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聴解練習 スクリプト
聞き手:シドニーオリンピックが終わり、課題文でもわかるように、メダルに対する、いわゆる「報奨金」についての議論がありますが....まあ、選手個人にしてみれば、常識的に考えてですね、くれるというものを、拒否する理由はあまり見当たらないと思いますが...実際のところはどうなんでしょうか...また、メダルを手土産にして、プロの選手やスポーツ関係の会社の専属になって、高額の金を手にいれる、など、さまざまな事件が起こっているようですが...今日は、これらの問題について、何人かの方に聞いてみたいと思います...
まず、最初の方は...中年の男の方ですが....いかかがでしょうか、この「報奨金」についてなんですが...
男:そうですね、私は「メダルの獲得」イコール「国威の発揚」という印象が強くて、どうもオリンピックが政治に利用されているような気がしますね。
聞き手:そうですね、いまご指摘の点は、以前からずっと言われていますね。
男:かつて、ベルリンオリンピックがナチスの宣伝のために使われたという事も記憶に新しいですからね...やはり、常に政治のにおいが感じられますね。
聞き手:どうしてなんでしょうかね...
男:やはり、オリンピックの規模が大きくなったのが、大きな原因じゃないですか。かつては、国ではなくて、都市が主催するという形になっていたし、規模も小さかったので、十分できましたが、今のように参加国が100とか200になると、もはや、一つの町ではやりきれないというのが実情じゃないでしょうか。
聞き手:そうですね、第一回のアテネ大会が1896年で、参加した国は全部で13ですからね、まあ、可愛らしい大会だったようですね。
男:そうなんです。この前図書館でちょっと統計を調べたんですがね、1960年のローマ大会が84か国で、この大会から急に増えていますね。その後、東京が94、メキシコが113、ミュンヘンが122でしょう...そして、ソウルが160、バルセロナが172、そして今回のシドニーは200ですよ。
聞き手:そうなると、確かに予算の上でも、組織の上でも、国家の力を使わなければ、運営が難しいでしょうね。
男:ええ、そう思います。その上、主催者として開催するからには、どうしても、メダルをたくさんとって、主催者としての面子を守ろうとするのは当然でしょう。
聞き手:いきおい、選手の強化に力を入れる、ということになるんですね。
男:まったくそのとおりです。現在、どの国だって、程度の差はありますが、特別の強化予算をつけているでしょう。オリンピックで通用する選手を育てようとするならば、当然の措置だと、一応理解はできますが、しかし、そこまでして、メダルを取る必要がはたしてあるんでしょうか。
聞き手:やはり、メダルをとれば、国民は喜ぶんじゃないですか。
男:でも、あんなものはいっときの夢みたいなもので、終わってみれば、みんなすぐ忘れてしまうんじゃないですか。最近のメダルを金で買うような風潮は、まともな神経とはとても思えませんね。私は、はっきり言って、そういうやり方には反対です。
聞き手:はい、どうもありがとうございました。では、次の方、若い男性ですね...どう思いますか...この報奨金の問題ですが。
男:そうですね、ぼくは、オリンピックの選手は、ちょっと特別扱いしすぎていると思います。
聞き手:ううん、なるほど。
男:なにも、アマチュア主義が正しいというわけではありませんが、やはり、この金銭万能主義の時代にですね、一つぐらい、金銭抜きで、人間の名誉をかけた戦いがあってもいいんじゃありませんか。
聞き手:しかし、スポーツでもなんでも、スペシャリストを育てるには、金と時間がかかることも事実だと思いますが....
男:ま、それは否定しませんが、結局、問題はなんのためのオリンピックかということです。オリンピックが国家の宣伝のために使われていることは明らかです。しかも、そのために作られた施設が、一般の市民に開放されているかというと、そうでもないように見えますね。
聞き手:そうですか。比較的利用されているんじゃないですか。
男:オリンピックの施設は、大きすぎるので、特定のスポーツ団体は使えるかもしれませんけど、個人が自由に出入りすることはむずかしいでしょう。
聞き手:それはそうかもしれませんね。
男:ですから、オリンピックをテコにしてですね、国や地方公共団体は、だれでも簡単に利用できるスポーツ施設をたくさん作って、オリンピックで、この、盛り上がったきたスポーツへの興味と関心を、「メダル」に向けるのではなくて、自分が参加してスポーツを楽しむんだと、いう方向へ持っていくことが大切だと思うんです...ちょっと、青臭い意見ですけど...
聞き手:はい、よくわかりました....では、次の方は、女性ですね。いかがですか。
女:そうですね、私は、この、彼らは人よりたくさん努力して、それでメダルをとったわけですから、その苦労に報いるという意味で、報奨金は当然じゃないかと思います。
聞き手:ああ、そうですか。
女:世の中にはいろいろな意見をもっている人がいるとは思いますが、あまり、めくじらを立てるほどのことはないと思うんですが...
聞き手:そうですか。
女:ええ...金メダルっていうのは、つまり、世界で一番ということでしょう。なんでも一番というのは大変なことですよ。そういう人に、特別な報酬をあげるのは、当然だと思います。
聞き手:しかし、国によっては、死ぬまで年金をあげるとか、家をプレゼントするとか、常識では考えられないものもあるでしょう。
女:でもねえ、何十人、何百人といるわけじゃないでしょう...たいした金額じゃないと思いますけど...
聞き手:ずいぶん気前がいいですねえ。
女:いえ、そういうわけじゃありませんが...みんな、国家の名誉を背負って参加しているんでしょう...もちろん、自分が努力した結果ではありますが、いろんな形で国家が支援しているし、それに、勝てば国旗が掲揚されるし、国歌も演奏されるわけだから、初めから、国家がらみじゃありませんか。それなのに、報奨金はいけないというのは、矛盾していると思いますけど...
聞き手:ううん、なるほど...でも、現在は、極端な言い方をすると、報奨金合戦という印象が強いんじゃないですか...つまり、お金をたくさんかければかけるほど、優秀な選手がでるし、メダルもたくさん取れる、というような拝金主義、商業主義に汚れているんじゃないかという批判もあるわけですよ。
女:それは分かりますけど、この資本主義の世の中で、お金と名誉が一体化するのは、当然じゃないですか...それがいけないといって、アマチュアリズムを讃えたり、金銭を排除したりするのは、子供の議論だと思います。
聞き手:では、あなたはオリンピックにプロが参加してもいいという考えですか。
女:ええ、基本的に賛成です。プロであろうが、アマであろうが、結局、スポーツというのは記録を競うことですから、そのためにいくらお金をつぎ込んでもいいんじゃないですか。
聞き手:そうですか、いや、今日はどうもありがとうございました。
(以上)
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