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スマートICの社会実験を体験して
中国地方の3インター訪問記



エル・アルコン  2005年10月19日


加計BSスマートIC(R191安芸太田町下津浪)


※この作品は「交通総合フォーラム」とのシェアコンテンツです。

写真は2004年12月、2005年5月および9月撮影

2006年11月12日 補筆


●スマートIC導入と黎明期の利用
ETCを活用して高速道路のIC以外での出入りを可能にしたいわゆる「スマートIC」は、社会実験として2004年7月以降採択され、2004年10月15日の東名高速上郷SA(愛知県)を皮切りに各地で期間限定で開設されました。
ETC車に限定することで料金授受の必要が無いスマートICは、SA、PAやバス停などの本線付帯設備があれば設置が可能であり、また出入口では一旦停止にすることで、強行突破などのセキュリティチェックを行い、また通信トラブルの可能性を下げることで低コストでの簡易IC設置を可能にしています。

このスマートIC、第1号の上郷SAについて2004年の11月に利用しています。
当時は東名と伊勢湾岸道がまだ豊田JCTで接続しておらず(2004年12月開通)、伊勢湾岸道に向かうには東名の岡崎ICから伊勢湾岸道豊明ICに向かうか、東名の豊田ICから伊勢湾岸道の豊田南ICに向かうか、いずれにしろ一般道を介する必要がありました。
実はこの上郷SAの位置がなかなか良く、豊田南ICまでの一般道走行距離をセーブできる位置にありました。そのため趣味と実用を兼ねて利用したのです。

通常IC関係の標識は緑色となっていますが、スマートICを示す標識が上郷SAを示す緑の標識の脇に掲げられたその色はETCのロゴと同じ紫色。大型車は利用できず、時間帯も7時から20時までと限定されています。SAに入ると休憩してから出られるかと言う目論みを外すようにSAへ向かうレーンと区分された出口車線が現れ、一旦停止が義務付けられていることから通常の路面マーキングではなく段差が2ヶ所設けてありました。
停止線とバーがあり、右手には小さな小屋。異常時にはドライバーがボタンで開閉操作(ゲート上げの催促)をするとのことですが、どうもその小屋で手動でゲート上げの操作をしているのでは?と思わしめる状況です。料金表示は東名川崎から6550円とのことで、岡崎より 200円高く、豊田より 100円安い設定。後で前割履歴の表示を見たら「上郷SA仮出口」となっていました。

ちなみにゲートの先は高速道路の脇にありがちな草むらと側道です。すぐ田舎道との信号もない十字路、そしてすぐ市道との三叉路になっており、伊勢湾岸道豊田南IC方面は右折ですが、信号などあるはずもなく、右折には注意が必要です。この状況を見ると、高速で流出することを想定して造られた通常の出口と違い、ETCをノンストップにすると、たちまち2つの交差点で事故が多発しかねないわけで、それゆえの一旦停止と考えれば得心も行くものでした。

上郷SAのスマートICは予定通り2005年1月31日で終了しています。まあ2004年の12月12日に伊勢湾岸道と東名が直結されており、また、下り線の出口のみというクオータータイプということもあり、社会実験期間中の利用平均が139台とありますから6分に1台程度の通過台数だったようです。

●中国地方の3スマートICを見る
さて上郷SA同様の第一次採択組に中国地方の中国道大佐SA(岡山県)、加計BS(広島県)、浜田道金城PA(島根県)があります。これら3ヶ所のスマートICでの社会実験は2004年12月にスタートしましたが、これらを昨年末と今春、今秋と見てきました。

◇加計BS
別稿の可部線ルポで少し触れましたが、2004年の大晦日、雪の降る中見学しました。と言っても利用体験ではなく、高速バスで立ち寄るという単なる「見学」でした。

5km手前から丁寧な案内ここが加計BSスマートIC出口

安佐北区飯室近辺の広島北JCTから太田川に沿って蛇行するR191や旧可部線を長大トンネルで一気に短絡して安芸太田町の戸河内ICに向かう中国道が、天駆ける高架橋で太田川とR191と交差する手前に設けたのが加計BS。しかしICが無いので、この地域の中心的存在だった旧加計町(安芸太田町)へはいったん旧戸河内町の戸河内ICまで行ってから戻る格好でした。

出口のゲート。大型車は出るだけとの注意出口を外側から見る

ここに設けられたのが加計BSスマートIC。広島方面だけのハーフICとなっていますが、福岡方が谷になっている地形の制約を見れば無理からぬところ。高速バス乗り場と「下界」の連絡通路は上り側が階段なので、狭いアンダーパスを通り下り側の車道経由でR191に出ます。
加計の集落の南限とも言える津浪の集落に出ると、R191には仮設ながら「中国道 加計IC KAKE」の看板が立ち、あちらこちらに観光協会の「加計浪漫」の幟が立ち、スマートICへの期待が伺えます。

入口へは左手のアンダーパス経由さらに下ったところ。左は上りBSへの階段道

見ていて驚いたのは利用がかなりあること。雪が降る大晦日なのに4、5分に1台は通過しており、それも芸北あたりのスキー場アクセスに活用というよりも、地元然としたクルマが多く、ETCの普及が前提でもあるだけに、中国道の山間部としてはかなり多い印象です。

気になったのはSAやPAと違い、ゲートを入るとBSの加速車線に合流し、そのまま本線に向かうこと。さらにその先に広島島根県境の積雪地帯を抜けたクルマへのチェーン脱着エリアらしきものがあるため、高速バスやチェーンを外すクルマとの輻輳が心配です。
なお下り線側は、PAのような大きなチェーンスペースがあるため、バス停、スマートICとも十分な余裕を持って設置されています。

BSからバスが発車(石見交通高速バス)BS側からスマートICの合流を見る

なお、当初2005年3月15日までだった期間が延長されたのですが、その際に施設に余裕がある下り線に限り、大型車の利用も容認されたのが他のスマートICに比べても異色といえます。
2005年の5月、さらに9月と今度は自分のクルマで利用しましたが、8月31日までの期間延長、さらに9月25日までの再延長を経て、現在は2006年3月末まで再々延長と、利用の定着が見て取れます。
(8月の1日利用平均は385台)
また広島方面との利用が大半で、さらに広島北ICとの間での利用が多いことから、道路事情の悪いR191の迂回路としての活用という地域密着型の利用が見て取れます。

スマートICを入るクルマ下津浪。天駆ける中国道(奥が加計BS)


◇金城PA
浜田道の旭ICと浜田JCTの間に位置する金城PA、旧金城村(浜田市)の中心に近く、浜田までの間にはひと山越える感じです。
一応美又温泉という観光地がありますが、どちらかと言うと地元密着型のスマートICで、利用も浜田ICとの間がほとんどです。

金城PA入口スマートIC全景

金城PAはトイレだけの設置ですが、浜田への最終PAとなるだけにそれなりに利用があります。
ここも厳密には出口車線がPAの駐車場の手前で別れていますが、「まあカタイことは言うな」という感じであり、PA利用後の出場が可能です。
ここの訪問は9月でしたが、加計と違い利用車は少ない(8月の1日利用平均98台)ものの、浜田道の末端ですからベースの通行台数が段違いであり、単純比較は出来ません。見ているとたまたま出ていくクルマがありましたし。

小型トラックがゲートを抜けて...

取り付け道路を降りて見ると、そこは何の変哲も無い一般道。スマートICへの案内看板と期間再々延長のお知らせが出ていました。

ゲートの外側から取り付け道路の終点。入口は左後方へ


◇大佐SA
中国道の岡山県区間、北房ICから新見ICまでの区間は山間部で勾配、カーブが厳しく、設計速度も大幅に落ちるため60km制限となっています。
この中間に位置するのが大佐SA。かつて今は無き京都交通/広島交通の高速バス「もみじ号」(京都−広島)の昼便に乗車した際、山陽道が全通してなかった時代で中国道経由のバスが昼食休憩として大休止したのがこの大佐SA。今から考えれば「東海道昼特急ゆったり号」の先輩格でした。

ここは旧大佐町(新見市)、周辺の名所というとあまりなさそうですが、キャンプ場やパラグライダー場などがあるようです。また、かつて並行する姫新線に急行があった頃、町の中心部の刑部駅に停車する大阪直通の急行「みまさか」の設定もあり、金城同様地域の利用が期待されたようです。

まもなく大佐SAスマートIC

ここも9月の訪問、夕暮れ時で夕闇が急激に迫る時間帯でしたが、大佐SA出口の案内に従ってSAに入ると、ここもIC利用車がSAを利用出来る構造でした。位置は下り側の給油所の横になります。
山陽道全通後はめっきり通るクルマも減った中国道、台風14号の影響で死者も出た山口県下の法面崩落事故の影響で山陽道が不通になっていますが、それでも広島北JCT以東で経由するクルマは少ないようで、SAも閑散としています。
売店が片手間にスナックを売っているというのも侘しく、レストランがあるのが不思議ですが、ここに無いと岡山県東部の勝央SAから広島県東部の七塚原SAまで無いだけに、義務感での営業のようにも見えます。

スマートIC全景


SAで休憩後、スマートICを出ますが、既に日も落ちて真っ暗な側道を大阪方面に戻る格好で進みます。もちろん所々には街灯もありますが基本的には真っ暗で人気も無くちょっと怖い感じ。
相当戻り、中国道のトンネルの手前でようやくアンダーパスを通り上り線へのアプローチと合流しますが、そこからも田舎の細道を下り続け、1.5km以上は走ったでしょうか、ようやく勝山(真庭市)と新見を結ぶ県道に出ました。
旧大佐町の中心は右手ですが、私は新見に向かって下りました。県道に出るまでの間、対向車も利用車も見なかったわけで、時間帯のせいもあるんでしょうが、ちょっと期待外れという感じです。

闇に浮かぶスマートICを示す看板

ちなみに8月の1日利用平均は231台。金城PAよりは多いですが、ハーフICの加計BSに遠く及びません。そのせいか、再々延長の対象にはなりましたが、他2ヶ所と違い、岡山国体対応と言うことで11月13日までの延長と、4ヶ月短い延長はこれで終わりと言う含みでしょうか。

●スマートICを利用して
スマートICの利用はこの4ヶ所だけですが、他にも海岸に出られる北陸道徳光PAなど、各地に増殖しています。これらは一応期間限定の社会実験ですが、加計BSのように利用価値も高く常設にして欲しい個所も多いです。
もちろん、現在は社会実験と言うことで異常時対応として係員が常駐しており、それがゆえの時間制限であり、維持コストの面で優位性を発揮出来ていない面があります。

北陸道徳光PAスマートIC徳光PAスマートICゲート方向

また、アプローチ道路に難があるケースも多く、人道用もしくは農耕車用に作られたような小さいアンダーパスをくぐるような個所があり、勢い普通車限定になっていたり、街中へのアプローチが生活道路や農道などを経由している場合は交通量の急増が心配です。
こうして見ると常設へのハードルはまだまだ高そうですが、このあたりは地元も知恵を絞って対応していけば良い部分です。また、SAやPAのほか、加計のようにBS併設での実現例を見ると、高速道路を一定区間1車線分程度拡幅するだけでスマートICが建設出来そうです。
開発型ICの建設よりも安価にICを建設出来るスマートICの本格展開が実現することを期待しましょう。


【2006年11月12日 補筆】
2006年10月1日、スマートICのうち18箇所につき、高速道路の整備計画の変更及び連結の許可と言う形で、 本格導入されました
今回ご紹介したスマートICのうち、加計BSと大佐SA、また写真だけのご紹介になっている徳光PAがこの第一陣に選択されています。

加計BSはともかく、大佐SAについては利用台数と言う意味では今回の18箇所の中ではもっとも少なく、本論文でも継続に疑問を呈していましたが、結局継続されてきました。そして地元新見市のバックアップをはじめとする熱意を買ったと言う形での導入になったと 伝えられています

なお、金城PAについては社会実験対象のスマートICでも最下位を争う利用台数と言う話ですが、取り敢えず2007年3月末までの継続が決まっています。ただ、ここは地方の枝線高速の終点付近と言う条件を勘案しての評価が欲しいところで、大佐SAが「地元の取り組み」にものを言わせて本格導入したことを考えれば、浜田市がどの程度本腰を入れているかにここの将来はかかっています。



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