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新型改札機に感じる「不便」



※特記なき写真は2014年1月撮影


●不親切な設計の新型改札機
4月からの消費税法改正とそれに伴う1円単位運賃導入のためでしょうか、首都圏のJR東日本をはじめとする各社局の自動改札機の更新が進んでいます。特に目立つのはJR東日本のそれですが、新しい改札機を見て思ったのは、非常に不親切な設計ということです。

新型改札機全景(津田沼)

つまり、金額が表示される箇所が手前に寄り過ぎているため、普通に改札を通過する際にはまず見えないのです。

表示は手前側のみ出口側は青ランプのみで無表示

これまで手前に矢印、出口付近に金額が表示されていたのが、手前に金額が表示され、出口付近には表示できるようになっていながら何も表示されないのです。

従来型改札機全景(東船橋)

出口付近に表示されていた時ですら、ラッシュ時のように連綿と人が通過すると表示が遅れて、自分の引き落とし金額や残高が見えない、という問題があったのですが、新しい改札機はそもそも見えないのがデフォルトのようになっています。

手前には矢印表示は出口側

これは問題であり、特に1円単位となり確認すべき有効数字が1桁増えたというのに、確認する術が無いのでは、誤った金額を引き落とされても分かりません。実際に誤った引き落としを食らった例は過去の記事でも書きましたが、表示が見えたから分かったのです。
残高を概ねこのくらい、という把握をしている人も多いでしょうが、バスも使う人だとバス利用時にはバス特併用となり、実際には引き落とし金額が少なくなっていることもあり、それともし万が一過剰徴収があったとしたら、「イメージ通り」として気がつかない可能性があります。(バス特の残高は鉄道利用時に確認できない)

残高の把握はすなわちチャージ時期の把握でもあるため、金額把握が出来ていないと、チャージ不足で「通せんぼ」される可能性が増えます。
だからオートチャージ、というのかもしれませんが、それこそ残高が分からない、チャージをした感覚が無いでは、正確に引き落とされたかどうかの認識も覚束なくなるわけで、さらに盗難、紛失時にヒットエンドラン的に使われた場合、手ベースでのチャージならその時点で積んである残高の範囲で収まるのに、オートチャージの場合、設定次第ではかなりの金額がリスクに晒されます。
特に電子マネーとして使える範囲が広がったことは、物品購買など換金性や価値のあるものでの利用が可能になるわけで、まさに「金銭と同じ」であり、鉄道の営業時間に関わらずに使われるリスクとなっています。

同様に新型への換装が始まった新京成の場合、金額は手前だけでなく出口付近にも表示されるわけで、なんでJR東日本はそれが出来ないのか不思議です。

1月から稼働した新京成の新型改札機(高根木戸)

まさかとは思いますが、出口側は4月からの消費税法改正に伴う新運賃に対応したプログラムで表示するように既に組んでおり、各種テストを行っているため表示できないのでしょうか。

手前に表示はJRと同じ出口側にも表示されるのがJRとの違い

だとしたら4月までの辛抱ですが、せめて「金額が一時見づらくなるのでご不便をおかけします」くらいの掲示はすべきです。ただ、4月以降もこのまま、という最悪の結果も予想されるだけに何とも言えません。


●出場記録エラーへの対応
こうした金額把握の問題に加えて、最近ネットで散見される問題点として、ICカードの全国共通化で手持ちのカードで全国で利用できるのはいいのだが、他社で通信異常などによる出場記録の不備が発生した場合、その取り消しは当該会社でしか出来ない、というものがあります。

実際に体験したわけではなく、ネットでも本当かどうかの見極めがつかないのですが、もし本当だとしたらなかなか厄介な話です。
例えば神戸に出張した私が阪神電車にSuica定期で乗車し、降車時に見かけは出られたのですが、出場記録がつかなかった場合、出張から帰ってきて新京成の改札で「出場記録無し」で止められたらどうなるのか。

「お客さん、これ阪神電車で入ったままになってますね」と言われるのならまだしも、「ウチじゃ処理できませんから、阪神さんに行ってください」となったらどうなるのか。
こういうトラブルは意図的に発生することは実は少なく、システムエラーのケースがほとんどであり、駅の有人改札で対応してもらうケースをよく目にするように頻度は少なくなく、かつ「故意」ではないから駅員も事務的に処理していますが、それで他社、しかも全く違う異郷の地、と言われてはかないません。

おそらくネット情報が誇張しているだけで、実際には事情伺いを経て自社で処理なんでしょうが、そのあたりの取り扱いをきちんと周知していないのはなぜなのか。そのあたりは他社処理になると最後の乗車分を現金で収受することが事実上出来ないため、不正の温床になるという危惧があるのかもしれません。

しかしもし万が一ネット情報が正しいとしたらこれは悲惨です。遠方の会社で処理してもらわない限り定期が使えないのでは大損害です。
その意味でもリスクの所在と対応についてきちんと周知するのは事業者の義務でしょう。「全国これ1枚」、と謳いながら、何かあったら(利用者の責任でもないのに)使えなくなります、と言うのは重大リスクですし、そうでないのならその旨をきちんと示さないといけません。

出場できたかどうかはその場で分かるはず、と言う人もいるでしょうが、上記のようにJR東日本の新型改札機は表示部が「見えない」ですし、「通せんぼ」が無い簡易改札機の場合はまず分かりませんし、日頃でも反応したかどうか分からないので不安になることもあるくらいです。

簡易型改札機
(山陽線河内駅・2007年7月撮影)
集改札をしない駅ではさらに簡易版も
(呉線安芸長浜駅・2010年4月撮影)

例えば広島駅から白市駅まで来て、連絡バスで広島空港に出てから空路帰京したようなケース。社会実験で連絡バスも増発されており、山陽道の渋滞などで案外選択肢になるルートですが、白市駅の簡易改札機の調子が悪いとどうなるのか。朝晩どころか日中でも駅員がいない時間帯もあるわけで、訝しみながら飛行機に乗って、羽田空港駅で、リムジン利用なら翌日の地元の駅で愕然とするのでしょうか。

●精算はどうなるのか
現在の規則では、10円未満のチャージ部分を運賃支払に充てることは出来ないことになっていますが、4月からは1円単位の運賃になることから、どう整合を取るのかが気になるところです。

つまり、乗り越し精算時に残高不足が発生した時ですが、運賃が1円単位であれば当然不足も1円単位になるのですが、精算機で精算する際、支払うべき運賃はIC運賃なのか、きっぷベースなのか。これが分かりません。

改札機の更新はしていますが、精算機を1円対応にしているようには見えないので、精算金額は10円単位になるのでしょう。現状も「10円単位のチャージ」が可能としているわけで、ICカードの「精算」は必ず「チャージ」として定義することで、IC運賃で引き落として1円単位のチャージが残るスタイルになるのでしょう。

ただ、これだと必ず1円単位のチャージが残る(使い切れない)わけで、物販なら全額チャージを払いだして残額を現金精算できるのでしょうが、交通利用の場合は残りが出ます。
そしてICカードを払い戻す(返納する)場合は、手数料がチャージの範囲内で引き去られる事を考えると、その部分が最後に「損」することになります。

まあ個人ベースでは最大9円ですし、発生する事態はそうそうないので、目くじらを立てる必要はないのですが、ちりも積もればの話でもありますし、いささか不透明感が残ります。





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