このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください





駅の時刻表に必要な情報
手抜きの極みとなった千葉支社管内



※特記なき写真は2012年3月撮影


●駅で必要な情報
利用者が駅に来たとき、電車に乗る、という時に必要な情報は何か。

そう考えた時、まずは発車時刻、行先、種別と言うところでしょうし、その情報が曖昧だといつ来るのか、目的地に行くのか、という乗車する前提条件がわかりません。
種別や行先については停車駅表とか路線図が別途用意されていることで情報は充足できますが、停車駅、簡単な方面、経由の表示もあったほうが便利です。

それに次ぐ内容としては、付加価値系とも言える情報でしょうか。
編成の内容や始発電車かどうかの情報、乗車位置の違いといったところです。
これが無くてもやってきた電車が何時に出て、どこに停車してどこに行くのかはわかりますが、編成に両数やドア数などの差異がある場合はどこで待てばいいのかが判るとありがたいですし、立たされる可能性があるときには始発電車に狙い乗車する需要も少なくありません。

駅においてはこれらの情報を「時刻表」として貼り出すのを基本としており、さらに字幕式、パタパタ式(ソラリー式)、LEDなどの案内器で表示しています。
特に昨今は案内器の性能が向上しており、突発的な時刻変更、停車駅変更にも対応できますし、発車情報と交互に運行情報やその他情報、さらには広告までも表示できます。

とはいえ案内器で表示できるのは通常は2個列車、3個列車のケースや1個列車の時もありますが、直近の列車しかわかりません。
途中折り返しが多いとか、複数路線が同じホームから出る路線だと、お目当ての列車についてさほど待たないのに表示されないことも多々あります。

さすがにここまで並べると...
(大船駅。2010年9月撮影)

こうしたケースに対応するため、思い切って多数の列車を表示するケースもありますが、ずらりと並べるとかえって見づらくなるのは否めません。
そうなるとやはり有効なのはアナログな対応であり、全体が掲出されている貼り出しの案内で確認することが有効な手段になります。

●全く足りない情報
JR東日本は2012年3月17日にダイヤ改正を行いましたが、その際に駅掲出の時刻表を大きく変更した路線があります。

上記のように駅貼りの時刻表に必要な情報、あったほうが便利な情報と言うのはいろいろありますが、これまではその情報を網羅したものでした。

ところが今回総武線の各駅に掲出されたものを見て仰天です。
そもそも配布用の名刺サイズのポケット時刻表をそのまま拡大コピーして貼り出すという、前代未聞の超手抜き状態にまず呆れますが、その内容がまたお粗末というか、論外なのです。

津田沼駅。どう見てもポケット時刻表の超拡大コピー

時刻と行先は書いていますが、編成情報、始発情報がなくなったのです。
津田沼駅のように上下とも複数の番線から発車する駅における発車番線情報もありません。しかも津田沼駅の場合、これまでコンコース(しかしトイレ近くの動線から外れた場所)にあった掲出がなくなり、入場前に改札前で見るか、ホームで確認してください、とあります。

時刻表掲出を止めて広告が入りました

もちろん案内器では3個列車まで案内しているので番線違いはない、とはいえ、数本後の始発に狙い乗車するようなケースでは不安です。
しかも、これは前からの不満ポイントなのですが、コンコースの案内器に編成情報がないため、ホームに降りて初めて11両と判る、という問題があるのです。

コンコースでは両数が分からない

エスカレーターを利用して降りたら11連だった、となると、グリーン車を挟んで東京寄りの普通車は激しく混むので比較的空いている千葉寄りに戻る必要があります。15連だとそのまま東京寄りの増結車に向かえば比較的空いているので、コンコースの段階で前か後ろかを決める重要な情報なのに、案内がないのは極めて不親切です。

ただでさえこの状態なのに、唯一コンコースで11連情報を得られる掲出が消えたのですから話になりません。ホーム貼り出しの時刻表(=ポケット時刻表)にも編成情報がないので、取り敢えずホームに降りてみてください、無駄足になっても知りません、というに等しく、論外です。

うがった見方をすれば、編成情報を常時掲出対象から一切外したことで、編成変更によるクレームを避ける、というか、11連にしようがどうしようが、もともと約束してませんでしたから無問題です、という開き直りとも取れます。

●千葉支社クオリティ、とは言い切れない謎
今回の「変更」は千葉支社管内での話ですが、総武線のほか、京葉線、武蔵野線と管内須らく変わりました。

南船橋駅にて。さすがに発車番線を別掲している

やはりこれは千葉支社クオリティ、と嘆息しかけたんですが、本来この手のサービスレベルが最も顕著に出るはずの房総ローカルにおいては、今回の「魔の手」が今一歩及んでいないのです。

千葉駅の房総ローカルについてはポケット時刻表バージョンなんですが上り快速の始発情報はあります。蘇我駅は従来型に近く(しかし編成は出ていない)、浜野駅や大原駅では編成両数を含む従来型の掲出が少なくとも改正直後の週末の時点ではありました。

拡大コピーではない蘇我駅

一方で東京駅などは階段横にあった路線時刻表の掲出も止めており、編成情報隠しが徹底していますが、ここは千葉支社管内ではないことから、千葉支社の「暴走」ともイマイチ断定しづらいのが謎です。

路線時刻表が消えた東京駅

千葉駅には路線時刻表の掲出があり、ここには編成が出ていることから、編成は決まってはいるようですから、何で隠すのでしょうか。

●情報が全く判らない駅も
さらに言えば、改正前からこの手の情報が全くわからない駅もあるのです。
今回の変更を受けて、都心部での様子を改めて見ると意外なことに編成情報については書いてあるほうが少なかったようです。

書いてあったのを確認したのは湘南新宿ラインの大崎駅、常磐快速線の上野駅(取手以遠直通の中電は非掲載)、松戸駅(中電も掲載)くらいです。そうなると今回の千葉支社の措置は「JR東日本スタンダード」への変更であり、なんら問題はない、と開き直ることもできますが、絶対的な水準と言う意味では落ちます。

快速、中電とも10連は●印の常磐線松戸駅

そう考えるとJR他社も編成情報を駅の時刻表に掲載してるところは少ないわけで、JR神戸線の場合、7連しか来ない普通はともかく、12連と8連がある新快速に、6、8、10、12連と入り乱れる快速と、編成情報は乗車位置の確認とともに、6連は避けると言った時にも役立ちますが、書いていません。

とはいえ駅の電光掲示板には編成が出るので、編成の案内は無いとは言えませんが、上記の津田沼や後述するような問題もあるわけで、出さないことでサービス水準に問題ないとは言えません。

東京駅の東海道線の案内

JR以外を見れば、異なる編成両数の運行がある会社は概ね掲出しているわけで、さらにはドア数の違いなども掲示しているのを見ると、やはりサービスに対する考え方の根本的な違いを感じます。

「♪」で表示の珍しいケース(新京成線新津田沼駅)


●補完する情報提供がない
東京や品川の場合、時刻表には「各列車の両数は電光表示案内及び放送でご案内しております」とあり、実際、情報の提供はそちらになっています。

別手段で情報を提供と言うが(品川駅)

しかし、そうした補完的な情報提供が有効に提供されているのか。と考えたとき、まず問題なのは品川駅です。
コンコースの電光掲示板には編成が出ますが、階段を降りたホームにないのです。もちろんホーム上に全くないわけではありませんが、総武快速線側のホームを横浜寄りに降りたら、そこに電光掲示板は一切ありません。時刻表が掲出されていますが、そこには上記のような記載があるわけで、だったら掲示を出せ、と言いたくなります。

階段を降りたら時刻表以外の情報提供はありません

品川駅の場合は(東京もそうですが)、「成田エクスプレス」用には各乗車口上の部分に専用の案内が新設されており、号車情報、編成によっては車両が来ないので、その際にはその旨の注意と至れり尽くせりです。
その一方で電光掲示板を見ろと言いながらそれがない、放送もタイムリーにはされないのですから、快速は冷遇されています。

でもNEXには至れり尽くせり

最初に指摘した津田沼駅の場合はホームに降りるまで編成情報がないという論外な仕立てですが、船橋駅や千葉駅ではさすがにコンコースや改札の表示に編成情報が出ています。津田沼駅もせめてコンコースや改札前の掲示に編成情報を記載していれば、ここまで不便を感じることもなかったのですが。

●サービス二の次では困る
とはいえ時刻表の情報を薄くして良いものでもないでしょう。
さらにいえば、誰が見ても「手抜き」としか思えない「拡大コピー」は論外です。

ポケット時刻表を見ると、JR東日本の関係会社名が出ていることから、事実上の内製化にして、さらに駅張りと版下を共通化することでコストダウンを図ったのでしょうか。情報量の多寡はともかくとして、そうした舞台裏が透けて見えるのもわびしい話です。

国鉄時代は小さくて見づらい、位置が高いと言った問題があった駅の時刻表も、近年にかけて大きく見やすくなる傾向が続いていました。
それが今回の変更で、寒々としたスペースが目立つ有様ですが、駅によっては早くも自社広告とはいえ広告スペースとして活用しているケースもあります。

空いたスペースは早速活用(西船橋駅)

上記の津田沼駅や西船橋駅のコンコース貼りについても広告に化けており、広告収入最優先で、旅客への案内を二の次にしたという受け止められ方をされても仕方がない、今回の対応と言えます。






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