何年か前にオーストラリアに行った。
オーストラリアは言うまでもなく日本の南にある。東京から飛行機で約10時間。最近では新婚旅行先人気ナンバーワンの国だ。
私たちは南へ行くことを「南下」と言い、北へ行くことを「北上」という。よく「台風が北上する」とか「飛行機が南下する」などと使う。どうして南が下で北が上なのか。「南上」「北下」ではいけないのだろうか。
私はオーストラリアで一枚の地図を買った。これが面白い地図で、南極が上、北極が下になっているのである。私たちが生まれたときから見続けている地図が見事に逆さまになっているのだ。通常の地図では、中国やロシアが上のほうから日本列島におおいかぶさって、日本を圧迫しているように見えるが、この「逆さま地図」では、日本列島は中国やロシアに乗って、太平洋からオーストラリアや南アメリカへ大きく広がっていくように見える。試みに世界地図を南北逆さまに見てみるといい。
オーストラリアではなぜこのような地図がおみやげとして売られているのだろうか。半分は冗談なのだろうが、けっこう半分は本気のような気がする。つまり、一般の地図は常に北半球が上にあり、いかにも世界の中心に見えることに対する反発なのだろう。 |
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