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大阪駅北陸方面ホーム変更の問題点
せっかくのアイディアを活かせぬ案内



エル・アルコン  2007年9月10日



※この作品は「交通総合フォーラム」とのシェアコンテンツです。


※写真は2007年9月撮影


2011年春の完成を目指して2003年にスタートした大阪駅開発プロジェクトの一環として、2007年4月8日から北陸方面の優等列車の発車ホームがこれまでの11番線から9番、10番線に変更されています。

新北ビルの用地を捻出するためにそれまでの7面13線を6面11線に縮小するのですが、これまで専用ホームが与えられていた北陸方面の優等列車発着ホームが新しい駅ビルと一体構造になるため、しばらくの間JR宝塚線系統の到着や、平日ラッシュ時のJR京都線、神戸線上りと共用の9番、10番線発着に改められました。
現在のところ、新11番線用の線路は囲いの向こうに見えますが、その向こうにあるはずのホームは影も形も無く、当面はこの状態が続きそうです。

宮原から到着して客扱い後発車する通り抜け運用とはいえ、JR宝塚線系統(丹波路快速、特急)の到着やラッシュ時のJR京都線などの発着と並行しての運用はやや窮屈で、大阪発の在来線の筆頭格でもある北陸方面の扱いとしてはいかがなものかとも思いますが、そういう運用になっています。

普段は北陸線の特急など利用する機会が無いもので、変更があったことは知っていましたが、実際の運用を目にする機会はありませんでした。
それがこの夏、ひょんなことから「サンダーバード」を利用することになり、この改められた北陸特急ホームの運用を体験したのです。

取り壊しが進む旧9、10、11番線ホーム


●あっと驚く縦列使用
旧盆帰省のピーク、朝の「サンダーバード」は指定も取れず、自由席に乗ることにしていたので、早めに大阪駅に来ました。
JR神戸線の電車を降りて中央通路から9番、10番線ホームに向かうべくエスカレーターに乗りました。そしてホームに上がり乗車位置はどこか、と探しました。北陸線特急の自由席は前寄り、御堂筋口の方かと思ったのですが、上がってきた客はみんな後ろのほうに向かいます。

見回すと、「北陸、東海方面の特急列車は後方85mに停車します」という小さな表記。おやおやと向き直り、後ろに向かうとしばらくして乗車位置が現れました。
ずいぶん大胆に乗車位置をずらすな、と思ったら、新快速の10号車乗車位置があり、一方で特急がここから9両停車するということは、18両分の長さがあるということです。
かつての東海道線列車下りの3、4番線(現5、6番線)は450mの長さがありましたが、このホームもその裏返し(列車上り線)で同様に長かったのでしょうか。隣の7番、8番線の12連ホームが果てる位置に6両の停車目標があるわけです。

そうして見ると、平日朝夕のJR京都線、神戸線の12連の新快速、快速を除けば、停車位置を完全に分けることが出来るわけで、線路容量の解決にはなりませんが良く出来たやり方です。

特急12連の停止目標の先に4連の丹波路快速


●致命的な欠陥
ところがこの画期的なはずの縦列使用、見ていると乗客の混乱を招いています。

乗り換え通路からこのホームに上がると、特急列車が9両編成以下の場合、そこに電車がいないのです。エスカレーターで中央通路からくると後方85m、御堂筋口方面からだと前方ですがさらに先です。
振り返って後方という一番分かりづらいパターンでありながら、案内表示は少なく、かつあるにはあっても動線と一致していません。
中央通路からのエスカレーターの場合、正面に見えるのはJR京都線の発車案内ですが、日中は京都行きの「スーパーはくと」、新大阪行きの「北近畿」とJR宝塚線の回送列車を表示し続けているわけで、こんなものよりも、「北陸線特急は後方」と大書きしないといけません。

中央通路から上がって目に入るのは回送電車の案内

さらに今回、旧盆帰省ということもあってか久々に利用するという人も多かったようで、自由席の列に並んでいると「前は11番線だったのに」という声を多く聞きました。4月の変更ですから初めての旧盆帰省です。その意味では今度の年末輸送も含めて、北陸特急の発車番線変更自体の周知徹底を図らないといけないところに、いつもと違うホームに上がると変則的な停車位置と来ては、非常に不案内といえます。

実は1本待って乗車したため、先発の発車時の様子を見たんですが、発車間際にホームに上がり、キョロキョロして慌てて先頭車に向かって走る人も少なくなかったわけです。

●アイディアは良い。それをどう活かすか
ではこれは失敗か、企画倒れかというと、必ずしもそうとはいえません。

限られたホーム数でやりくりをするわけです。朝ラッシュ時の新快速、日中の丹波路快速からの降車客と特急待ちの列が錯綜するよりは、今のほうがお互いに楽でしょう。
特急停車位置のホームの柱に緑色のテープを巻いて、構内掲示の停車位置の案内も特急停車位置を緑色に塗ってイメージを揃えています。そこまでやっていながら混乱を招くのは肝心な案内が下手なのです。

構内にある乗車位置の案内図

最も神戸寄りにある桜橋口通路からの階段ですら9両編成の特急の先頭車が見えない、という極端な偏りを実施するために何が必要か。とにかく特急利用客の目線をはるか後方に(もしくははるか前方に)向ける努力が必要です。
地方駅に見られる欠き取りホームの場合、そのホームに発着するのが専らローカル線でありながらくどいほど案内しているのが常ですが、このケースは幹線の特急です。充分な案内の必要性はその比ではありません。

中央通路から上がって振り返るとはるか先に...

さらに一歩進んで、現行9番、10番線の神戸寄りを11番、12番線としてしまうのも手でしょう。
表示もシンボルカラーをグリーンにして別ホーム扱いにするのです。11番、12番は後方(前方)としたほうが、同じ番線ながら「特急は後方(前方)」というよりも分かりやすいです。

前方の柱を緑色に塗っているあたりが停車位置


●残る問題点
この他、気になった点があります。

「サンダーバード」は和倉温泉行きの分割や、金沢での切り離しなど編成の全部が同じ行先になるとは限りません。また、編成も特に臨時列車や多客期など、6連、9連、12連とまちまちです。
特に自由席が分割される編成にまたがったりするので、案内が無いのは致命的です。

しかしホーム上の案内では、何号車が何行きなのか、何両編成なのかという情報が無いのです。
私が見たケースでは先行の臨時が6連だったため、7号車(自由席)に並んでいた人が慌てて移動したり、次の列車が7-9号車が金沢切り離しのため、7号車から5、6号車に走る人もいました。

こうした「騒ぎ」がおこるのも、LEDの発車案内で当該列車が先発になったときに初めて最下段に編成情報がスクロールされるというタイミングにあるわけで、乗車位置上部に掲げてある乗車目標に「X号は金沢行き」というような情報を添えれば済む話ですし、またホームの編成案内も詳細にすればいい話です。実際、北陸方面では大阪行きの案内は詳細であり、日ごとの増結にも対応した情報が出ています。だいたい、「サンダーバード」の編成案内が多客期の12連をベースにしていること自体がおかしいです。

停車位置の案内とホームの売店

あとはホームの設備。大阪駅はJR東日本ほどではないにしろ「エキナカ」がありますが、メインの通路から離れた位置に止まるわけで、コンコースからホームが遠いのです。
そうなるとホームに出たらそこで待つしかないのですが、デイリーインと弁当屋、最小限の待合室があるだけで、どうも殺風景でもあり、もう少し工夫がほしいです。
特に最後尾になるグリーン車はコンコースから最も遠く、売店も遠い「場末」であり、これは優等車両の乗客に対するサービスとしても疑問です。

もう少し神戸寄りに売店を移すとか、コーヒースタンドのような施設を設けるとか、「うるおい」を感じる施設と施策がほしいです。




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