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国幹会議の不思議な決定
国家の大計を歪めたパフォーマンス


写真は2005年7月、2006年1月撮影


道路公団等4公団の民営化後はじめての開催となる国土開発幹線自動車道建設会議(国幹会議)が2006年2月7日に開かれました。
焦点の整備計画路線、いわゆる「9342km」についての事業主体が未定だった区間についての整備方法が決まり、整備計画の全路線が建設されることが確認された格好です。

今回対象となった1276kmのうち、国と地方の税金で建設して無料の高速道路になるいわゆる「新直轄」は7区間123km。残りの42区間1153kmは民営化会社が建設する有料道路です。
今回は民営化後初の開催、決定とあって、道路建設に抑制がかかるのかと言うことにも注目が集まりましたが、結局は全路線の建設が決まったわけです。もちろん必要な路線を作らない理由は無いのですが、既決定区間も含めて適切に議論されたとは言えないと思います。
新直轄の内容を見ても、道央道の七飯−大沼のように北海道有数の都市間流動を担う区間があったり、東九州道の佐伯−蒲江のように、大分−延岡間では整備したR10やR326ルートとはまた違うルートを整備する意味があるのか謎な区間もあるわけです。会議を伝える当夜のニュースで、新直轄になった中部横断道を取り上げ、採算は悪いがR52の災害を考えると必要というトーンでしたが、R52の必要箇所、危険個所の改修、バイパス化という選択肢もあるわけで、内容は玉石混交と言わざるを得ません。

大山崎JCT

さてこのなかで不思議な「決着」を見た区間があります。
民営化論議のなかでも巨額の建設費をかけて作る必要があるのか、と言うシンボル的存在になった第二東名と第二名神ですが、第二東名の未完成区間(海老名−豊田東)は中日本高速が建設することで決定しました。
一方で前回2003年の国幹会議で抜本的見直しを求められた第二名神の大津(草津)−城陽、八幡−高槻については、西日本高速が建設するとしながらも当面は着工を見送るという結果になりました。これにより第二名神は大津から西、京阪神地区を抜けた神戸JCTまでの区間が見送られた格好です。(実は城陽−八幡は調査区間にしかなっていないと言う怪もある)


この決定、普通に考えると、建設を推進したい国と、採算性を考えて建設に慎重な西日本高速の間で相克があったと考えたくなりますが、実は全く逆で、西日本高速は1兆円と見られる建設費を3割程度圧縮する案で建設を訴え、国が見送った格好なのです。
国交省自体は建設を推進していましたが、民営化推進委員を務めた猪瀬直樹氏らが強く反対。民営化の「成果」を見せたい政府の思惑もあってか、「無駄な高速道路建設に歯止め」のポーズの犠牲になった格好です。

京滋バイパス(久御山)

確かに問題の区間は、名神の第二ルートとしても機能している瀬田東−大山崎の京滋バイパスが並行しており、新たに建設するのは無駄と思いたくなるのは事実です。
しかし、京滋バイパス自体がパンクしていた既存の名神のバイパスとして機能しており、これに第二名神の役割を担わせた時、結局パンクしてしまう危険性があるのです。
第二名神は現在の伊勢湾岸道から亀山、甲賀を経て草津で名神に接続するところまで建設が決まっていますが(草津JCT−草津田上は名神として先行開通)、伊勢湾岸道〜東名阪を選択する広域流動が名阪国道をそのまま使っていたのが、この開通により名神の草津に向かう可能性が高いです。

そうなるとまず京都、そして大阪、さらに中国、山陽道方面と言う流動がメインですから、名神や京滋バイパスの負荷は確実に増えます。京滋バイパスはもともとR1のバイパスとして瀬田と宇治の間に建設された経緯から、後に開通した西側の区間に比べると規格がかなり落ちる印象です。特に宇治の長いトンネルやそれに続く瀬田へのカーブ、勾配区間は、古い規格で建設された名神ともども厳しく、ここに大型が大挙して押し寄せたらかなりひどいことになりそうです。

名神高速(天王山トンネル)

さらに第二京阪の門真までの開通後は、大阪起終点の流動が路線の構造上京滋バイパス経由に集中する(名神経由にするには久御山−大山崎−京都南経由という迂回になる)わけで、ますます状況が悪いです。パンクしてから第二名神に取りかかっても遅いです。

第二京阪(久御山JCT)

西日本高速の計画も、構造をかなり簡素化するように聞いており、140km対応の往復6車線という第二東名、第二名神は全区間がその規格であってこそその能力をフルに発揮するのですが、流動が多い大都市側で規格を落とした場合、全線の輸送能力を落としかねません。
その意味では当座の3000億円強を削っても、開通後の経済効果の喪失の累計がそれを上回っては元も子もないわけで、慎重な対応が求められます。

今回の国幹会議はその時期的な話からパフォーマンス的色彩が出てくることはやむを得ないとは言え、そのパフォーマンスで建設が左右されたということは非常に残念です。
国のインフラ、それも我が国の東西を結ぶ大動脈になる高速道路の整備を、実態を理解しない思い込みで止めてしまったことは、まさに国家百年の計を誤らせる大罪と言えます。



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