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新大阪駅定点観測から


※この作品は「【検証】近未来交通地図」に掲載されたものを補筆、改稿したものです。

初出:2003年11月


「のぞみ」シフトのダイヤ改正から一月あまり、たまたま6日に代休を取ることになり、いい機会なので新大阪駅で実際に乗車状況を見てきました。
調査対象は6時00分発の「のぞみ100号」から9時17分発の「のぞみ120号」までの「のぞみ」18本、「ひかり」6本の計24本で、東京駅に午前中に到着する全列車です。乗車率についてはホーム上からの目分量ですが、そうかけ離れた数字は出ていないと信じます。

当日の予約状況は、当日朝の段階で新大阪8時40分発の「のぞみ116号」にようやく空席が現れましたが、結果として発車時までには満席担った模様。ただし、名古屋まではどの列車も空席ありと言う状況です。
一方の航空は羽田午前中到着の15便のうち、前日の段階で関空発1番、3番、4番のANA972便(6時40分)、ANA974便(7時00分)、ANA142便(7時20分)と、伊丹発ANA018便(9時00分)、ANA020便(10時00分)の5便に空席があるが、他の10便は満席でした。
「午前中到着」はある意味ビジネス需要のウリでもあり、新幹線が東京駅11時53分着、航空機が羽田11時35分着までのカバーなので、アクセスタイムを考えても条件はほぼ同一でしょう。
※予約状況のチェックは サイバーステーション国内線ドットコム

以上のデータより、新幹線は700系の定員をベース、航空は機材情報を元にして座席定員ベースの数字を求め、数量比を求めています。

●調査結果(数字は航空シェアの数字)

凡例提供座席総数新大阪発総数新幹線修正後対のぞみ限定
全時間帯18.1%27.7%38.1%41.9%
9時まで到着42.7%76.3%78.4%78.4%
10時まで到着27.0%54.6%62.6%64.5%
11時まで到着19.6%37.4%46.0%49.2%

◇新幹線データ処理について
  【山陽直通】新大阪到着時に東京寄り6両で乗り通すとおぼしき数字を目視して按分計算。
  【新神戸乗車】山陽直通客のうち30%と仮定。
  【途中駅降車】「のぞみ」は指定席10%、自由席30%、「ひかり」は50%と仮定。
以上の調整を新大阪発の総数に加減しています。
※「航空vsのぞみ」は調整後の「のぞみ」の数字のみで比較しているため、「ひかり」の分だけ航空が高く出ている。

◇航空機データ処理について
  【空席便】関空発ANA972便、974便は50%、その他は前後の便から80%搭乗と仮定。
スーパーシートは残席表示などから50%もしくは80%と仮定。(JAL936便、JAL340便のみ空席あり)

●評価
数字を見る限り、明白な結果が出ています。
つまり、午前中になんとか仕事が出来る時間帯である10時台迄に到着するケースに限定すれば大阪発の半分近くが航空機を選択しており、9時台、8時台と早まると共にその数字は8時台到着で8割近い数字になるまでに至ります。

そもそも座席提供数の比較を見ても、航空機の提供は早い時間帯に集中しており、一方で個別の乗車率を見る限りでは新幹線は早い時間帯は山陽直通列車が有意に混んでいる反面、11時台の到着便に入ってから新大阪始発も混み合って来るというあんばいで、朝関西を出て午後から仕事という流動が多いようにうかがえます。

つまり、前泊無しで午前中に仕事が入っているようなケースでは航空が既にメインとなっており、比較的時間が自由になる午後から仕事と言うような流動では新幹線が指向されていると言う感じで、時間的制約によって使い分け、住み分けが出来ていると言えるのではないでしょうか。

新幹線は確かに混んでいますが、京都、名古屋からの乗車が目立ち、新大阪の時点ではさほどでもないと言うことは実感としてありましたが、今回同一列車での京都、名古屋と追っての乗車率の推移ではなく、定点観測の結果として新幹線の新大阪時点の乗車率(対象時間帯全体の新大阪発総数で53%、補正後で33%)を見たことで、その体感と現実との齟齬があまり無いといえますし、世に言う「航空シェア30%」も良いところを突いている感じです。



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