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貨車の基礎知識倉庫−その1

<1>貨車とは

鉄道車輌は、機関車を除くと、乗客を輸送する「客車」と、貨物を輸送する「貨車」に大きく2分出来ます。 貨車は文字通り貨物を輸送する車輌の他、構造・取扱いが貨車に準じた車輌も貨車に含まれます。

<2>貨車の種類と記号

貨車の構造、用途から、以下のように大きく分類(左欄)されて 「車名」が設けられ、識別のために、それぞれの車種(右欄)にカタカナ記号が定められています。 (S3制定、S28・S40改訂、現行)
 ×印は現存しない車種です(△は保存または私鉄に現存)
有蓋貨車
【ゆうがいかしゃ】
・・・屋根付き車体の貨車
有蓋車【ゆうがいしゃ】記号ワ 
・・・肥料、米、雑貨、引越し荷物など一般用
通風車【つうふうしゃ】×  記号ツ 
・・・車体がすかし張り、ギャラリー状で野菜を運ぶのに適
家畜車【かちくしゃ】×  記号カ 
・・・生きた牛、山羊などを輸送するすかし張り構造の貨車
豚積車【ぶたつみしゃ】×  記号ウ 
・・・生きた豚を上下2段で輸送する貨車
家禽車【かきんしゃ】×  記号パ 
・・・生きた家禽を輸送するすかし張りの棚付き貨車
陶器車【とうきしゃ】×  記号ポ 
・・・有蓋車と同一外観で、内部に陶器を積む棚を設けた貨車
冷蔵車【れいぞうしゃ】△  記号レ 
・・・熱絶縁車体を持ち、冷して鮮魚などを輸送する銀/白色の貨車
活魚車【かつぎょしゃ】×  記号ナ 
・・・生きた魚を輸送するため水槽と循環装置を装備した特殊貨車
車運車【しゃうんしゃ】×  記号ク(〜S40)
・・S3天皇の馬車を輸送するために製造された貨車
鉄側有蓋車【てつがわ(てつそく)ゆうがいしゃ】× 記号ス 
・・・車体側面のみを鉄板張りとし、内張のない貨車
鉄製有蓋車【てつせいゆうがいしゃ】△ 記号テ 
・・・屋根まで全部鉄板張りとした貨車で水を嫌う生石灰用
無蓋貨車
【むがいかしゃ】
・・・雨に濡れてもよい貨物
を運ぶ屋根のない貨車
無蓋車【むがいしゃ】  記号ト 
・・・石炭・鉱石、材木、工業部品など一般用
長物車【ながものしゃ】  記号チ 
・・・電柱、レール、原木など長尺物の輸送用
大物車【おおものしゃ】  記号シ 
・・・変圧器、発電所水車、艦砲など、大体積・大重量輸送用
土運車【どうんしゃ】× 記号リ 
・・・砂利・土砂専門。営業用というより建設用、事業用。
コンテナ車【こんてなしゃ】  記号コ (S40〜) 
・・・コンテナ専用貨車
車運車【しゃうんしゃ】  記号ク (S40〜) 
・・・自動車メーカー製品輸送用やピギーバック用
ホッパ貨車
【ホッパかしゃ】(S28〜)
・・・下部に吐出扉を持つホッパ構造の貨車
ホッパ車【ほっぱしゃ】   記号ホ
・・・鉱石、セメント、穀類など粉体輸送用
石炭車【せきたんしゃ】△   記号セ
 (〜S28は無蓋貨車に分類)
・・・石炭輸送用
タンク貨車
【たんくかしゃ】
・・・タンクを有する貨車
タンク車【たんくしゃ】  記号タ
・・・タンクを持ち石油類、化学薬品、セメントといった液状・粉体輸送用
水運車【すいうんしゃ】×  記号ミ
・・・水質の悪い場所に水を輸送。営業用ではなく事業用。
事業用貨車
【じぎょうようかしゃ】(S28〜)
(S3〜28は「準貨車【じゅんかしゃ】」)
・・・営業用に使用しない貨車
車掌車【しゃしょうしゃ】    記号ヨ
・・・列車の最後尾に連結し、車掌が乗務する窓付き貨車
控 車【ひかえしゃ】△    記号ヒ
・・・連絡船の貨車入換え時のスペーサー用や構内入換え用
操重車【そうじゅうしゃ】△   記号ソ
・・・事故救援用や橋梁架設用のクレーン貨車
検重車【けんじゅうしゃ】    記号コ→S40:ケ
・・・貨車の計量台(秤)検定用の分銅を輸送
試験車・職用車【しけんしゃ・しょくようしゃ】 記号ヤ (S28〜)
・・・試験用や電化工事用、除草剤散布など雑多用途
工作車【こうさくしゃ】×   記号サ (S28〜)
・・・駅などの機械修理用工作器材を輸送する貨車
救援車【きゅうえんしゃ】×   記号エ (S28〜)
・・・事故の救援機材を輸送する貨車
雪掻車【ゆきかきしゃ】△   記号キ 
・・・ラッセル車、ロータリー車など除雪用の貨車
歯車車【はぐるましゃ】×   記号ピ 
・・・昔、碓氷峠のラック式区間での制動力強化用の歯車付き貨車



<3>貨車の重量記号
貨車は積載荷重に応じて、重量記号が定められています。
13t以下14〜16t17〜19t20〜24t25t以上
無記号

「緩急車」には各車種記号+重量記号の末尾に「フ」を付ける。
「ム」は大正初期、初の15t積み貨車が馬匹(ムマ)輸送用であり、 これの識別のため採用された記号で、 いつしか15t積みを表現する通称に転用、S3に荷重記号を定めた際に、 ムから始まって語呂のよい「ム、ラ、サ、キ(紫)」が定められました。
したがって、
   ワム・・有蓋車で14〜16t積みのもの(実際は15t積みが主)
   タキ・・タンク車で25〜t積みのもの
   コキ・・コンテナ車で25〜t積みのもの
と言う意味になります。昔、旅先で女の子に「『ワラ』って書いてあるから藁を積んでる貨車か、 って思ってた」と言われたことがあましたが、もう皆さんおわかりですネ。
<4>貨車の形式と番号
(1)貨車の形式
上で述べた貨車のカタカナ記号は国鉄の「車両称号基準規程」で定められたものです。
この規程によれば、貨車の形式はこれらの記号と、数字で表します。 「その数字は同じ構造の車輌中の最初の番号を用いる」ことになっています。
形式の数字は、その車種の最初は1、次いで”まあだいたい基本は”1000番代刻みで決められ、その同じ形式の一群が同じ番号帯に収るよう、両数に幅を持たせて決められたようです。両数が少ないことが明らかな場合には、100番刻みで数字の消耗を抑えています。
  形式の例:ワム1、ワム1900、ワム2000、ワム3500、ワム20000、ワム21000・・・
(2)貨車の番号
貨車の番号は、「記号および同じ形式の車輌ごとに、順序を追って付ける」と 決められています。
  番号の例:ワム1形の354号車 ワム354
    ワム23000形の10号車 ワム23009

(3)貨車の形式あれこれ
上記にかかわらず、当初に予想しなかったような増備や改造編入があると 予定した同じ番号帯には収らず、「飛び番」で逃げることがあり、精通した人以外は、 番号を見ただけでは貨車の形式が即答できない事態になっています。この傾向は形式の多い 私有貨車において顕著で、番号からの形式の判定が最も難しい車種でしょう。

例1:ワム139903  形式ワム90000形
 元々ワム23000形としてワム40000以降まで増備されていたものが
 2段リンク改造でワム90000形に編入されることになった。が、原番号の
 ままでは「・・構造の車輌中の最初の番号」より小さくなってしまうため
 と恐らく改番の手間を無くすため、原番号の10万代位に1を追加しました。

例2:ワム581005  形式ワム80000形
 ワム80000形の内、大板ガラス輸送専用の構造を持ったものを581000台とした。
 ワム80000形は10000両を超えるため、1000台の番台区分は無理だったようです。

例3:タム10508  形式タム500
 15t積ガソリン専用車として登場したタム500は増備が進み599の手前まで
 来たが既にタム600形が存在したため、+1000の1500へ飛ぼうとしたらタム400形が
 これも増備が進んでタム1500番台は使われていたためタム2500へ飛んで以降
 2600、2700代・・・を埋めて2999まで使った後は4桁で飛ぶ場所が無くなり、タム10500番台まで飛ぶ。

例4:私有タンク車の形式と番号入乱れの例・・・斜体が増備で浸食された番台
 タキ12200代 40t積セメント専用富士重製エアスライドタンク車の元々の番台
 タキ12300代 電気化学工業の塩化ビニル専用車の番台(でも1両)
 タキ12400代 電気化学工業の塩化ビニル専用車の番台(でも1両)
 タキ12500代 31t積み塩酸専用車
 タキ12600代 タキ2600苛性曹達タンク車が100両を超えここを浸食
   ※200両、300両はそれぞれタキ22600代、32600代・・と万代飛び番で逃げ
 タキ12700代 タキ12200が100両を超えたため、「やむなく?」ここを使用
 タキ12800代 タキ2800苛性曹達タンク車が2900番台まで潰した後ここを浸食
 タキ12900代 続いてタキ2800がここまで浸食
 タキ13000〜13400代 タキ3000ガソリン車の大増備が使う
 タキ13500代 タキ3500アルコールタンク車が100両を超え浸食
 タキ13600代 PPG専用タンク車の元々の番台(でも1両)

JR以後の新形式はこのわかりにくさを解消するため、新性能電車と同様に「カナ記号・形式数字−(ハイフン)番号」 で表すようになりました。(在来の形式については今まで通りです)
 例:コキ104−1756、タキ1000−625、チキ5500-1、トキ25000-12

<5>国鉄(JR)貨車と私有貨車
所有関係から、以下に分類されます。
国鉄(JR)貨車
国鉄(JR貨物)が所有し、使用する貨車。一般の有蓋車、無蓋車、コンテナ車など汎用的に用いられる貨車や、 事業用貨車がこれに当る。
運送業である国鉄(JR貨物)は、輸送需要に供するため、有蓋車・無蓋車など汎用性のある車種は、国鉄が 製造し、国鉄の資産として国鉄の車籍に編入している。
以前は車種が多く、面白かったが、現在は画一化され趣味的な醍醐味は減ってきたが、まだまだ 他の車種に比べると、未解明の事項も多い。

私有貨車 ←クリックすると「倉庫3」にジャンプします
国鉄は運送業と言えども、特定の荷主の特殊な積荷に対する貨車まで一々製造・所有することは 経済的ではない。そこで考えられたのが私有貨車の制度で、特定の貨物輸送に供するため、製造会社、商社など国鉄以外の者が自費で製造し、車籍を国鉄(JR)に編入した貨車のことをいう。
タンク車が種類・両数ともに圧倒的に多く、ホッパ車がそれに次ぐ。 他に現在では、大物車、長物車が現存する。専用種別が決められているのが特徴であるが、承認の上「臨時専用種別」として運ぶこともできる。 車両の保守は国鉄工場(JRの車両所)で、所有者と国鉄の保守分担は、契約により定めている。(甲号、乙号の2種、細かくは現在、甲号2種、乙号5種の計7種類) 同じ形式でも、車両メーカーの設計思想、所有者、積荷の濃度の差異、荷役設備の相違、製造年次等で基本構造、 細部構造が極めて多岐に渡り、趣味的には最も面白い分野である。
★2004.7.5訂正:8種→7種

私鉄貨車
私鉄が所有し、使用する貨車。国鉄へ連絡する車は「連絡直通貨車」として登録し、 番号の下に2条の下線を引いて識別する。車籍は私鉄である。
私鉄での貨物輸送華やかりし頃は有蓋車、無蓋車など汎用的に用いられる貨車も多かった。 また、旧国鉄の古い貨車が払下げられて、珍しい形式を見ることもできた。
現在は、釧路臨港鉄道(石炭車)、岩手開発鉄道(ホッパ車)、秩父鉄道(鉱石車)を除くと「事業用」としてわずかに残るだけ。 趣味的には、研究が進んでおらず、大手私鉄の貨車といえども未知の領域。
平成12年に登場したコキ2000形は、鹿島臨海鉄道の私鉄貨車であるが、現在としては稀な例である。
私鉄の私有貨車
上記の私有貨車で、国鉄ではなく私鉄に車籍編入した貨車。例えば日本セメント所有東武鉄道車籍のタキ101といった例がある。





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