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聴解問題 スクリプト

(1)
ア:ええ、贈り物をするというのは、一種の美風でもありますが、それが度を越すと、賄賂や汚職につながっていくこともありますので...まあ、気をつけないといけないわけですが、今日は、四人の方にインタビューして、ご意見をうかがいたいとおもいますが...
まずは、女性のかたですが...贈り物について、まあ、いろいろな贈り物があるとおもいますが、どう思われますか。
女:ええと、そうですね、家は、まあ、世間並みにやっております。主人は、ごく普通のサラリーマンですから、派手でもないし、地味でもありませんね。

ア:例えば、どんな贈り物をされますか。
女:ええと、会社の上司の方への御中元とお歳暮が多いですね。

ア:他には、どんな方に御中元やお歳暮をなさるんですか。
女:ほかには、たとえば、わたくしの実家やお仲人さんですね。

ア:ああ、そうですか...では、例えば、友人の結婚祝いや、出産祝いも多いんじゃないですか。
女:昔は、ありましたけどね、もう、友人や知人で、結婚したり出産したりする人は、もうおりませんので、最近は、そういうお付き合いはなくなりましたね...まあ、その代わりといってはなんですけで、甥や姪の入学祝いやお年玉の方が多くなりましたね。

ア:ああ、そうですか、大勢になると、けっこう出費がかさむんですよね。
女:ええ、そうなんですよ、けっこう馬鹿にならないんですよ....

ア:ううん...まあ、ひところ、こういういわゆる、虚礼廃止というようなことが、いわれましたが、最近では、また、このような贈り物する、いわゆる交際が派手になってきたとおもわれるんですが、この点、どのように思われますか。
女:そうですね...あまり派手なのは、お互いに出費がかさんで、無駄なことって気がしますけどね、でも、一年に一回か二回、日頃のご無沙汰をわびるという、昔からのしきたりは残してておきたいですね...

ア:そうですか、いや、どうもありがとうございました

   
   むずかしいことば

   世間並み:(せけんな)み         
   実家:(じっか)          
   (お)仲人さん:お(なこうど)さん      
   お年玉:お(としだま)          
   出費がかさむ:(しゅっぴ)       
   馬鹿にならない:(ばか)      
   虚礼廃止:(きょれいはいし)         
   日頃の無沙汰をわびる:(ひごろ)の(ぶさた)をわびる   




(2)
ア:では、次の方ですが、今度は中年の男性のかたですね...いかがでしょうか、前の女性は、まあ、ほどほどの贈り物は、いいんじゃないかという、ご意見なんですが...
男:そうですね、ぼくは、あまり贈り物はしないほうですね...

ア:じゃあ、御中元やお歳暮も贈らないということですか。
男:贈らないわけでないんですが、ごく限られた人しか贈りません。

ア:どんな方ですか。
男:親兄弟と何人かの友人です。

ア:ご両親とは離れて暮らしてらっしゃるんですか。
男:ええ、両親は北海道におりますので...遠いですから、あまり帰る機会もないので、一年に一回か二回の親孝行のつもりで....

ア:会社関係の方には、どうですか。
男:まったくしておりません。贈り物というのは、結局、個人的な付き合いですから、会社の上司や同僚、それに取引先などには、一切、贈っておりません。

ア:でも、他の人は贈り物をしているのに、ご自分だけが贈らないというのは...ちょっと気まずい関係になりませんか...立ち入った質問ですけど。
男:ぼくは、気になりませんね。今の会社に入って、かれこれ20年になりますが...出版会社なんでけどね....入社した時から、そういう一切のやったりもらったりは、していないので、ああ、彼はそういう主義なんだ、と周りもわかってますから、なんの支障もありません。

ア:しかし、あなたの主義を知らないひとは、贈ってくるんじゃありませんか。
男:ええ、そういうこともありますが、あとで直接会った時に、お礼をいって、それとなく、お返しはしないということを伝えるんです。すると、何年かたつと、自然に来なくなるんですよ...                           
ア:はあ、そういうもんですかね...
男:別に、ぼくは悪いことをしているわけじゃないから、みんな、理解してくれますよ。

ア:そうですか、よくわかりました。ありがとうございました。
   
   むずかしいことば

   親孝行:(おやこうこう)          
   取引先:(とりひきさき)





(3)
ア:では、次のかたは、若い女性の方ですね...いかがでしょうか。
女:私はまだ独身ですし、いわゆる御中元とかお歳暮には、あまり縁がありませんね。

ア:そうですか...でも、ご両親はいかがですか。
女:そうですね、そういう時期になると、デパートで二人で出かけますから、まあ、世間並みのお付き合いはしてるんじゃないですか。

ア:そうですか...それで、あなたご自身はいかがですか、なにか、贈り物をしたり、もらったりというようなことはありませんか。
女:そうですね...高校生のころまでは、よく誕生日会などをして、プレゼントの交換などをしたこともありますけど、今は、そんなことはまったくありません。なにか、そういうのって、子供の遊びのような気がします。

ア:はあ、子供の遊びですか....では、ご両親に、なにか、特別な日に、例えば、誕生日とか、結婚記念日になにか、プレゼントをするようなことはありませんか。
女:ううん...いままで、したことがないんですけどね....

ア:ほお、そうですか。
女:でも、こんど、来年なんですが、実は、銀婚式を迎えるんです。

ア:ああ、25年ですね...
女:ええ、それで、兄弟で相談して...兄と弟がいるんですけど...なにか、お祝いをしようという話があるんです。

ア:いい親孝行じゃないですか。
女:いえ、そんなに大げさなものじゃありません。

ア:で、どんな計画なんですか。
女:三人でお金を出し合って、旅行をプレゼントしようと考えています。たとえば、九州の温泉めぐりとか、海外旅行とか...

ア:そうですか...きっと喜ばれるでしょうね...いや、どうもありがとうございました。

  
  むずかしいことば


  銀婚式:(ぎんこんしき)




(4)
ア:では、最後の方は、若い男性の方ですね....いかがでしょうか....贈り物。
男:いや、ぼくは、ああいう贈り物っていうのは、必要かも知れないけど、結局、あの贈り物の習慣が、政治家の腐敗につながっていくような気がします...ですから、すくなくとも、意味のないやりとり、例えば、御中元やお歳暮はやめたほうがいいと思います。

ア:でも、それが人間関係を円滑にするんじゃないですか。それに経済効果も高めるし...
男:そうですか。経済効果を高めることは認めますが...一個人の人間関係を円滑にすることを期待して、贈るわけですが、実際は、それが逆に利用されて、悪い社会的関係が作られていく場合の方が多いんじゃないですか。

ア:まあ、そういうケースもあるでしょうね。
男:例えばですよ、選挙のまえになると、選挙に立候補する人は、有権者に対して、様々な便宜をはかるわけですよ...宴会をしたり、旅行に連れていったり...これも、贈り物の一種でしょう。また、お歳暮やお中元も、結局、個人の範疇を越えて、投票を期待するという社会的な目的に変化していくわけです。

ア:なるほど。
男:また反対に、有権者のほうも、政治家に対し、なにかしてもらおうとして、贈り物をするでしょう。政治家の立場から見れば、何か手土産ですね、品物でも、お金でもいいですから...なにも持って来なかった人よりも、なにか持ってきた人のほうに心が動くのは、当然じゃないですか。

ア:しかし、人の家に手ぶらで行くのも、ちょっと、行きにくいんじゃないですか。
男:まあ、それは、歴史的な産物ですから、変わっていく可能性はあると思いますね。

ア:ああ、そうですかね。
男:まあ、ぼくは、贈り物の習慣、それに、お土産の習慣というのは、確かに、いいものだと思っています。しかし、個人の領域を越えてそれが行われるとき、つまり、何かの見返りを期待したとき、贈り物が賄賂に変わって行くんですね...そこが、問題だと思います。

ア:いや、今日は、みなさん、どうもありがとうございました。(了)

    
    むずかしいことば

   政治家の腐敗:(せいじか)の(ふはい)
   便宜をはかる :(べんぎ)をはかる
   個人の範疇 :(こじん)の(はんちゅう)
   手土産:(てみやげ)
   手ぶらで行く
   見返りを期待する;(みかえ)りを(きたい)する
   賄賂:(わいろ)


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