このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください






武蔵小杉駅、特例が生んだ穴



2010年3月のダイヤ改正で開業した横須賀線、湘南新宿ラインの武蔵小杉駅。
南武線との乗り換え駅ですが、延々と長い通路を歩かされる対応には若干の無理やり感も否めません。

もっとも駅周辺の事業所用地の再開発や、事業所への通勤対応という意味では、今回の新駅の立地はまさにそうした需要の真っただ中であり、今後に期待がかかる開業です。
実際、湘南新宿ラインの特快、快速の停車に加え、成田エクスプレス全列車の停車という対応を見ると、JR東日本のやる気というものをひしひしと感じます。

今回のテーマはこの武蔵小杉駅。「期間限定」の話題ですが、あまり後味の良くない体験談です。



※写真は2010年5月撮影


●間に合わなかった「本開業」が生んだ特例
問題の契機はこの「長い通路」にあります。

隣の向河原駅のほうが近いのでは、と揶揄される位置関係は京葉線東京駅を彷彿とさせますが、それでも地上に延々とではありますがラッチ内通路を確保して乗り換え駅とした努力は認めたいものです。
しかし、横須賀線(品鶴線)の高架に新幹線の築堤が並行するこのあたり、通路を最短に取るには新幹線の築堤を工事する必要があり、それが遅れたことから通路は大回りの仮設でかつ狭いとあって、特にラッシュ時の対応に不安を残しました。

このため今回、来年に予定される本開業までの特例として、異例の改札外乗り換えを制度として用意したのです。

つまり、横須賀線側に開設された新南口を出て、地上の道路を歩いて南武線の北口(既存改札口)に至るルートで乗り継いでも、ラッチ内乗り換えと同様運賃は通算され、打ち切り計算にはならないのです。
これに対応するとして、両改札口には乗り換え用の改札機がオレンジ色に塗られています。

余談ですが、本開業までの仮設通路の部分は、屋根のみならず側壁もついて雨風をしのげるのは当たり前のサービスとはいえありがたいですが、地上の通路ゆえきちんと囲えば囲うほど風は通らず、しかし外気温の影響はもろに受けると言うわけで、夏日を記録したその日ですらいい加減蒸し暑かったわけで、これから夏本番を迎えた時、蒸し風呂のようになったり、最悪は気分を害する人が出ないか心配です。

長い通路で...


●特例の「特例」
さて、運賃は通算とありますが、期間限定での対応ということもあり、特例のさらに特例が設けられています。

東京近郊区間に属する武蔵小杉駅ですから、近郊区間内発着でここを通る利用においては最短距離で計算するルールが適用されます。いわゆる大回り乗車は特殊なケースですが、乗り換えの回数といった利便性から来る要請で、最終的に武蔵小杉までよりも安い運賃になるケースも出てきます。

こうしたケースにおいては、武蔵小杉までの運賃が必要であり、さらに目的地までの運賃が武蔵小杉までの運賃より安くても返金はしないということで、ICカードにおいては普通約款にある中間改札がある場合の特例の適用とも言えますが、普通乗車券においては初めての取り扱いでしょう。

ちなみに同じ?南武線の浜川崎駅においては鶴見線の同駅との間が改札外乗り換えとなっていますが、ここは簡易式Suica読み取り機にタッチしない、乗車券はそのまま、という特殊な取り扱いとなっています。(ゆえに「大回り乗車」が成立している)
こっちは通勤客か大回り客ぐらいしかいないので現場限りとも言える便法ですが、今回は拠点駅でもあり、制度の手当てをして臨んでいます。

新南口に並ぶオレンジ色の改札機


●計算のバグ?
今回この特例を使って見たのですが、思わぬ落とし穴?にはまりました。

渋谷から武蔵小杉に至り、改札外乗り換えをして南武支線川崎新町駅で降りたのですが、計算がどうも変です。

実は山手線上に定期券区間があり、それが絡んでの話ですが、実際より多く引き落とされたのです。

渋谷−川崎新町は380円区間です。そして渋谷−武蔵小杉は290円区間ですから、武蔵小杉で290円引き落とされ、川崎新町で90円引き落とされるはずです。

ところが川崎新町の簡易式読み取り機に表示された数字は130円です。
なんかイメージに合わない数字に、履歴を見ると予想もしなかった計算式が並んでいました。

つまり、山手線上の定期券区間を援用し、渋谷からの130円、品川−武蔵小杉の160円の290円がまず引かれています。そして川崎新町時点では品川起点で品川−武蔵小杉の160円と品川−川崎新町の290円との差額130円が引き落とされたのです。

こここら判明した事実として、武蔵小杉の特例使用時に武蔵小杉までの運賃計算が確定し(定期券援用)、その後の乗車において1つ遡っての比較(定期券援用と全区間通算で安い方を適用)は出来ないということがあります。

もっとも、武蔵小杉の時点で290円の同額ならその後に通算の可能性がある渋谷−武蔵小杉の扱いにしてくれればよかったのですが、JR東日本の約款では定期券援用が原則で、全区間通算も「出来る」という扱いなので、こうなるのも分かりますが、改札外乗り換えとの間で40円の格差が生じることは事実であり、期間限定の問題点とはいえ釈然としないものを残しました。

特例を伝えるポスター


●「期間限定」ゆえの「穴」か
1年あまりの特例に計算ロジックの本格的修正(1代多く遡る比較計算)はできないということでしょう。
まあそれは分かりますが、ならば改札外乗り換えの場合、定期券が絡む場合は実際より高く計算されることがあります、という一文を添えるのが昨今の消費者保護などの流れです。

一方特例の「特例」として、改札外乗り換えをした場合、東京、品川などの改札内指定席券売機で乗車券を購入できません、という注意が今回の特例の案内に書かれています。

これは武蔵小杉経由を記録してしまったあと、券売機で都区内や山手線内発の乗車券を購入する際、入口が西大井や品川になってしまい、乗車経路によっては西荻窪や蒲田が入口になるはずなのに正しく計算できないということでしょうか。

もしくは、券売機のほうに武蔵小杉特例を読み込ませるロジックを組み込む手間を惜しんだか(武蔵小杉特例が適用された場合、計算上の起点駅からの通算運賃で計算する)のどちらかでしょう。
この場合は武蔵小杉で打ち切り計算になった運賃が徴収されるので、いずれにしろ受け付けないというロジックを組んだとみられます。

こちらは注意があるわけで、期間限定ということもあり許容範囲と言えますし、新幹線に乗り継ぐような利用で敢えて露天の一般道経由というのも選択しづらいので、これは妥当と言えます。

まあ釈然としない部分もありますが、大多数にとって利便性が高まる今回の措置を支持すべきでしょう。

ちなみに今回の開業で南武線の中間地点にJR線でアクセスできるようになったことから、これまで適用されていた東横線経由と小田急線経由の通過連絡(渋谷−武蔵小杉、新宿−登戸を挟む前後のJR線の営業キロ通算。ICカードでの利用には適用されず、紙ベースと定期券のみ適用)のうち普通乗車券への適用が廃止されました。(定期券は存続)
※(2010年5月15日訂正)初稿では定期券も廃止としましたが、定期券への適用は継続しています。

東横線経由はともかく、小田急線経由は武蔵小杉の乗り換えの手間と手戻りを考えると廃止は乱暴な話ですが、こちらの「ライバル経由」になる「穴」はしっかり埋めているようです。

新幹線に寄り添う武蔵小杉駅







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