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おもしろトピックの家


おもしろトッピク(10):地図は自己主張する(1)



 何年か前にオーストラリアに行った。
 オーストラリアは言うまでもなく日本の南にある。東京から飛行機で約10時間。最近では新婚旅行先人気ナンバーワンの国だ。
 私たちは南へ行くことを「南下」と言い、北へ行くことを「北上」という。よく「台風が北上する」とか「飛行機が南下する」などと使う。どうして南が下で北が上なのか。「南上」「北下」ではいけないのだろうか。
 私はオーストラリアで一枚の地図を買った。これが面白い地図で、南極が上、北極が下になっているのである。私たちが生まれたときから見続けている地図が見事に逆さまになっているのだ。通常の地図では、中国やロシアが上のほうから日本列島におおいかぶさって、日本を圧迫しているように見えるが、この「逆さま地図」では、日本列島は中国やロシアに乗って、太平洋からオーストラリアや南アメリカへ大きく広がっていくように見える。試みに世界地図を南北逆さまに見てみるといい。
 オーストラリアではなぜこのような地図がおみやげとして売られているのだろうか。半分は冗談なのだろうが、けっこう半分は本気のような気がする。つまり、一般の地図は常に北半球が上にあり、いかにも世界の中心に見えることに対する反発なのだろう。



この地図は、太平洋が日本の西北に大きく
広がっていて、印象が雄大である。
広い太平洋に飛び出して行こうという
気持ちになる。




 地球は広い宇宙に浮いているだけなのだから、もともとは北も南もない。ただ、便宜的に北極星の方向を上(北)にしただけで、北極星の方向を下(南)にしてもいっこうにかまわない。たまたま、北半球の人々が歴史の主導権を握ったので、北半球中心の地図を作っただけなのだ。
 つまり、地図はそれを作った人(民族、国)の自己主張が込められているということが言えるのだ。
 自己主張が対立するところが国境だ。隣の国同士で仲がいいという例はほとんどない。隣の国とは仲が悪いというのが世の常だ。





         樺太(サハリン)の北緯50度の線をよく見ていただきたい



 試みに日本の地図を見てみればいい。自己主張しているところが三カ所ある。いわゆる北方領土(国後島、択捉島、歯舞島、色丹島)、尖閣列島、竹島である。また、樺太の北緯50度にも赤い国境線が書いてある。これはかつて南樺太が日本領土であったことを示しているのだ。
 つまり、南樺太は明治38年の日露講話条約で日本領となった土地であり、第二次大戦後ソ連に編入されたが、これは日本とソ連は戦後処理の平和条約を取り結んでいないので、形式的には帰属未定の土地だという自己主張なのだ。したがって、宗谷海峡の国境線は暫定的だという主張が込められている。
 ところが、いわゆる北方四島は千島・樺太交換条約の対象島ではなく、江戸時代より日本の固有の領土だという主張なので、国後島と北海道の間には国境線は引かれていないのである。


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