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  にほんごのひろば・しつもんばこ


4.「雨雲」と書いて、なぜ「あまぐも」と読むのですか。 2009年2月8日 更新

質問:
 先日、授業の時に、「雨雲」という言葉が出てきました。「あめぐも」と読むのかと思ったら、「あまぐも」が正しい読み方でした。辞書でも、「あまぐも」となっていました。これはどういうことでしょうか。 
(韓国人の教師からの質問)






(1) 「雨」を「あま」と読む言葉のいろいろ

 「雨」を「あま」と読ませる熟語はいくつかあります。辞書で確認します。

 (現代国語例解辞典 小学館)

①雨脚(あまあし):「雨足」とも書く。

②雨蛙(あまがえる):「カエル」の名前

③雨傘(あまがさ)

④雨がっぱ(あまがっぱ)

⑤雨具(あまぐ)

⑥雨靴(あまぐつ)

⑦雨雲(あまぐも)

⑧雨曇り(あまぐもり)

⑨雨乞い(あまごい)

⑩雨ざらし(あまざらし)

 このほかにも、「雨空(あまぞら)」「雨だれ(あまだれ)」「雨粒(あまつぶ)」「雨戸(あまど)」「雨水(あまみず)」「雨漏り(あまもり)」「雨宿り(あまやどり)」などがある。

 中には「雨模様」のように、「あめもよう」「あまもよう」の二通りの読み方を持つ言葉もある。

 もちろん、「雨降り(あめふり)」「雨男(あめおとこ)」「雨女(あめおんな)」「雨露(あめつゆ)」など「あめ」と読む言葉も多い。

 「雨」の場合は、「あま」と読ませる「雨○○」熟語のほうが多いようである。






(2)母音交替

 この現象は「母音交替」という現象だそうです。

 日本語の場合、動詞の活用と名詞の熟語形成に、この「母音交替」が起こるといいます。動詞の活用形は、たとえば、「行かない−行きます−行く−行けば−行こう」の「ka−ki−Ku−ke−ko」という形で表れます。


 名詞の場合は、いくつかの型があります。

(Ⅰ)  → 
              
①雨(アメ) → アマ  雨雲(あまぐも)、雨宿り(あまやどり)、雨傘(あまがさ)
               雨ガッパ など
              
②上(ウエ) → ウワ 上着(うわぎ)、上履き(うわばき)、上っ面(うわっつら) など 

③目(メ)  → マ   まぶた、まなじり、まなこ、まつげ
             
④酒(サケ) → サカ 酒盛り(さかもり)、酒蔵(さかぐら)、酒まんじゅう、酒手(さかて)、
               酒代(さかだい) など
              
⑤爪(ツメ) → ツマ  爪先(つまさき)、爪弾き(つまびき)、爪楊枝(つまようじ) など
              
⑥声(コエ) → コワ  声高に(こわだかに)、声色(こわいろ)、声音(こわね) など
              
⑦金(カネ) → カナ  金物(かなもの)、金盥(かなだらい)、金井(かない・人名)
               金沢(かなざわ・地名)、金切り声(かなきりごえ)、
               金具(かなぐ)、金縛り(かなしばり)など
              
⑧稲(イネ) → イナ  稲穂(いなほ)、稲尾(いなお・人名)、稲村(いなむら・地名)など
              
⑨風(カゼ) → カザ  風上(かざかみ)、風下(かざしも)、風見鶏(かざみどり) など
              
⑩手(テ)  → タ   手枕(たまくら)、手綱(たずね)、手繰る(たぐる)
               手(た)ばさむ など
              
⑪群れ(ムレ)→ ムラ  叢雲(むらくも)、叢雨(むらさめ) など
              
⑫米(ヨネ) → ヨナ   米子(よなご・地名)
              
⑬船(フネ) → フナ   船宿(ふなやど)、船賃(ふなちん)、舟人(ふなびと)
                舟歌(ふなうた) など
              
⑭苗(ナエ) → ナワ   苗代(なわしろ)、猪苗代湖(いなわしろこ・地名)
              
⑮胸(ムネ) → ムナ   胸元(むなもと)、胸板(むないた)、胸苦(むなぐる)しい、
                胸突き八丁(むなつきはっちょう)、胸騒ぎ(むなさわぎ) など
 





 ほかにもいくつかの型があります。


(Ⅱ) i → o
              
①木(キ)  → コ    木立(こだち)、木漏れ日(こもれび)、木っ端(こっぱ)みじん など
              
②火(ヒ)  → ホ    火口(ほぐち) など


(Ⅲ)  → 
             
①月(ツキ) → ヅク   夕月夜(ゆうづくよ)



(Ⅳ)  → 
              
①気(キ)  → ケ  気色(けしき)ばむ、気(け)だるい、気高い(けだかい)、
              
              気振り(けぶり)
(Ⅴ)  → 

①石(イシ) → イサ 石和温泉(いさわおんせん)


(Ⅵ)  → 
              
①白(シロ) → シラ  白子(しらこ)、白たき、白ける、白々しい、白鷺(しらさぎ)
               白菊(しらぎく)


(Ⅰ)から(Ⅵ)は語が合成されるとき、前の語の母音が変化する例である。


 また、別に、後ろの語に子音「s」がつく場合もある。これは「母音交替」ではないと思われるが、参考に紹介する。


(Ⅶ)子音「s」がつく
             
①雨(アメ) → サメ  春雨(はるさめ)、氷雨(ひさめ)、村雨(むらさめ)、秋雨(あきさめ)
               霧雨(きりさめ)など
              
②青(アオ) → サオ  真っ青(まっさお)
              
      (注意 これを「真っ赤、真っ黒、真っ白」のように「ッ」をつなぎにした
          合成語とも考えられる)
              
③朝(アサ) → ササ  三朝温泉(みささおんせん)

                                      以上

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