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 おもしろトピックの家


おもしろトッピク(20) 人は国境に惑わされるということ  2002.4.8.

 これはパッタニーで見かけたモスクです。非常にきれいなモスクでありました。パッタニーからマレーシアの国境にかけて、どの町にもモスクがありました。タイというより、マレーシアという印象でした。


 私は昨年の11月タイ南部を旅行しました。ソンクラー、ハジャイ、パッタニー方面です。その地域は緯度で言うと北緯6度から7度です。熱帯モンスーン気候に属しています。タイ人の話ではこの地域は11月から翌年の1月、2月にかけて、雨が非常に多く、よく川が氾濫するそうです。私が旅行した時も、雨がちでありました。また、その二週間ぐらい前にも大雨が降って、鉄道(いわゆる、マレー鉄道です)が冠水し、一部不通になったことを聞きました。その時は、「そうか、バンコクは乾季でしのぎやすいのに、南部では大雨か、大変だなあ」ぐらいにしか思いませんでした。

 私はその時、タイ南部のその先にマレーシアがあるんだということを全く意識しませんでした。もっとわかりやすく言えば、タイの南部はマレー半島なんだという事実を忘れていたのです。現在、私が住んでいるのはタイのバンコクです。ものを見る視点がバンコクであり、タイなのです。この視点の偏りが盲点でした。


 パッタニーの町はマレー系のモスリムが多いようです。町行く女性はみな頭をおおっていました。店の大きな看板にタイの文字が書かれ、その下をモスリムの女性が歩いています。


 地図を見れば一目瞭然で、ソンクラー、ハジャイ、パッタニーというのは、実はマレー半島の東海岸にあります。マレー半島では11月から2月にかけて、東海岸はいわゆる雨期になり、風雨が強く、また波も高いのです。私は以前、7年間マレーシアにいたのですが、我々も雨期にはマレーシアの東海岸には行きませんでした。そのマレーシアの雨期とタイ南部の大雨の事実が実はつながっているんだということに、まったく気づかなかったのです。国境という目に見えない線で思考が断ち切られてしまったのです。


 ここはタイ・マレーシア国境のスンガイ・コロック。税関事務所です。
 「スンガイ」というのは、マレー語で「川」という意味です。


 同様の経験を韓国でもしたことを思い出しました。
 これは「梅雨」の話なのですが、ご存じように梅雨は日本の「独特」の気候で、6月から7月にかけて、いわゆる「梅雨前線」が日本の中部から南部に居座り、長雨を降らせる気象のことです。天気図をよく見ると、この前線は韓国の南部から始まって、九州・本州へ伸びているのです。ところが、私たちの思考は九州または、九州西方の海で切れてしまい、韓国南部でも実は「梅雨」があるんだという事実までは想像が及びません。もう少し、注意深く天気図を見ていたら、韓国の梅雨にも気づいたかもしれません。しかし、悲しいかな、長年の習慣で、国境を越えると、一気に想像力が及ばなくなってしまいます。
 どうも私たちは国境という見えない壁に阻まれて、ごく単純な事実を見落としてしまうようです。


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