しかし、①’②’はおかしな表現だと感じる人もいるだろう。つまり、「ぶつける」というのは、「壁にボールをぶつける」のように、意志他動詞であるから、「壁に頭をぶつける」というと、自分の意志で「ぶつける」という意味になってしまう。(好き好んで、壁に激突する人はいない!)
また「ぶつかる」は自動詞で、例えば、
③車がへいにぶつかって、めちゃくちゃになった。
④波が岩にぶつかってくだける。
のように、非意志的に用いるのが普通だ。だから、自分からぶつかったわけではないから、①② が正しいという考え方は十分に理解できる。
一方、②の「ひたいが切られた」と書いた学生は、「ひたいが切れた」としようか、「ひたいが切られた」としようか、きっと迷ったに違いない。『「切れた」とすると、これは自動詞だから、自然にひたいが切れるという意味になってしまうので、ちょっと変だ。自分の過失でころんで、ひたいに怪我をしたのだけれど、被害をこうむったことは事実だから、受け身を使うのが妥当だ』と、考えたのだろう。
しかし、「切られた」とすると、これは何者かによって、ナイフや刀で「切られた」という意味になってしまうので、②の場面には合わない。
ここでは①’や②’のように、「頭をぶつけた」「ひたいを切った」と他動詞を使うのが正しい。 |
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