このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください |
交通におけるマナーを考える〜その1
「マナー違反」の中身を問う
昨今何かと話題になったり問題になる交通機関におけるマナー。公共交通機関におけるマナーに加え、道路での運転など、交通のさまざまなシーンにおける「マナー」について、かなりやぶにらみですが論じて行きます。
民鉄協会は、毎年、業界統一的な啓発を目的として加盟全社の駅や車内にて一斉にポスターを掲出していますが、
2005年はテーマを「マナー」とし
、乗客からのアンケートをベースに、乗車マナーの遵守を訴えるポスターを掲出しています。具体的には、10月1日から「駅と車内の迷惑行為ランキング」ポスターと題した2種類(「迷惑だらけ車両編」「第1位:パンダもびっくり座席の座り方編」)を連続的に掲出し、迷惑行為防止を訴えるとともに、乗客からマナーに関する意見を集めています。
鉄道会社によるマナー啓発と言えばかつての営団地下鉄(現東京メトロ)が20年以上続けているなど、各社での取り組みもさかんです。一般論として車内でのマナーがお世辞にも宜しくないだけに、個別の会社に留まらず、民鉄協会として取り組むことについては異論は無いですし、統一キャンペーンともなれば「社会のマナー」という意識もまた高まると思います。
さて、そのポスターですが、アンケートから抽出した各種「迷惑行為」を集合させた第一陣に続き、第一位にランクインした「座席の座り方編」が車内(民鉄協会のサイトでも)で見られます。
座席の座り方と言うと昔からマナー問題の代名詞であり、誰もが膝を打つところでしょうが、そのポスターを見ると、やや首を傾げざるを得ないものがあります。
ポスターの図柄は、5人掛けのロングシートにパンダと男性2人が座っており、それに被せるように、
「あなた、幅とりすぎです!」
とキャッチコピーが決まっています。
5人掛けを3人(2人+1頭?)で占有してるのですからこれは迷惑ですが、その3者3様の「迷惑行為」はなんぞやと見ると、左から、横座りして窓辺に手をかけている男性、腕組みをして足を大きく開いている男性、そして座席に上がりこんでいるパンダ(笑)となっています。
それぞれの占有している部分に矢印が書かれ、1人あたり平均の40cm台を大きく上回る座席占有幅が示されており、まあ「幅を取るな」ということでしょう。
座席は譲り合って一人でも多くの人が座れるように、というマナーから見れば、これらはマナー違反でしょう。しかし、いかなる場合にもマナー違反かと言うと必ずしもそうではないだけに、状況を加味せずに形式だけでマナー違反と取られかねない「啓発」には疑問があります。
すなわち、空いてる車内であれば、外も満足に見えないロングシートで車窓を見ようと横座りをすることもあるでしょうし、同様にロングシートであれば、左右に誰も座っていない不安定な状況だったら足を開いてバランスを取るでしょう。パンダ(笑)の事例は微妙ですが、お年寄りを中心に上がりこむ姿はよく見ますし、兎にも角にもパンダに関してはどう見ても姿勢よりも横幅そのものを問題視しているようであり(件の「矢印」はパンダの胴回りを示しているし、潜入幅の対象は「横幅」です)、これでは「横幅が大きいこと自体がマナー違反」と取られかねません。
一方で、「座席の座り方」と言いながら足の投げ出しや足組み、頭のもたれ込み(これは各種盛り込み編で出ていたかもしれない)は触れておりませんし、バケットシートなどの定員区分表示を無視した座り方も出ていません。
その意味で、いかなる場合でもあってはならないような印象を与えるのみならず、「座席の座り方」という区分としてふさわしいはずの事例が欠けている内容での「啓発」は、民鉄協会による統一キャンペーンとしては些か疑問と言わざるを得ません。
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