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神戸空港、忍び寄る危機
屋台骨の羽田線を巡る諸問題


夜便の利用は堅調だが


来年2月に開港3年目を迎える神戸空港。年間300万人弱と言う利用実績は目標値には届かないと言っても決して「少ない」とはいえない数字です。

しかし、2008年6月にスカイマークの機長不足からくる大量運休という前代未聞の不祥事を契機に、前年比での大幅減少となり、スカイマークの機長問題が解決した8月以降もその数字に回復傾向は見られません。
この突然の逆風にさらされた神戸空港ですが、いま、さらなる「危機」が忍び寄っているのです。


※写真は2008年12月撮影



●スカイマークに振り回されて
減少傾向のきっかけはやはりSKY、スカイマークでした。
2008年4月25日から羽田−旭川線を2往復運行するのに伴い、同日より羽田−神戸線が2往復減便されたのです。
7往復が5往復になることで、7割程度の座席提供数になったわけですが、問題はその減便されたスジであり、午前中朝2番目の羽田行き、夜の最終前の神戸行きと言う同線きっての搭乗率だった2便が含まれていたのです。

日中の搭乗率が悪い便も減便したことで全体の搭乗率は好転していますが、全体の利用者数は5月で前年比73%、3月比でも70%弱と、実数を大きく下げました。

そして6月に入り露呈した機長不足による運休です。
さらに1往復の減便。それも羽田発の最終便が対象とあっては、4月の減便に加えて夜の羽田発が消滅した格好となり、ビジネス需要はもちろん、観光その他のプライベートな利用においても、その利便性を大いに下げたわけです。

利用者数は7月の前年比46%を底に、50%台に落ち込んだのですが、深刻なのは機長不足が解消した後で、4月の減便段階では前年比70%台だったものが、前年比50〜55%となり、5月比で毎月11000人(10月)、1便当たり35人が長期運休問題を契機にさらに逸走している勘定なのです。

7往復時代との比較では長期運休前で毎月20000人ベースでの減少であり、その段階で年間24万人、さらに長期運休後は年間37万人の減少となるベースですから、まさにスカイマークに振り回されたといえます。

ちなみにこのきっかけとなった羽田−旭川線ですが、月間の利用者数は11月には1万人を割り込み、搭乗率も738使用で45%前後と、2006年の「第二の創業」での大規模な路線整理での廃止路線を彷彿とさせる厳しい状況であり、普通運賃こそ羽田−神戸線の2倍とはいえ、多彩な割引運賃のメニューを見ると、平均客単価は割引メニューがほとんど無いに等しい羽田−神戸線のいいとこ5割増しであり、旭川側での運営経費を考えたら、減少分をカバーするどころかネットで減収としか考えられず、旭川では根付かず、神戸は信頼を失うという、完全に戦略が裏目に出た結果といえます。

利用が回復しないSKY便


●大手の退却
一方他社はどうでしょう。
9月にAMX、天草エアラインによる熊本線(経由で天草まで運行)が就航し、開業記念運賃が破格値と言うこともあり9月は85%と言う高搭乗率を記録しましたが、所詮はボンバルディアの1往復とあって実数としては小さいです。さらにご祝儀月間が終了した途端に利用は低迷し、翌月の搭乗率は一転して5割を切るという惨状に、11月から12月中旬にかけて長期運休とし、再起を図るという早くも試練にさらされています。

大手は低利用の地方路線の廃止表明がさらに進み、JAL(含むJTA)が鹿児島線を2009年2月から、ANAが仙台線を2009年4月からそれぞれ休止することを決定しており、残るは羽田、札幌、沖縄の幹線3路線と1往復の石垣線(石垣発は沖縄経由便)と、選択と集中ここに極まれり、と言う感じです。

それでも利用も多い幹線系統への集中ですから航空会社、空港とも経営的にはプラスに働き、かつ利用者にとっても幹線への集中、拡充は歓迎する話ですが、ここにきて頼みの幹線も怪しくなってきたのです。

●JAL2月改正の「衝撃」
鹿児島線廃止がトピックスとなる2009年2月の改正ですが、その陰で大きな変化が出ました。

2往復ある羽田便ですが、朝の羽田発の時刻が繰り下がります。
これまで羽田815→神戸935だったものが、羽田905→神戸1020になるのです。
この繰り下がりは大きく、空港からタクシーを使えば10時頃には市内の訪問先に入れたのが、新ダイヤでは11時近くなります。これでは午前中の仕事には全く使えないといってよく、航空会社ごとの囲い込みが進行している現状、朝が使えないのなら帰りの便の利用も減るでしょう。

それを見越したのかどうか、これまで2往復とも763だったのが、新ダイヤでは738と、座席数がざっくり4割減少と言うダウンサイジングです。特に朝の羽田発、夕方の神戸発は当初772でしたから半分以上の減少となっており、事態は深刻です。

これは日中の千歳線につき、これまで鹿児島線と共通で734で運航していたのを羽田線共通にした格好ですが、逆に羽田線と共通だった沖縄線は763のまま神戸ナイトステイに変更されており、かつ夜の羽田発、朝の神戸発も同時に738にダウンサイジングされて神戸ナイトステイとなっており、明らかに羽田線をターゲットにしたダウンサイジングです。
JAL便を使うことが多い同僚に聞くと、朝の羽田発の利用は悪くなく、実際、2往復全体の搭乗率は10月実績で75%ですから、座席提供数の段階で利用者数の実績を割りこむということになるわけで、どうしてという思いが強いです。

ついでに言えば沖縄線、千歳線、石垣線ともダウンサイジングはなく、時間帯もどちらかというといい方向へ修正されています。かつ石垣発の折り返しとなる夜の沖縄行きは1940から2030に繰り下げられており、長期運休問題で08年は流れたSKYの神戸−沖縄線の運行に対する布石ともいえるわけで、神戸発のベースでは羽田線を除き堅調というか、積極性すらうかがえる改正です。

朝の神戸を彩るJTA、JAL機


●ANA4月改正、そして
ANAは4月に仙台線を休止することを決めていますが、12月6日付の神戸新聞はANAが4月から日中の羽田線を減便することを検討していると報じました。
これは沖縄線、仙台線との運用の関連という面も大きく、仙台線がなくなった時点で羽田線が残ると中途半端ということかもしれません。

こちらは羽田線に関しては、メインの朝晩の2往復に関しては変化がなく、引き続き763での運航のようですが、朝の羽田発に関しては早朝640発ということもあり、搭乗率は単身赴任者が多い月曜を除けば目算で30%程度というのが現状です。(幸か不幸かこの便の利用頻度が高いことによる実見)

こちらは沖縄線との共通運用ですが、JALのようにダウンサイジングされるか、もしくは運用を大きく変更してダイヤ改正という流れにならないとも言い切れないのが現状です。
ただ早朝便を見ていると、80人程度の利用の割に、いわゆる上級会員が半分近いことも多々あるわけで、客層も大半がビジネスマン、プレミアムクラスの利用も多く、客単価的には悪くはないはずです。

その意味で昼の羽田線の削減理由が6割程度の搭乗率だが団体が多くて、というものでしたから、逆に早朝便の採算は意外と悪くないのかもしれません。
羽田線全体での10月の搭乗率は61%ですから昼便は平均値程度となり、早朝便が30%とすると残る朝晩の3便は70%程度、意外ですがJALより利用が悪いようです。

●羽田線の危機
忍び寄る危機というのは、まさにその羽田線です。
SKYの「迷走」により年間利用者総数の1割以上の逸走を招いたことが顕在化したわけですが、JALの2月改正で特に羽田発のビジネス利用が激減することが予想されます。

もともと羽田発ベースでのダイヤは中途半端で、JALだと朝の往路がもともと10時に間に合うかどうかというやや遅い時間で、夕方の復路は18時過ぎの出発と定時頃には切り上げていないと厳しく、軽く食事もできずに帰るというか、あまり仕事の時間がとれない重役ダイヤでした。
一方のANAは朝の往路が8時前には神戸に到着し、市内の大半の場所で9時出社が余裕で可能、夜の復路は21時前の最終(10月までは21時発)と、こちらは働き蜂ダイヤとなっています。

なおSKYも夜の帰りはちょうどいいのですが朝の行きが遅く、総じて使い勝手が悪いです。
そこに路線政策の迷走によるビジネス需要の高かった便の削減や、機長不足という安全面への疑義を抱かせるに足る不祥事の発生と長期運休の発生は、ビジネス需要を中心に決定的なSKY不信を招いたため、今後の回復は非常に難しいでしょう。
特に安全面の問題は、企業によってはSKY利用を控えるように指導しているケースが現実に出てきているように聞いており、こうした形での信用の喪失は大きく後を引くでしょう。

このようにSKYは論外としたうえで、大手も羽田発の時間帯が中途半端なうえ、2月改正でJALの利便性、キャパシティとも大きく下がります。
そうなると屋台骨とも言える羽田線の利用がさらに減少することで、神戸空港の利用者数は更なる減少が必至なのです。

夜の神戸空港


●そして大いなる逆風
一方で神戸発では朝7時台の出発、夜21時台の到着と3社横並びで、かつ連日利用が多いということは、まさに堅調というか、定着ぶりがうかがえます。

JALの2月改正も神戸発で見た場合、積極性すらうかがえることから、「神戸の空港」として地元の利用は上手につかんでいると言えます。そういう意味では神戸の集客力の一層の低下は深刻であり、全国から神戸に人を集める、という開港当初の市の目論見は大きく外れたことになりますが、これは空港の問題というより、神戸市、そして関西全体の地盤沈下の問題にほかならず、神戸空港の状況は図らずもそれを裏付けているにすぎません。

しかし、神戸発も安閑としてはいられません。
「リーマンショック」に端を発した世界的な経済危機で、我が国経済は突然死のような感じでクラッシュした状況にあります。
企業業績の見通しはつかない状況で、大手優良企業が下期の見通しを一気に赤字の見通しに引き下げるなど、180度ターンとなった感じです。

そうなると神戸空港の屋台骨であるビジネス需要中心の羽田線の利用はどうなるでしょうか。
もともと新幹線との激しい競合にあるなか、2000年代前半から航空運賃の自由化に伴い、羽田−伊丹、関空線のビジネス需要をターゲットにした運賃設計により、「のぞみ」利用よりも安い水準で法人むけ回数券など「正規運賃」が提供されることにより、アクセスのコストで逆転はするものの、時間的優位性や絶対的拘束時間の短さで航空はその利用を伸ばしてきたのです。
実際、新幹線が「のぞみ」中心ダイヤにした2003年改正の後でも航空の伸長は止まらず、東京都−大阪府の移動では航空のシェアがついに1/3を超える35%に達するほどでした。

ここ1、2年、燃料費高騰による相次ぐ値上げで価格競争力は低下する一方でしたが、景気の回復基調にも支えられて新幹線ともども利用を伸ばす格好となり目立ってシェアを落としてはいませんでしたが、ここにきて伊丹線を中心に減少傾向に転じ、かつ下げ止まらないことは事実です。
そして今回の景気のクラッシュは、いわば航空がそのシェアを伸ばしてきてから初めての大規模なリセッション期となるのです。

首都圏−関西圏における航空の武器は分単位の時間短縮と拘束時間が少ないといった快適性、さらにはマイレージなどの「おまけ」ですが、その利用の支払いをする企業にとってはやはりコストが第一になります。
景気がそれなりにいい時分には、若干の冗費は許容範囲ですし、コスト以外のメリットが会社や仕事、社員のモチベーションにも好影響を与えるのであればそれは良しとするものでした。

しかし景気減速、いや、経済が危機的状況に突然追い込まれた現状、若干の利便性は犠牲にしてでもコストをカットする、というリストラ的発想が牙を剥きます。
企業行動を推測すれば、かつての「新幹線ビジネスきっぷ」の時代、20分程度の時間短縮では2000円強の追加支払となる「のぞみ」利用を容認しなかった「前例」があるわけです。
足元の航空運賃は法人向け回数券やハウスカード所持者への2枚きっぷで15100円と新幹線のエクスプレス予約より1000円以上高く、空港までのアクセスを考えると新幹線より1割ないし2割高く、まさに「のぞみ」利用券時代の価格差と相似形ですから、企業の今後の行動は火を見るより明らかと言えます。

ただ、絶対的なコストで安い新幹線へのシフトが今後進む反面、出張の絶対的な回数も同時に減少することでトータルのパイは減るため、「勝ち組」の新幹線もまた絶対的な需要減少の影響は不可避です。

●厳しい前途をどうしのぐか
航空各社が燃料費高騰に苦しんだ08年度前半までに打ち出した政策は、不採算路線の整理であり、関西においては関空発路線の相次ぐ休止でした。

燃料費高騰は事実上旧に復した格好ですが、需要そのものが消失する事態に至ったとして、航空会社の取るであろう対策を考えた時、羽田線以外においても神戸空港のポジションは非常に微妙です。
ライバルのいない長距離路線ですら移管すると利用者が減少する傾向がみられる関空に対し、利用が堅調なことで伊丹を補完してきた神戸ですが、需要が減少した時、航空各社は関西の航空需要の「最後の砦」を伊丹とすることは想像に難くありません。

そうした時、総崩れ的な国内線の休止に悲鳴を上げる関空の苦境が神戸にも降りかかることは必至であり、それでも国際線がある関空と異なり、国内線しかない神戸のポジションは極めて深刻です。

本体こうしたリセッション期には、ローコストキャリアが強みを見せるのですが、SKYは最悪のタイミングで「自爆」した格好であり、神戸にとってはそれも誤算と言えます。

伊丹は航空会社が、関空は国が何とか守ろうとする中、せめてSKYに1年前の信頼があれば、客は神戸を守ろうとする、と言えたのです。
そうした逆境の神戸の中期的展望としては、なんとかSKYが早期に信頼を取り戻して、価格競争力を武器に幹線航空の利用を確保することで景気回復を待つしかない、そして利用者、特に「平時」において神戸空港の恩恵を受けてきた利用者サイドが、「乗って残そう」的に敢えて利用することで下支えするというシナリオしか現状描けないのです。

クリスマスバージョンの空港ロビー







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