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神戸−関空ベイシャトルの現状を見る
抜け出せぬ赤字体質と意外な支持



神戸空港ターミナルに入港するベイシャトル



神戸空港と関西空港を29分で結ぶ高速艇「ベイシャトル」
神戸から関空への最速アクセスを謳うルートですが、2006年9月の開業以来、メディアを賑わすのは予測を下回る利用と言った不景気な話ばかりです。

そうは言いながらも神戸空港を利用する際に見ると港の専用駐車場は結構埋まっており、リムジンバスとの間でも「競争」を目に見える形で感じることもあり、その実態がなかなか掴みづらい存在でもあります。

このベイシャトルの実態に迫ってみましょう。

写真は2002年1月、2008年5月、2009年4月撮影
※この作品中の一部に関しては「【検証】近未来交通地図」に掲載されたものを再掲しています。


●その前史
神戸から関空への航路というと、かつてポートアイランド、今の神戸インキュベーションオフィス(KIO)の位置にあったK-CATと関空を結ぶ「K-JET」がありました。関空まで25分の触れ込みで、ジェットフォイル2隻を使用して華々しく運航していましたが営業不振で2002年2月に休止しています。三宮の今の摩耶ケーブル経由六甲道駅行きの乗り場からバス連絡と言う中途半端さが嫌われたとされていますが、KIOの正面にあるフットサルコートにあったK-JET用の駐車場は結構埋まっていることもあり、関空への連絡橋や駐車場料金の負担を嫌ったパークアンドライド的利用に関しては一定の支持を得ていたようです。

このK-JETについては、【検証】近未来交通地図にかつて廃止直前に利用したルポを掲載しており、以下転載してみます。
(K-JETとリムジンバス、関空のルポのうちK-JET部分を抜粋。写真は今回初添付。なお時系列に関する補記および誤記の修正をしています)

神戸・ポートアイランドにある神戸シティエアターミナル(K-CAT)から関西空港を結ぶジェットフォイル「K-JET」を運行する神戸市の外郭団体である海上アクセス株式会社は、経営難から事業休止を決定し、2002年2月7日の運航を最後に休止することになりました。K-CATおよび三宮とK-CATおよびポーアイの商船三井を結ぶ神戸リムジンバスを運行する神戸航空交通ターミナル株式会社は一足先の1月31日限りで運行を休止しますが、ポーアイや商船三井などへの足の確保があるので、同じ三セクの神戸交通振興株式会社に運行を移管して継続することになりました。
K-CATの休止を先行するのは、同日限りでK-CATで搭乗手続きをしている航空各社が撤退し、K-CATが事実上機能停止に陥るためで、K-JETにとって2月最初の1週間は晩節を汚すような淋しい最期の時になるようです。

***
さて、曇天の1月26日、このK-JETルートを試乗しました。初乗りがお名残り乗船になってしまうと言う不本意な事態です。実は子供に「お船に乗って飛行機を見に行こう」と言っていてなかなか実行しないうちに廃止の報が入り、空手形どころか不渡り確定になりかねないので、子連れでの試乗になりました。

JR三ノ宮駅の南側、ポートライナーの高架下がK-CAT行きバスの停留所です。バスとK-JETのきっぷを扱うブースがありますが、運行休止の貼り紙が淋しいです。ここでバスとK-JETの通しきっぷ(バスの時刻表によると「通海きっぷ」というらしいがきっぷにそんな表記はない)を購入。バス240円、船(関空ポートターミナルから空港ターミナルのバス運賃含む)2200円が2400円に割引ですが、往復でも4560円といささか割引率が低く、陸路のリムジン1800円と比較して、例えば通しで2000円とか、もっと競争力のある運賃設定が出来なかったのかと思います。
当時のK-JET乗り場

また、バスの車内で、K-JET乗り継ぎで連絡切符を持ってない場合は乗り継ぎ票を受け取るようにという案内があり、結局三宮で買おうが買うまいが割引がデフォルトということのようです。(売り場が無いポートアイランドにも設定があります)

乗車便は11時16分発。船はK-CAT51分発で、32分発のバスが接続便ですが、K-CATの見学時間を考えて選びました。5人程度の乗車で11時10分に到着した便の折り返し。ハイデッカータイプの車です。結局9人(我々2人含む)で、もう2人ほど「お名残り系」がおり、空港客もいましたが、淋しい状態です。そごうの前へ右折し、フラワーロードへ左折と思っていたら、そのままポートライナーの高架下を直進します。
接続バスもK-JETの宣伝一色

余談ですがR2は灘区の摩耶交差点でR43に合流したあと、春日野交差点で税関前のほうに左折するのではなく、そのまま新生田川のほうに進みます。ところが浜手に出るのはフラワーロードではなく、一本手前の筋であるポートライナー高架下で、JRFの神戸港駅前で先ほど春日野交差点で分けた本線に合流します。もちろん道なりに進むと春日野を左折するのであり、表示も直進側をR2としながら三宮と元町を表示し、左折側に姫路を出しています。ちなみにR2浜手BPはR2でない生田川付近からスタートしている盲腸線の形態です。あと、蛇足ながら東行きの税関前から神戸港駅の間はよくねずみ取りをしているのでご注意のほど。

ところがバスは神戸港駅まで進まずに磯上公園西で曲がって市役所からフラワーロードに入りました。そのまま税関前を直進して、税関本庁前から第四突堤に曲がり、神戸大橋経由でポートアイランドに入ります。これも余談ですが神戸の浜手では「突堤」という言葉が頻出します。文字どおり埠頭の突き出した「ホーム」ですが、有名な中突堤をはじめそこかしこに有り、第四突堤のように「四突」と略されるものもあります。

ポーアイをそのまま南下し、市民病院前のポートアイランドバス停へ。ここで2人が下車。対向車線では無人のリムジンがやってきましたが、バス停にはざっと15人が待っており、目的外の乗客に人気を博しているという皮肉な現象がこのバスの特徴でもあります。ただ、あまりやり過ぎると神戸新交通の経営を脅かしかねず、両方の経営に預かる神戸市としても差配に苦しんでいたのでしょう。ポートアイランド南では降車ゼロ。そのまま未開発地域の真ん中にあるK-CATに11時31分に着きました
神戸シティエアターミナル(K-CAT)

4階建ての地方空港のようなターミナルビルで、前は駐車場です。パークアンドライドを宣伝している効果か、1日1000円ナリ(セット割引あり)の駐車場はざっと見で8割以上埋まっており、バスの惨状を考えると健闘しているのでは?と思います。りんくうタウン−関空のスカイゲートブリッジの通行料(往復1730円=2002年当時)を考えると、ここでのパークアンドライドは実用的で、これも後の祭りとは言え、周囲の広大な未利用地を考えると、例えばK-JET往復と駐車場2週間までで5000円ないし6000円といった感じで大々的にパークアンドライドを売り出せばまた違った展開があったのかもしれません。特にこのポーアイは「本土」とのアクセスである神戸大橋、港島トンネルとも無料であり、K-CATへいくことに対する価格的な抵抗は低いはずですから。
駐車場は意外と埋まってました

K-CATに入ると1月限りで撤退する国内3社のカウンターが迎えます。肝心なK-JETの案内が小さく分かりづらく、実は正面で連絡切符を見せてチェックインし、右手の待合室に進むのですが、表示が少ないです。
カウンターには乗船記念に、とカードが置いてあり手に取り、何の気無しにそのサイパネ規格のカードの裏を見てびっくり、発券前の回数券なんです。これが。もう使うこともないということか、それとも回数券から乗船記念まで汎用性を持たせたの...
K-CAT館内。航空各社のカウンターもありました

2階に上がってみましたが、なぜか自動車教習所の事務所と、コーヒーショップが1軒。あまりにも淋しいCATです。店舗予定地らしきスペースはありますが、結局埋まらなかったようです。待合室に進むとこれは意外、ソファーに結構大勢の人が待っています。まあ、11時51分の前は10時39分とかなり開いている関係でしょうが、いちおう売店も有り、今までの閑散ぶりがウソのようでした。

ちなみに、運行休止を発表する前から、2船使用のうちの1隻が浮遊物に衝突して修理のため、ドックダイヤで運行していたのですが、そのまま終航というのも淋しい最後です。
なお、待合室右手から外に出て、ジェットフォイルの勇姿を間近に見れます。
「クリスタルウイング」の雄姿
全天候型のボーディングブリッジを使っていました。

乗船開始の案内で乗船します。乗客は目視でざっと60人程度。土曜の昼頃と言う中途半端な時間にしては上出来だと思うのですが。
ゲートを出るとUSJ航路「シネマライン」の看板が有りましたが、確か消えたはずでは。船内は2層になっており、2階に陣取りました。
港内はやや波が立っており、このあと大荒れの天気予報とあいまってちょっと心配ですが、基本的に海面から浮上するジェットフォイルは波の影響を受けないので、実は波が高かろうが大丈夫とのことです。
バスを待ったか2分遅れで出航。六甲アイランド側の白灯台を交わすあたりで浮上して高速航行モードに入りました。船内には時速表示があり、そのうちMAXの82kmに達しました。普通の船や高速艇のエンジン音と違い、ガスタービンの高周波の音が響きますが総じて静か。揺れも少なく快適です。最後尾の窓から見ると物凄い水煙で、ジェットフォイルらしい光景です。

1階席には広めの荷物置き場があるのが特徴です。そして階段を上がった2階席は80人くらいの定員です。客席は2+4+2の8列で、1階からのエントランスにTVがありますが、これだけはローカルフェリーの趣。どうして空港アクセスのジェットフォイルと言えども画像が乱れるTVというのは客船の必須アイテムなんでしょうか。
さて8列の客席ですが、席番が妙です。8列ならA〜Hなんですが、なぜかBとIが欠番になったA〜Kなのです。そう言えば通路が心持ち広く、輸送量が増えたら10列化も考えていたのでしょうか、悲しき見込み違いの痕跡です。

大阪湾へ出入りする航路と交差するため、大型船を次々交わしての航海です。
左には大阪湾岸のビルや、遠く生駒か泉州か、山並みが見えますし、右は淡路と明石大橋が見え、これが晴天なら格別でしょう。やがて泉州の海岸がはっきり見え、スカイゲートブリッジ、そして関空が見えてきました。実質23分で走りきり、12時16分、関空ポートターミナルに到着。洲本からの高速艇が左手に停泊していました。

ターミナルを見る時間もなく、南海バスの空港ターミナル行きに乗車。K-JETの約60人を1台で捌くのですからやはりぎっしり立ちました。ものの3分とはいえ大荷物を抱えてのこれは辛く、乗り換えということとあわせて海上ルートの印象を確実に落としているはずです。到着は4階の出発階で、12時23分頃でした。K-CATから30分、三宮からでもバスを接続便にしたら50分程度と、三宮から70分程度(六甲アイランド経由は75分)のリムジンに比べると速くて確実ということがわかります。
(※省略した復路のリムジンバスの試乗において60分程度で走破したことから、時間的優位性は然程ないという結論に...)

今まで運賃面での対応批判をしてきましたが、実は空港アクセスにおいて価格と言うのはあまり決定的ではなく、結局神戸−関空での問題は、まずポーアイ、関空ポートターミナルの2箇所で乗り換えと言う煩わしさと、そもそも国際線はともかく国内は伊丹志向が強く関空利用者が少ないのでは?という部分でしょう。
その意味でも鉄道、バス利用者よりもK-CATでのP&Rに特化したほうが、シームレス性での問題がある程度解消されるうえに、直接関空に乗り付けるより定時性や価格競争力もあるので、まだマシだったのではないでしょうか。結局、どういった客層をターゲットにするかと言うところでの戦略の迷い、つまりターゲット層への適格且つ大胆なアピールを欠いた事が敗因だったのではないでしょうか

ターミナルで出国便を見ると、ちょうど中国便がいい時間です。K-JETに中国系の乗客がまとまって乗っており、やはり南京町を控えてるし、と思ってたんですが、時間帯がいいと言うことのようです。



このK-JETが営業不振で廃止になったあと、運営会社の「海上アクセス」は通常なら清算するところ、神戸空港開港時に関空アクセスが必要という強引な理由付けで、休眠会社として残ったのです。
廃止直前のK-JET及びK-CATの累積損失は142億円でその2/3程度は神戸市の出融資金です。5000人/日の利用見込み、3000人/日の採算ラインに対して1000人/日の利用では事業撤退は当然として、清算も当然するところですが、そうはいかなかったところに廃止に伴う出融資金の焦げ付きと言う損失の確定を先送りする意図が見え見えであり、神戸空港開港時に復活しても累積赤字の解消はおろか単年度黒字だって、と囁かれていましたが、とにもかくにもそうなったわけです。
そして2006年2月の神戸空港開港後、7月に海上アクセスも復活して関空航路が蘇ったのです。

フラワーロードにも海上アクセスの案内


●復活はしたものの
損失の先送りという経緯が経緯ですから、復活に伴う逆風もまた強烈でした。
先送りした損失がさらに拡大することは必至という論調でメディアは書きたてたものですが、実際、復活してからの利用状況も厳しいものがありました。

それでも前回の教訓をかなり活かした格好となっており、不振の中に一筋の光明だったパークアンドライドを主たるターゲットとして駐車料金の大幅割引を謳い、大型のジェットフォイル(旅客甲板が2階層だった)に替えて100人強の定員にすぎないごく一般的な高速艇を採用することで採算ラインを28人/便にまで下げ、さらには片道運賃も1500円とジェットフォイル時代の2200円から大幅に割り引いてリムジンバスの1800円より安くするなど、確かにK-JETとは別物と言っていい感じです。

ここまで勝負に出たのですが、それでも利用が伸びなかったのも事実であり、事実上の復活初年度である2006年度に3億8千万円の赤字を出し、累積赤字は01年度の128億円が07年度上期に164億円にまで膨らんでいます。
神戸空港が健闘する反面、皮肉にも関空の国内線需要を食ってしまった面もあるわけで、神戸から関空へと言うニーズが増えなかったこともあるでしょう。

ポートライナーセット券の宣伝

この会社と事業の存続を問われる事態に、更なる利用促進の手を打ったわけです。
ポートライナーとのセット券の発売により、ポートライナーが実質無料に。さらに送迎・見学者、また、りんくうエリアで一人気を吐くりんくうプレミアムアウトレットの利用者をターゲットにした2000円の日帰り往復割引の導入など、矢継ぎ早の割引制度の導入に、駐車料金の事実上の無料化。さらには各種懸賞つきアンケートによる集客など、お役所仕事にしてはかなり大胆になってきました。

まあ採算を考えない大盤振る舞いと言うのもまたお役所仕事というわけで、2007年の大型連休に利用者に対しもれなく片道無料券を配布したのはその典型。アンケートにしても懸賞に外れても無料券(それも複数枚)を応募者全員に送ったり、学校を通じて「社会体験」ということでこれも無料券を配布と、実は我が家も神戸市在住時代に懸賞に目がくらんで応募した口なんですが、学校経由とあわせて家族で何往復もできるほど日帰り往復券や普通の乗船券の無料券が手に入り、目を丸くしたのを覚えています。

2007年度には2億6千万円の赤字を計上したものの、そうした努力で2008年度には念願の単年度黒字計上(1600万円)を見込んでいましたが、燃油費高騰及び利用者数の伸び悩み(年31万人程度。見込みは41万人程度)で赤字となる見通しとなっています。

神戸空港駅から見たベイシャトルのターミナル


●「ライバル」として認識された
経営的にはいまだ火の車とはいえ、こうなると安閑としていられないのがリムジンバスです。
K-JET時代には眼中になかったかのごとく無対応だったのに、ベイシャトルの攻勢が本格化して、どうも潮目が変わったのでしょうか、07年、関空の2本目の滑走路竣工記念という触れ込みで、夏休み期間のみ往復割引を3000円から2500円に割り引き、さらに2000円の日帰り往復割引を導入。日帰り往復割引はその後通年販売化と明らかにベイシャトルを意識した攻勢をかけてきました。
特に2009年2月に実施した値上げについても、往復割引、日帰り往復割引は対象外となっているのはその強い表れと見ます。

このあたりから神戸市内では、「無料駐車場&ベイシャトル」という関空アクセスの認知が加速したようで、特に神戸空港が利用を順調に伸ばした時期に、多くの市民が神戸空港の意外なまでの「近さ」と、時間が読める無料の一般道という自動車交通との親和性を認識したこととリンクしていたことは想像に難くありません。
また、神戸空港の利用形態として、自家用車による送迎が目立つわけで、これの変形としてベイシャトルまで送って関空から出国と言うパターンもまた定着しているとみられます。

そのため神戸空港のベイシャトル専用駐車場も常設の舗装駐車場に加え、東西に臨時の砂利敷きの駐車場が確保されるようになってもなおそれが埋まることも珍しくなくなりました。
昨秋から神戸空港を頻繁に利用しているのですが、いつ見てもベイシャトルの駐車場は入りが良いように感じます。ただし、関空利用者ということはその太宗が渡航客と考えると、数日間は泊まっているため、1日当たりの利用者と言う意味ではかなり割り引いてみる必要があるかもしれないところが、国内線航空客、特に日帰りなど短期利用がメインの神戸空港利用者の駐車場との「満車」の意味合いの差となることは留意すべきです。

臨時区画までかなり埋まっているベイシャトル駐車場

なお2009年4月には増えすぎた割引制度の整理が行われましたが、日帰り往復割引、往復割引、ポートライナーセット券(片道単位で発売)の3本柱への集約であり、利用形態も落ち着いたと言うことでしょう。

それでも経営的にはまだまだ満足するレベルではないのですが、神戸−関空の輸送においてリムジンバスと並び立つだけの存在に成長したことは確かです。

●ベイシャトルに乗って見て
なかなか利用する機会がなかったベイシャトルですが、2008年5月と2009年4月に利用する機会を得ました。
両方とも関空の利用、ではなく、和歌山方面への所用があり、ならばと言う体験的利用に過ぎないのですが、渡航することもなく、国内線なら神戸空港で十分とあっては案外と利用する機会はないのです。

両方とも天気がすぐれず、特に後者は風雨が激しくかなり揺れるなど散々でしたが、利用自体は10人台から30人弱までと、100人強の定員を考えると厳しいとしか言いようがありません。ただし採算ラインが28人程度ですから、乗船率向上のため船を小さくするにしても限度もありますし、半分も埋まれば御の字とすべきなんでしょう。(現状は1便平均15人程度と採算ラインを割り込んでいる)

K-JETのようにルポ仕立てにすることも考えたのですが、変化に乏しいこともあり、利用して気付いた点と言う形でのレポートにしてみましょう。

【利用の太宗は】
神戸側でクルマで乗り付けてくる人がほとんどと言えます。
連絡バスに乗ってポートライナー駅に向かう人もいるにはいますがごく少数のようで、クルマによる送迎の方が多数派と言う感じ。

ターミナル建屋歩けなくはないがちょっと面倒


【海上アクセスターミナル】
自販機だけと簡素ながらもかなりの人数を収容できる待合室がありますが、道路事情が読める環境と言うこともあり、出発15分前くらいに集中して現れるようです。

待合室。桟橋側にはデッキも


【空港からのアクセス】
ポートライナー駅からの連絡バスについては、毎時43分発、53分発がありますが、船は毎時00分出発なので53分発だとちょっと心許無い感じ。歩いても5分程度なので荷物がなければ散歩がてらと言う距離ですが、横断歩道の関係から少し回り道をするのがネックです。
連絡バスですが、往路はターミナル正面に着きますが、復路は桟橋からターミナルまでの通路内で乗車できるので意外と楽ですが、逆にターミナルで休んでからバス、と言うのは難しいです。

神戸空港駅に停車中の連絡バス復路は手前の通路から


【ターミナル側のサービス】
利用者が少ないが故なのか、総じて係員のサービスは良いです。
荷物に手間取っているとカートに積んだり、また階段部分では運搬したり(桟橋からターミナルは階段が近いが、大回りだがスロープもあるのでカートはそちらを使う)と、手がすぐ動くのは感心。この面倒見の良さは素直に褒めるべきであり、こうした点も支持を集める理由かもしれない。

質素な発券カウンター


【桟橋】
K-JET時代はK-CATから全天候型のボーディングブリッジで乗船していたのが、露天のタラップという内航船標準装備に大きくダウングレードです。ただ係員による介助も万全です。

ターミナルから桟橋を見るタラップで乗り込む


【船内】
標準的な高速艇の仕様。2-4-2の8列は実はK-JETと一緒ですが、やや狭い感じ。座席はリクライニングしない。
前後に分かれた船室の後部側に座席を撤去してトランクスペースが確保されているので、荷物が多い旅客は後部船室に集中しがち。
「うみ」「そら」というベタな名称の2隻については、定員が120人とする資料が多いですが、このトランクスペース設置により100人ちょっとの座席定員になっているようです。

船内とトランクスペース

航海中はK-JETよりは静かで揺れません。
神戸市の外郭団体による観光ビデオ等が流されていますが、約30分の航海で2周以上してしまうので、飽きが来ます。日帰り往復だと1日に4回見てしまいます。しかも物流拠点関係や貸しビル募集といった内容まで交ざっているのもどうでしょうか...

なお、リムジンにも目立ちますが、ベイシャトルの場合外国人の利用者がさらに目立つ印象を受けました。たまたまなのかもしれませんが。

【関空港】
洲本航路の廃止でベイシャトルしか定期便がなくなったこともあり、ターミナルは閉鎖されています。ターミナルが閉鎖されたことで、ここでの滞留ができず、桟橋に到着したら連絡バスに乗るしかなく、ベイシャトルに乗る際も指定された連絡バスに必ず乗る必要があります。
ターミナル手前に連絡バス乗り場が置かれてバスに乗り換えになりますが、1台口の時と2台口の時があり、微妙な混み具合の時、空いている方に乗っていいのかわかりづらいです。
ターミナルが閉鎖されているせいもあるのでしょうが、どうもうらぶれた雰囲気が強すぎます。

関空港の桟橋闇に沈む閉鎖されたターミナル


【関空からのアクセス】
神戸側では駐車場や送迎車利用なのでバスを利用する必要が必ずしもないのですが、関空側では必ずバス(南海バス)を使います。
これがかなり億劫で、ノンステップの路線バスは座れないこともあるし、荷物の固定手段がないので不安定なままだとトランクが走りだしたりすることもあり、ここが利用者の評価を一番下げる部分かと思います。ちなみに神戸空港側の連絡バス(神姫バス)の荷物置き場のほうが安定感があります。

桟橋前に着いた連絡バス

桟橋と関空ターミナルビルの間の所要は10分程度。関空発は出航の12分前(午後は11分前にも1本ある)なので、毎時48分発と言うこと。
結局関空までは40分程度の所要となります。

【関空ターミナル】
ターミナルビル1階の北外れに小さなカウンターがあり、ここで乗船券や各種割引券を売っています。
連絡バス乗り場はさらに北側の12番乗り場。りんくうタウンなどへの巡回バスと一緒と言う一番場末の乗り場であり、ターミナルビル内もベンチはありますが、神戸側のよう待合室然とした施設ではないだけに、60分ヘッドの交通機関を待つ環境としてはちょっと厳しいです。
関空港のターミナルが生きていればこうしたことはなかったのでしょうが。

北外れの発券カウンター連絡バス乗り場の様子

なお関空ターミナルではリムジンバスが三宮まで乗り換えなしを謳う宣伝を展開しており、かなり意識している様子がありありとしています。

リムジンバスの宣伝


●ベイシャトルの評価
神戸空港側ではパークアンドライド、キスアンドライドにターゲットを絞り、利用もそれにほぼ限定されている感じです。公共交通機関利用の取り込みもしたいところですが、やはり得意分野での地歩を固める必要があり、その意味でまだまだパークアンドライド的利用の拡大を図るべきでしょう。
それと関空連絡橋や阪神高速道路の値下げにより、関空に直接乗りつけるケースとの価格差が確実に縮まっていることもあり、安穏とはしていられません。

ただ神戸サイドだけ見ると利便性としては非常に高い、と言えるのですが、関空でのバス連絡がそのアドバンテージを大いに損なっていると言えます。こればかりはもうどうしようもないとはいえ、あの中途半端なバス連絡は悔やんでも悔やみきれない構造です。
ホーバークラフトを採用するくらいしか解消策はないのですが、そのコストを賄えるとは到底思えないわけで、本当に千載の悔いが残るとはこのことでしょうか。

関空港桟橋。右手は閉鎖された桟橋ターミナル

リムジンバスとのライバル関係ですが、関空で利用を少し見ていたんですが、リムジンも盛況とは言い難く、ベイシャトルが30人弱の利用を見た時間帯、便によっては1ケタの乗客もあったわけで、毎時3本のリムジンに対して1本のベイシャトルは、時間帯によっては単位時間当たりの利用がかなり拮抗しているのではないでしょうか。
だからこそリムジンバスの巻き返しが目立つわけで、特に乗り換えなしと言うメリットを強化すべく、三宮から箕谷駅、谷上駅まで一部便を延長しているのもその一環と言えます。

連絡バスに並ぶ乗客


●ベイシャトルの将来
リムジンに伍して一定のシェアを確保したということは確実です。その意味でK-JET時代より長足の進歩を果たしてはいます。
ただそれが経営成績として成果を出しているかと言うと未だしというわけで、一層の集客による努力が必要と言えます。

神戸市内から無料駐車場を利用して、という利用形態のさらなる宣伝。そして東播、三田方面といった神戸を中心とする高規格道路網のネットワークで結ばれた諸都市への宣伝攻勢も重要です。
ポートライナー利用との連携も重要ですが、三宮からリムジンの利便性には乗り換え2回のベイシャトルが勝つのは容易ではないわけで、必要以上に利便性を下げる必要はないですが、メインとなるクルマ利用の利便性を損なってまで重視する必要性には乏しいでしょう。

ただ、上にも書きましたが、採算ラインになかなか達しないベイシャトルの利用者数でもリムジンに対しては脅威になるわけです。
つまり、神戸−関空の需要自体が2種類の交通機関を維持させ得るレベルに達していないという厳しい現実がまずあるのです。
所要時間的にはどんぐりの背比べのレベルで、渋滞リスクを負うリムジンに対し、風浪と言う天候リスクがあるベイシャトルと言う意味ではリスク因子に関してはこれも互角です。

甲乙つけがたいと言うより、どちらでもいいといったレベルでの併存に意味があるのか、と考えた時、関空の利用に期待が持てない状況が継続するのであれば、ベイシャトルの特徴を生かす形での一本化。つまり、関空リムジンの一部を神戸空港発着とし、無料駐車場でのパークアンドライドを利用してリムジンで関空へ、という折衷案への統合も視野に入れるべきかもしれません。

あまりにもつまらない結論とお思いでしょうが、関空国際線の需要、それも神戸市関係の需要が今後どうなるのか。未曾有の不況の中でその将来性を考えた時、明らかに当面は守勢に入らざるを得ない状況で、リムジンと消耗戦を継続するのが良いのか。そして毎年つぎ込まれる税金と言う出血をどこまで容認するのか、と言うことを考えると、関空の状況次第ではあとひと押しと思える中での「見切り千両」も立派な選択肢なのです。

夜の関空で出航を待つ...







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