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日本の社会は一般的に見て、若者に暖かく、老人に冷たい。
「お年寄りを大切にしましょう」という呼びかけが行われ、電車やバスに老人優先の「シルバーシート」が設けられたりしていて、一見、年寄りが大切にされているように見えるが、実際は、年寄りを大切にしない風土が日本には存在している。
年を取ると、老人は社会から切り離され、社会の外に置かれ、社会のお荷物とされてしまう。老人は子供と同じく半人前とされ、保護の対象となり、昔なら隠居をして、縁側で日なたぼっこ、今なら「歌って踊ってゲートボール」の生活になり、世間もそれが老人の幸せだと一方的に思い込んでいる。
老人の本当の幸せは、老人を人間扱いし、一人前扱いすることだ。もし、定年後も働きたいという老人がいれば、そのような社会環境を整えることが必要で、歌わせ踊らせて、老人を子供並みにあやすような扱いをしてはいけない。しかし、日本の「若者優先社会」はそれに気がつかず、またそれを許さない。
フランスの地下鉄や電車、長距離列車にも必ず優先席は設けられているが、傷痍軍人や身体障害者、妊婦、四歳以下の子供を連れた人のためのもので、老人用というのはない。老人が少なくとも手足の動くうちは、一人前扱いされているからである。
参考図書:木村尚三郎(1985)「家族の時代」新潮選書, 新潮社, p.204
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