このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください





まっこと上手いパークアンドライド
16年目を迎えた高知桂浜の取り組みを見る


桂浜で発車を待つ路線バスとシャトルバス




この連休、ちょっと足を伸ばして高知に行ってきました。
訪れたのは高知といえばの桂浜。龍馬像を見て、闘犬を見てという非常に俗っぽい観光でしたが、ここでパークアンドライドがしっかり機能しているのを見ました。

●パークアンドライドを横目に
仁淀川方面から海沿いにアプローチしてきたのですが、昼下がり、もうすぐ桂浜という辺りで出てきたのが長浜でのパークアンドライドの看板。駐車場は無料で、無料シャトルバスでの送迎とありました。
パークアンドライドと言えば奇しくも去年の連休、鳥取砂丘で散々な目にあってますが、今回もそれに乗れば何か面白い体験が出来るかもしれない、と食指を動かしたところ、同じく去年の鳥取経験者である家内から、ご丁寧にも去年の体験があるからと否定されました。

確かに去年の経験もあり、かつその前には背を向けて正解だった篠山市今田町の丹波焼陶器市の例もあり、年老いて足の不自由な両親も同乗していたことから失敗したら目も当てられないだけに、P&R体験への興味に背を向けたのです。

さて、そのまま海沿いを進むと、ナビは裏道を指定します。前方は滞っているようですが、少しずつ動いているようでもあり、敢えて県道を進むと、程なく渋滞の最後尾に着きました。
右手の海岸に見える小山の向こうが桂浜の砂浜とのことで、このあたりに停めても良さそうですが、まあ両親もいることだし、最寄りまで我慢します。

浦戸大橋からのルートとの合流地点からは桂浜に向かう袋小路。桂浜方面からの渋滞が両方向に伸びてますが、両方向からの合流を誘導員が上手に捌いているのはありがたいサービスです。

そうこうしているうちに、シャトルバスと何台もすれ違います。
感覚として5分程度の間隔でしょうか。高知県交通と土佐電の両社のバスが起用されており、車内は座席定員程度の乗車に見えます。
小高い丘に上り、龍馬記念館や国民宿舎への道を分けると桂浜への下り。私が来たルートからだと、上がって下りてというあまり合理的でないルートです。

じわじわとつづら折りを下ります。シャトルバスのほか、「MY遊バス」とゼッケンをつけた路線車の貸切バスともすれ違っており、高知駅、はりまや橋方面からも路線バス以外のシャトルバスがあるようです。
桂浜方向からのバスがそれなりに来る反面、桂浜へのルートにバスが見当たらないので、シャトルバスはどうも最初にカーナビが指示した裏道を使っているようで、そちらを行けばよかったと思えど後の祭りです。

ようやく駐車場入口に来ると、やはりシャトルバスは裏道経由でした。シャトルバスに続き、2台ほどのクルマが駐車場に向かいましたが、裏道経由は極端に空いているように見えますが、規制をしているかもしれません。
駐車場内も誘導員がおり、空きスペースに停めましたが、ここまでざっと30分程度。連休中日の県下有数の観光地で袋小路と言うポジションで、その程度と言うのはラッキーなのかもしれません。

バス乗り場には定期バス、駅や桂浜、五台山を回る「MY遊バス」と一緒にシャトルバスが発着します。17時半桂浜発が最終で、15分ヘッドで回っているそうですが、混み具合に応じて臨機応変に発着しているようです。バスに貼られたステッカーから察するに、8台は運用に就いており、走れば5〜10分程度の距離でこの頻度、さらに渋滞回避のルートと、駐車場から総て無料と(桂浜駐車場は400円)、使わなかったほうが失敗でした。

渋滞の車列を横目に...


●成功例としての桂浜
あとで調べてみると、桂浜のパークアンドライドは1992年に始まる歴史がありました。
大型連休中のみと言う時限的なものですが、最初は浦戸大橋経由の東ルートでスタート。浦戸湾東側の中央卸売市場やタナスカ(油槽所のあるあたりか)に駐車場を設けていました。

93年からは今に至る西ルートも開設。98年に西ルートに一本化され今日に至っていますが、ルートにぶれもなく、16年も続いていると言うのは立派な成功例と言えます。

なぜ成功したかを考えると、利用しそびれた人間があれこれ言うのは憚られるのですが、ルート設定がいいということでしょうか。浦戸大橋が2002年に無料化され、市内からのクルマでのアクセスが東ルートに偏重しているため、西ルートの利用促進にもなり、かつ浦戸大橋からだと回りにくい裏道を往路に使うと言うコース取りは絶妙ともいえます。
しかも駐車場への復路は、渋滞するクルマに見せ付けるように県道経由で走るため、宣伝効果も抜群です。

これならパークアンドライドを使わぬ手はありませんが、強いて問題を挙げるとしたら、桂浜17時半発が最終ということ。桂浜の夕景を楽しむことを考えると、もう一声遅くして欲しいです。
また、車両が古色蒼然としており、「高知」ではなく「高」一文字のナンバープレートを掲げる古参も多く運用に入っており、シームレス、バリアフリーと言う意味では問題を残しています。

とはいえ全体としては充分成功した部類に入ると言えますし、もっと利用したほうが良いケースと言えましょう。

桂浜の乗り場。最終は午後5時30分の掲示も


●やぶにらみ的観察
ただ、パークアンドライドに限らず、不安を感じたこともあります。

2方向からのルートが合わさって袋小路にある県下有数の観光地に向かうと言うある意味最悪のシチュエーションにもかかわらず、大型連休中の昼下がりに西ルートからだと1kmちょっとの渋滞しかないというのは、そもそも桂浜への人出自体が少ないともいえます。
パークアンドライド自体も、入り込みの状況によっては取り止めになった日も過去にはあったようですし。

さらに必ずしもキャパシティがあるともいえない桂浜の駐車場に入れたということは、出て来るクルマも多いということで、一人一人の滞在時間が短い立ち寄り型の観光地ということでしょう。
実際、私も闘犬を見て、海辺で少し佇み、龍馬像を見たらもう充分と言う気分で帰りましたが、半日どころか2、3時間あれば充分と言うのはちょっとさびしいです。
いまも「トップスター」の坂本龍馬は土産物屋でもあれこれ「利用」されていますが、「龍馬専門店」とか「龍馬とプリクラ」の看板にはさすがに苦笑です。そうした土産物屋がまとまっている姿は昭和時代の観光地然としているわけで、それでもそれなりの集客力があるのが不思議なくらいです。

立ち寄り型の観光地と言う現実に、宿泊施設も目立たず、件の旧道方面にあるようです。
さらに浦戸大橋と長浜からのルートが合流する付近にはラブホテルの廃墟がそびえるなど、どうも盛り上がりに欠ける面もあります。
海沿いの道にしても、路側帯への駐車が可能になっており、桂浜の砂浜へは然程遠くないのに、スペースは空いているわけで、桂浜への入り込みが相当減っているからこそシャトルバスと直付けのクルマが共存できているのかもしれません。
もしもっと入り込みが多ければ、裏道もとうにクルマが埋め尽くしているかもしれませんから。

●パークアンドライドだけが成功しても...
桂浜を後にして、土電の桟橋線に沿う形ではりまや橋に至り、市内一の繁華街になる帯屋町で土佐料理を賞味して帰りました。有数の酒どころで全く飲まずに皿鉢料理などの名物料理を食べると言うのもなかなか辛いものがありますが、仕方ありません。

諸説ある「日本三大がっかり名所」でも、必ず入選するはりまや橋には日が暮れても多くの観光客が集まり、帯屋町界隈も賑わってました。強いて言えば大丸などの店舗の閉まるのが早いのがネックです。

日本三大がっかり

思ったより賑やかな印象を受けた高知市街に対し、桂浜はやはり集客力が落ちるのでしょうか。
外から来た観光客にとっては、桂浜は高知市内の観光地ですが、クルマやバスで30分程度かかるわけで、案外と距離があります。
バスの運賃は片道ではりまや橋から560円、高知駅から610円と、これは市内としては高い印象です。

一方で上記の「MY遊バス」は、日中60分ヘッドとやや冗漫ですが、700円で「MY遊バス」、土電の市内均一区間、ぐるりんバスに1日乗り放題と、これは逆に安すぎる印象です。
実は土電の市内均一区間は190円と、大都市並みとはいえ、高知駅とはりまや橋の移動というような利用においては高い印象があるわけで、桂浜への観光促進と言う意味でも、バス運賃や電車運賃の再考、特に桂浜への往復運賃の見直し(MY遊バス並み)や、土電の短距離運賃の値下げがあれば、と感じました。

パークアンドライドと言う受け皿はハイレベルなものを持つ高知、桂浜。
ここの課題は、その中身の質と、公共交通だけを利用する場合にあると言えそうです。







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