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貨車の知識倉庫−その2


<4>貨車の構造・・車種別
(1)有蓋貨車の構造
いわば屋根のある箱になっており、大正時代までは通常木製、 昭和になって鋼製となり、戦時中木製に戻ったあと、戦後は再び鋼製に戻っています。 屋根は木製で張られた上にキャンバス張りですが、鉄製有蓋車「テ〜テキ」は屋根まで 全て鋼板製です。
側面には通常横引き戸が付いていますが、冷蔵車「レ〜レキ」は開き戸を持つものが多く、 車運車「クム」では、妻の片面に観音開きの扉を設けています。家畜車「カ・カム」では 上半が空き下半が透かし張り、通風車「ツ・ツム」では通風のため透かし張りまたは ギャラリー構造になっています。家禽車「パ」はまるで”走る鳥かご”のようです。 魚運車「ナ」は車内に水槽など特殊装置を備えています。
(2)無蓋車の構造
無蓋車は屋根のない箱になっていて、側が下へ開く「あおり戸」を有するのが普通です。 (大正期には、中央が鋼製で観音開きの扉を持つタイプが流行りました。)
有蓋貨車と異なり、昭和期、戦後になっても鋼製だけでなく、木製が製造 されています。木製の方が開閉が軽いこと、荷造するときに釘を打てるなど、鋼製 にはない利点があります。床板も木製→鋼製→鋼製木製混成など変遷しております。 また、「物適貨車」として、圧延鋼板コイルや鋼板、ビレット、レール、板ガラス 用などに改造されたものもあります。
(3)長物車の構造
 
長物車は車体はなく、台枠の上が木板または鋼板張りの床になっています。 10t積み「チ」は明治期の車輌を中心に旋回式荷受台を持つものが多く、「チム」以上の 床には「荷摺木(床桟木)」がある間隔で敷かれています。 また、一部のチ、チム以上は例外なく、台枠側梁には、荷物を支える「柵柱」を備えています。
近年のレール輸送チキ5200、5500は柵柱などはなく、レールを受ける緊締装置や 取り卸し装置など特殊装置を備えています。
(4)大物車の構造大物車は荷受方式により、「低床式」「吊り掛け式」「落とし込み式」「分轄低床式」に大別されます。 特別な構造をもつものが多く、「荷受はり」の交換で複数の方式に対応する車輌もあります。 荷重が数10トン以上のものは、複式ボギーとなり、ムカデのような走り装置を持つものも あります。
【030824誤記訂正:分轄式→吊り掛け式】
(5)タンク貨車の構造
タンク車の基本は、台枠の上にタンクが載っています。タンクは普通鋼(SS400)が一般的ですが 耐候性高張力鋼やクラッド鋼、ステンレス鋼、アルミ製タンクをもつものも多数あります。 タンクは当初直円筒であったのが、積載効率拡大のため昭和30年代に開発された 中央が膨らんだ「異径胴タンク」や、残液防止のためV字形に 折ったタンクを持つものなど、形態も多彩。 タンク頂部には例外なく歩み板と昇降のためのハシゴが 設けられています。 タンク内面には腐食防止のため、「ザップコート」「鉛ライニング」 「ゴムライニング」「亜鉛メタリコン」等の処理が施されているものがあり、更に 加熱装置や断熱装置(「キセ」と呼ばれる覆いと、グラスウール・ ウレタン等の断熱材)、吸湿装置、など様々な特殊装置を有しています。荷役装置としては 吐出管や、化成品タンク車にあっては液出管、窒素封入管などがあります
またセメントなどの粉体系タンク車にあっては荷役装置として「エアスライド」の他、 「圧送式」「スクリュウコンベア式」もあり、形態変化に富んでいます。
(6)ホッパ貨車の構造鋼製の箱形車体(屋根付き、屋根なし両方あり)の下部が、開くようになっており、 積荷が落下し易いよう、断面が漏斗形やW形にすぼまっています。
単純に下扉を開いて積荷を落下させるものの他、セメント用では帆布の 下面からエアーを吹出して流動化させる「エアスライド」が主流です。

(7)事業用貨車
救援車・工作車・職用車の一部(除草剤散布車や試験車)など、 構造が営業用貨車と共通のものは、上記のいずれかに属します。
車掌車は、窓を持つ有蓋の車体の前後に出入り台を設け、車掌弁、 椅子、机、電灯(戦後)など車掌の職務に必要な客室設備を 備えています。便所はヨ8000形で初めて設置されました。
 操重車は「クレーン車」で、強固な台枠を持ち、 荷を吊るためのブーム(竿)、 ブーム・クレーンフックの昇降を行うウインチを備えた動力装置、 転倒防止のアウトリガなどクレーンとしての 要件を満たす装備を持っています。古くは蒸気駆動、戦後はディーゼル機械式、 油圧式に変っています。
 雪掻車は「ラッセル車」では前頭が鋤(すき)形状 になっていて雪を掻くのに適した形状、 「ロータリー車」は雪をはね飛ばす羽根車と動力機構など、雪かき方法によって構造が まったく異なる独自の構造をもっています。

<5>貨車の構造・・・部分別
1:走り装置
「走り装置」とは耳慣れない言葉ですが、「車輪・車軸」「軸箱」「軸ばね」「軸箱守」全体 を総称し、こう呼んでいます。「ボギー台車」も含まれます。
車軸が2組の「2軸車」、3組の「3軸車」、車軸が台車枠に取付けられ揺動できる「ボギー車」があります。
1−a:2軸貨車・3軸貨車の走り装置
台枠に固定された板状の「軸箱守」に「軸箱」が固定され、板バネで車体を支えています。バネの台枠への取付け方法で「シュウ式」、「リンク式」に大別されます。現在営業用で使用されている2軸貨車はすべて「2段リンク式」です。3軸貨車は一般に「リンク式」でしたが、「ヨンサントウ」ではワサ1形(2段リンク)を除き、 3軸貨車自体が不適格車として、殆どがこれを機会に廃車され、営業用としては現存しません。
「シュウ式」
バネの端が台枠に固定されたコの字形の「ばね靴(シュウ)」にはめ込まれた ものです。構造が最も簡単であり、バネとシュウの間の摩擦抵抗が多く、 動揺に対する減衰性能はよいが、衝撃を緩和できません。 古い小形貨車に見られましたが、昭和43年10月「ヨンサントウ」 の時刻改正に伴うスピードアップに不適格とされ、営業用としては 淘汰されました。私鉄においても保線用・救援用などでわずかに残る程度です。
「リンク式」
バネの端をリンクで吊って自由度をもたせたもので、いつ頃から採用されたかは 未調査ですが、大正期以降は軸距離の長い貨車に、もっぱら用いられました。
「ヨンサントウ」で未改造に終った車は北海道や一部四国に残りましたが、 やがて姿を消しました。
「2段リンク式」
2軸貨車は、速度が50〜60km/hになると蛇行動が増して 脱線の原因になります。そこで走行性能改善のため戦後、「2段リンク式 ばね吊り装置」が種々試験の結果採用されました。軸箱と軸箱守靴間の 左右方向に遊間を設け、左右方向に復元力を持つようにし、 75km/h走行を可能にしました。
ワム90000を始め、昭和30年代に新製された貨車の多くが採用し、リンク式 の貨車も、上記「ヨンサントウ」までに大部分が改造され、貨物列車の スピードアップが実現しました。

1−b:ボギー車の走り装置
大物車を除くと、2軸または3軸の車軸を有する台車を用いた「ボギー車」です。 戦前は平鋼を「立」字形に組立て、中央の枕バネを板バネとした「TR20」 形台車が主流で、戦後はアメリカ流儀の鋳鋼製台枠を用いた「TR41」の 時代になり、その後も軸重の増大や速度の向上に合わせて、 様々な台車が開発されていきました。
台車の各形式については 福田孝行さんのサイト に詳しく出ていますのでそちらを参照して下さい。

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