作性も利用者目線で吟味して欲しいものです。




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