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貨車の知識倉庫−その3


<6>私有貨車とは
★以下の内容は、昭和40年「私有貨車取扱い基準規程」によります。 現在国鉄は民営化され日本貨物鉄道となっており、当然変更されています。従って参考としてご覧下さい。
(1)私有貨車の定義
日本国有鉄道(国鉄)以外の者の所有する貨車で国鉄の車籍に編入したものを言います。
(2)車籍編入とは
国鉄以外の者の所有する貨車の保守管理上、国鉄の所有する貨車に準ずる取扱いを行うため、国鉄の車籍に編入することを言います。
ただし、車両財産の移動は伴いません。
★何故、車籍を編入しなければならないか、というと、国鉄線線路上を走行できる車両は、国鉄が直接保守管理している国鉄車両か、運輸省の監督下にある私鉄の車両で、国鉄が直通承認したもののみで、その他は法令で認められていません。
そこで、商社や化学薬品会社、車両会社などが車両を所有して、国鉄線上を走らせたい、と思ったら、国鉄車と同様の保守管理が行われることが絶対条件になるのです。そのため、国鉄貨車の車籍に編入させるわけです。
(3)車籍編入の手続
では、車籍編入しよう、とすると「車籍編入契約」を締結することになります。
契約の際には「私有貨車車籍編入申請書」に「契約書」「車両製作仕様書」「図面」を添付して 国鉄に提出します。
その契約には、甲号・乙号・丙号の3種類があります。
「甲号契約」
大物車、車運車に適用されます。
「甲号の1」は国鉄所有の大物車・車運車と同様の材質・構造を持つもので国鉄工場で検査・修繕を担当できる形式に適用。
「甲号の2」は国鉄所有車と比べ、荷受梁が特殊であったり、小径車輪等部品が特殊で、国鉄が保守することが困難な大物車に適用され、国鉄以外の工場(車両メーカーなど)で全般検査等の検査を、所有者負担で行います。
「乙号契約」
タンク車およびホッパ車に適用されます。
「乙号の1」は国鉄所有のタンク車・ホッパ車と同様の規格・構造を持つもので国鉄工場で検査・修繕を担当できる形式に適用します。ただし特殊装置や特殊材質部品の修繕や、タンク内塗装は所有者負担です。
「乙号の2」は、タンク・ホッパがアルミ、ステンレス等の特殊な材料が使用されていたり特殊装置が付属していて、国鉄工場では保守困難なものに適用され、台枠以下は国鉄が、それ以外の検査・修繕は所有者負担になるものです。
「乙号の3」は、ゴムライニングが施行されたタンク車で、保守区分は乙号の2と同じです。ゴムライニングは国鉄が検査し、所有者がゴムライニング会社に委託修繕するのです。そのため検査はゴムライニング会社が近くにある、 苗穂、新小岩、松任、鷹取、若松が指定で行われました。
「乙号の4」は、高圧ガスを積載する高圧ガスタンク車に適用され、タンク体は高圧ガス容器として高圧ガス取締法(→現行高圧ガス保安法)の規制を受けます。タンクは所有者で、台枠以下は国鉄が保守します。
「乙号の5」は、タンクが第2種圧力容器に当るタンク車に適用され、ボイラ及び圧力容器安全規則による 耐圧検査・定期検査・清掃、タンク及び付属品の検査・修繕、国鉄工場入場時のタンク内清掃は所有者で、それ以外は 国鉄が保守します。
★040815:「乙号の5」を追加しました。
「丙号契約」
大物車・車運車・タンク車・ホッパ車以外の車種の契約で、保守は全て国鉄で行います。
袋詰めセメント専用車のテキ200形がこれに該当します。
(4)車籍編入の条件
「私有貨車取扱基準規程」第7条に、以下の内容が定められています。
1)申請者の保有資格が適正であること。
2)車両構造・機能が法令の定める関係規則、国鉄の定める規程・規格に適合していること。
3)専用貨物の輸送の可否
4)車両運用に適合した専用線を有している。
5)新形車両は、運転試験、落成成績の良否を確認すること。
適正な保有資格とは、「商社または製造会社が、自社の原料や製品の輸送、販売のための輸送を目的とし、その特殊な性状(汎用貨車でなく専用貨車の用意が得策な)の貨物の輸送が、国鉄に営業上の効果をもたらすこと」とされております。
(5)車籍編入が決定したら・・
1)運転局長が「私有貨車原票」に記入します。
これは周囲に孔の明いたカードのようなもので、以下の内容が記載されます。
<表>
所有者、専用種別、軸配置、形式、記号番号、製造年、製造所、タンク種別、契約種別、特殊装置(タンク材質、ライニング、遮熱または保温オオイ、加熱管装置、荷役装置)、常備局・駅
<裏>
諸元として、車両寸法(最大長さ、幅、高さ、ボギー中心間距離または固定軸距、限界)、荷重、自重、換算(積・空)、タンク、またはホッパ(長さ、内径、実容積)、台車、ばねつり装置、自動連結器・緩衝器、ブレーキ、改造その他
★JR化後は「私有貨車原票」制度は廃止され、別のものに変っております。

2)「私有貨車車籍編入通達書」をもって、常備駅所管の支社長、鉄道管理局長に通達します。

(6)車籍を除外する・・
1)私有貨車が車籍除外される場合は、以下の理由に基づきます。
イ)老朽の場合
ロ)事故等により大破し修理不能となったもの
ハ)使用上の都合によるもの

2)老朽・事故の場合
 車籍編入の契約書には「国鉄は車籍を除外することが適当と認めた 場合はいつでもその車籍を除外し、所有者にその旨通告する」旨の 条文記載があります。しかし一方的に除外するようなことはなく、鉄道管理局長や 国鉄の各工場長の報告により、運転局長が所有者と協議して、所有者が 「車籍除外申請書」を提出して所有者の意志によって車籍除外するのが 実際です。
用途廃止の基準は、国鉄車の廃止基準規程(昭和40年制定)に準じ、
イ)老朽の場合、重要部品の変形・摩耗・腐朽がある一定の基準に達している場合
ロ)事故の場合、復旧費用が新製費用に対して、標準使用年数(30年)と 使用経年年数で決まるある比率(使用経年年数により減少)以上になった場合
ハ)3年以内に使用されることがない休止車両で、陳腐化の著しい場合
となっています。
 私有貨車の歴史の中で、タ1形式の淘汰、ヨンサントウに際しての老朽車淘汰、塩酸タンク車の 状態不良車廃車など政策的に行われてきたこともあります。

3)使用上の都合による廃車
 積荷の需要の変動により輸送が不要になった場合、タンク車そのものが用途を 失います。
 また、国鉄線内を経由して輸送していた貨車を、自社専用線内のみの用途に 転用した場合は、車籍除外することがあります。
 高圧ガスタンク車の場合は、容器保安規則の適用を受け、経過年数が経つと 再検査間隔が短くなるために容器再検査費用がかさみ、これが理由で廃車される ことが多いです。
 需要の変動で用途を失っても、私有貨車の発展・繁栄期は、積極的に他の専用種別に転用され、改造( タンクの載せ替え、車長の短縮、形式の変更なども伴う)されることも多かったのですが、近年は転用相手もなく、必ず廃車になっています。
(JR貨物では、車籍編入後30年を越えたものは、全般検査費用(実費)を所有者が負担する「覚書」を所有者の間に取り交わしています。この全検費用負担が、所有者が車籍を除外する要因になっている、という意見もあります)

4)車籍除外手続き
所有者が「車籍除外申請書」を運転局長に提出します。運転局長は車籍除外を 決定したら、「私有貨車原票」から削除し、 関係方面(鉄道管理局と所有者)に通知し、鉄道公報に車籍除外を記載します。 所有者は、国鉄からの通知を基に、指定の期日までに国鉄線外に搬出しなければ ならず、解体などの処理を行うことになります。

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