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羽田行き416便出発せず
悪天候による欠航を体験する


嗚呼..


航空機利用における最大のリスクが、事故を除けば「欠航」であることは言うまでもないでしょう。
機材トラブル、悪天候など理由は様々ですが、これを食らうと大変です。
これまで欠航には当たったことがなかったのですが、遂に体験する破目になってしまいました。


※写真は2009年2月撮影



●忘れていた欠航リスク
航空機は速くて便利なのですが、鉄道に比べると定時性と言う面ではいまひとつで、常に10分程度の遅れは織り込まないといけないと言う感じです。

そして頭の片隅に常にあるのが「欠航」のリスク。もっとも最近では鉄道もちょっとした悪天候や事故その他によるダイヤの乱れで遅延どころか運休するケースもしばしばであり、これは2000年9月の東海豪雨での苦い経験がきっかけであり、ああいう悲惨な抑止体験もまた御免ではあるだけに止む無しでしょう。
とはいえ沿線のどこかで集中豪雨があるとすぐに引っ掛かるとなると、離発着する空港の天候が静穏であれば中間の天候の影響は台風でもない限り受けにくい航空のほうが却って信頼性が高いともいえるわけで、一長一短といえます。

特に離発着時における悪天候でも、航空機は思ったより強靭であり、例えば関空連絡橋が閉鎖になるような強風時でも、関空の離発着ができているから「足止め」になるケースが問題になるわけですし、15年以上前ですが、台風接近の悪天候の中、羽田へのモノレールに連絡する山手線などが暴風雨で軒並み大混乱しており、ほうほうの体で羽田に辿り着いたら航空機は平常どおり出発、ということもありました。

昨今出張で首都圏−関西間を移動する機会が多いのですが、このところ夏の大雨に冬の雪と新幹線の信頼性のほうがいま一つという評価があったのは事実で、航空機利用が当然のようになっていました。

●「春一番」の予報の中で
そうした2月の中旬、神戸への出張も最終日を迎えた金曜日のことです。
日本海側を発達した低気圧が進み、太平洋側にも発生したいわゆる「二つ玉低気圧」となり、荒れ模様の予報となりました。時期的に「春一番」が予想される天気図であり、実際、昼下がりから急速に天気が崩れてきたのです。

仕事のほうは定時とは言えませんでしたが何とか終了し、新幹線で帰京する同僚と別れて神戸空港に向かいました。予約は20時55分発のNH416便。三宮そごうの御影高杉で頼まれていた洋菓子を買い、この時間帯は神戸空港まで行くと夕食事情が宜しくないので、三宮で夕食を摂ってポートライナーに乗ったのですが、20時頃の三宮は生暖かい風が時折強く吹くものの、夕方前からの雨も上がっており、特段悪天候と言う感じでもありませんでした。

ただ、ポートライナーの改札口には、関空へのベイシャトルが強風のため15時から運休と言う掲示が出ていましたが、翌朝の神戸新聞によると、これは強風が見込まれるために計画運休とのことで、実際の天候悪化によるものではなかったようですし、もともと高速艇は風浪に弱いとあって航空機への影響は考えませんでした。

ベイシャトルは早々欠航


●搭乗待ちの間に沸き起こる暗雲
ポートアイランド南を出て、空港への連絡橋にかかるころ、窓ガラスを叩く風雨が急に強くなりました。
やはり海沿いと言うか海上は風が強いのでしょう。神戸空港駅に着き、ターミナルに入るとNH416便は運航ですが、羽田空域混雑のため15分遅れでの出発と言うアナウンスが流れています。

出発案内も4番ゲートから21時10分発に変更になっており、結果として20分以上遅れることはあってもこれは珍しいな、とセキュリティエリアを抜けましたが、ここで出てくる搭乗口案内に記載された時刻は変更後の21時10分。芸が細かいなと思いつつも心配事は羽田22時40分発の津田沼行きリムジンに間に合うかと言うレベルでした。

「発着便規制」で15分遅れの案内

搭乗までまだ少し時間があるので、売店で生ビールを買ってロビーのベンチで飲みながら、テレビの他愛も無い番組を見やったりして時間を潰します。
テレビも見入るほどではなく、ふと漆黒の滑走路にともる灯りしか見えないはずの窓を見ると、航法灯を点滅させた航空機が見えます。この時間到着便はないはずで、尾翼灯に照らされた垂直尾翼は赤く、JAL便のようです。ということは20時半発の沖縄行きNU319便(JTA)ということで、3番ゲートから出たはいいが誘導路手前で止まっているのです。

通りがかった職員らしき人から、「ポートライナーも止まってる」と言う声が聞こえてきて、えっ?と思った頃、悪天候のため離発着制限がかかり、搭乗はしばらくお待ちを、と言うアナウンスが入ったのです。

●事態は最悪の局面へ
にわかに暗雲です。時刻は21時が近く、このタイミングでは新神戸に向かっても最終の新幹線には間に合いません。NH416便が出ない限り家に帰れないわけで、祈るような気持ちで天候の回復を待ちました。

ふと携帯で羽田発神戸行きの最終3連発の運航状況を見ると、JAL、ANA、SKYとも羽田は出ていますが引き返し特約が付いています。
これは非常にやばーい雰囲気であり、最悪の事態に備えて市内のホテルの空室状況を見て、まだ余裕はありそうですがいくつか目星をつけておきます。

再びアナウンスが入りましたが、天候回復の見通しが立たず、このままだと欠航の可能性も含めて検討中ですと言う最悪を予感させる状況へということで、家に最悪の事態があり得る事を連絡し、半ば腹をくくって待ちました。

そして21時半が近づいたころ、5番ゲートにいたSKYの車両が撤収です。羽田発の到着予定時刻が近いと言うのに撤収ということは引き返しが決まったのでしょうか。
そしてJALの車両が現れた時には一瞬羽田発の到着ゲートの変更か、とぬか喜びしましたが、それは3番ゲートから出て誘導路手前で停止中のNU319便の取り込みだったのです。

NU319便が5番ゲートに入着すると乗客の降機が始まりました。4番ゲートのNH416便になるはずの機材も機内の灯りが消え、いよいよでしょうか。

●ついに欠航
そのころ上空低く西から東へ向かう航空機が1機、密雲の下を飛ぶのが見えました。目ざとく見つけた人から飛べるんじゃないか、という声が上がったころ、アナウンスが入りました。

「ANAから東京羽田行き416便をお待ちの皆様、大変長らくお待たせいたしました」

航空機の飛来もあったので大逆転か、と思った次の瞬間、「当機は欠航となりました」と非情の宣告です。
ただ、どう考えても「お待たせしました」の前振りと本題が合ってないので、ロビーの乗客からは溜息と同時に失笑もでてました。

即座に目星をつけていたホテル、まあ三宮での定宿ですが、そちらに電話して予約です。NH416便とNU319便の2便分の乗客が明日の便に振り替わるのですから宿の確保が懸念されます。
もっとも後でホテルにチェックインの際に聞くと、急遽の予約もあるが、逆に羽田発の3便が引き返しとなったためキャンセルがかなり出たそうで、泊まりはぐれることは無かったようです。

さて欠航ということは元に戻るということで、そのままセキュリティを戻るかと思ったら、荷物の受け取りもあるのでいったん到着階に移動して、再度出発階に上がってカウンターで手続きという迂遠なルートに誘導されました。改札機を抜けた先は出発到着共通の通路とはいえ、そのまま階段を下りるというのは変な感覚です。
私は預け荷物がないのでそのまま淡々と到着時にポートライナーに乗るように2階に上がり、振替手続に臨みました。

出発ロビーから到着ロビーへ虚しい移動


●振替処理はこんな感じ
ANAのカウンター周りは既に人だかりができていましたが、指示があって行列は3つに分けられました。まず最速で東京に向かう人のためか、伊丹7時15分発のNH014便への振替が独立し、あとは優先搭乗ステイタスの振替・払戻、一般の振替・払戻です。

こんな時まで上級会員と峻別するのか、と言いたくもなりますが、こういう時の扱いが違うのも上級会員のメリットとして謳われている訳ですから仕方がありません。
ただ気になったのは、別枠になったのはあくまで優先搭乗ステイタスと同じダイヤ、プラチナ、SFCカード会員だけで、ブロンズは一般扱いです。ブロンズは他の上級会員とサービスランクに雲泥の差はあるとはいえ、いちおう上級会員の端くれですし、キャンセル待ちは他の上級会員と同じく種別Aなのに、異常時には一般扱いというのには驚きました。まあラウンジの利用条件のように1000マイル払ったら先に取り扱います、と言われるのも嫌らしいですが。

端くれ会員の私は当然一般の列に並んでましたが、金曜の最終便とあって上級会員の比率が高く、おまけにNH014便への振替が早々に終わり、結果として一般の列は窓口4つ、上級会員は2つになってしまったため、皮肉なことに一般のほうがサクサク流れてます。おかげで30分程度で手続完了で解放されました。

振替ですが、ビジネス特割(現在の特割1)は本来変更は効かないのですが、こういうケースでは当然振替の対象になります。素直に行けば翌朝の便なんですが、関西地方の天候は朝には回復の予報ですが、関東地方が午前中は荒れる予報でもあり、どうせ土曜日と言うこともあり朝寝をして午後の伊丹発にしました。4年ほど前、爆弾低気圧が襲来して大荒れの関空に着いたことがありますが、その日は後続の便は羽田に引き返しとなり、翌朝というか翌日はその低気圧の影響で羽田が大混乱だったということが頭の片隅にあり、朝便だとリスクが高いと判断したのです。

ちなみに特割は便によって値段が違いますが、欠航による振替の場合は高い便への変更でも差額を徴収しない決まりです。結局同額の便への変更でしたが。

解放されてやれやれと駅のほうに向かおうとすると、NU319便の手続は既に終わっており、ひっそりとしたフロアでANAのカウンターだけが賑わっています。時折出迎えの人でしょうか、到着便状況を聞きに来る人もいますが、羽田便は引き返し、札幌便は関空に着陸となったとのことで、確定情報ですから比較的平穏でした。

最終便の欠航だと必然的に宿泊(延泊)を伴いますが、機材故障など事業者事由の場合は補償されるのに、悪天候が事由の場合は補償されません。ただ、こういうときは結構個別交渉になることも多く、現場限りの扱いも多々あるので、ダメ元で聞いて見ましたが、やはりダメでした。

振替・払戻の行列


●そして翌日は
当夜は神戸発が2便、神戸着が4便欠航したわけですが、その後の機材のやりくりはと言うと、JTAは翌14日の11時半に欠航便の機材を使ってでしょうか、臨時便が出ると言うアナウンスが流れてました。

カウンターでは神戸を翌朝7時15分発のNH412便の運行は微妙と案内して伊丹7時15分発のNH014便への振替を勧めていたのですが、よく考えたら本来NH412便へ充当されるNH415便が来ない代わりにNH416便になるはずだった機材が神戸にいます。朝夕の2往復の機種は同じ763のはずですから、天気さえ回復すれば運行できるのは自明です。

結局NH412便は7時15分の定刻だったのですが、定刻7時10分発のJL150便が34分遅れの7時44分の出発となっており、こちらは前夜の羽田行きは夕刻に出発しているので、早朝に羽田からの回送があったと思われます。BC102便も定刻7時35分発が9分遅れのこれも同じく7時44分発となっており、7時の神戸の「開門」と同時に2機が送り込まれて最短で折り返したと言う感じです。

なお21時半頃の機影は羽田発のようで、神戸上空まで来て風が止むのを待っていたようです。ネット情報ですが、SKYに至っては40分遅れで羽田を出た後、22時過ぎまで何度か着陸をトライした末の断念だったようです。
同時間帯、関空はなんとか発着しており、やはり南風が横風になる神戸の弱点が露呈した格好ですが、羽田発関空行き最終のMQ029便(SFJ/共同運航=NH3829便)は50分近く遅れて24時近い到着となり、関空発の交通機関がなくなってしまったようです。

そして新幹線は特に混乱も無く、神戸空港関係だけが割を食った格好です。

到着案内もこの通り...


ホテルに入り、翌日は半ばふて寝でゆっくり休んでから伊丹に行き、神戸での指示通りカウンターへむかいました。本来ならICカードによるスキップサービスですが特割など本来変更が効かない航空券の振替はスキップではなく紙ベースになるため、久しぶりに紙の搭乗券を貰いました。

欠航による振替なのでカウンターでお詫びの言葉がありましたが、それならば端くれ会員ですし、ラウンジを1000マイル減算抜きで使わせてくれると言ったサービスでも、という強欲が頭を過ぎりましたが、さすがにそれは無かったです。

前夜とはうって変わった好天の下でのフライトとなり、半日遅れで羽田に着いて長かった出張もようやく終わったのです。

●あれこれ
よく考えたらこの日は「13日の金曜日」でした。だからなんだと言われそうですが、そういう経験をすると験を担ぎたくもなります。
そしてこの嵐、やはり春一番でした。東西に1本の滑走路で、南の強風は六甲山にも遮られないため、まともに横腹に受ける格好となる神戸空港の最大の泣き所です。

もっとも同じ横風でも北風はそれを受ける格好で六甲山があり、名高い「六甲颪」も実際には頻繁に吹き荒れることも無いし、そもそも神戸市内の強風はどちらかと言うと西風が多いので、開港前に反対派が盛んに喧伝していた「強風ですぐ欠航」ということはこれまで無かったと言って良く、今回の欠航もかなり珍しい部類に入ります。

そもそも天候原因の欠航がそうそう頻繁にあったとしたら、やはり航空を選択するのはリスクを感じるわけで、迷わず航空を選択していたのもそれが少ない証左なのですが、今回は天が投げた石に当たってしまった格好です。





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