このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください

中国(杭州・紹興・上海)−17 咸亨酒店編

 
 三味書屋の見学が終わったのは13時過ぎであった。杭州に戻る列車は14時30分に紹興駅発なので、1時間で昼食を取らねばならない。時間がないときは昼食を抜くことがあるが、今回は事前に昼食を取る場所を決めていた。

 咸亨酒店は魯迅故里の内部ではないが、ほぼ隣接していると言ってもいい近いところに有る。魯迅の小説「孔乙己」の舞台となった飲み屋であり、魯迅は「私は十二歳のときから、鎮のはずれにある咸亨小屋に小僧にはいった。」と書いている。
 小説のタイトルにもなった孔乙己は、科挙の試験に合格できなくて、落ちぶれてしまった秀才である。

ポーズを取る孔乙己
右奥看板の「咸」の字が写らなかった。

 さて、紹興の名物と言えば、もちろん紹興酒である。酒の弱い僕では有るが、やはり紹興まで来たからには本場の紹興酒を飲まねばなるまい。そのつまみが茴香豆(ういきょうまめ)である。孔乙己も小説の中で茴香豆をつまみに紹興酒を飲んでいる。

 まず店に入ろうとして、まごついた。上の写真のパラソルの下が受付であり、お椀に入った紹興酒もそこに置いてあるのだが、どうみても英語を話せそうにない地元のおばちゃんである。中国のこういうおばちゃんは愛想がないと決まっており、案の定、客が来ても「歓迎光臨(いらっしゃいませ)」の一言もない。
 中に入って偵察すると、奥のほうは家族連れなどのグループ席で、しっかりしたメニューのようだ。一人では入りにくい。一人の客や、つまみだけの客は受付そばの席に座ったほうがよさそうなので、受付の方に戻った。席は混んでいたものの、とりあえず確保することはできた。まずは受付に行って紹興酒と茴香豆を注文しようとしたところ、愛想の無いおばちゃんが、にこりともせずに食券を見せた。どうやら食券が必要らしい。どこで買ったらよいか分からないのであたふたしていると、おばちゃんが食券売り場まで連れていってくれた。愛想は無いが親切なようだ。
 食券売り場で、まず5元が10枚つづりになっている食券を買う。初めての客でも強制的に50元(約750円)を支払わなければならないシステムである。その食券で受付に行って、お椀に入った紹興酒と茴香豆を買った。茴香豆をつまみに紹興酒を飲むと、なんともいえない幸せな気分になった。
 紹興酒に口をつけて落ち着いたところで、今度は店内の奥の方にごはんと料理を買いにいった。日本であれば受付で食券を買い、紹興酒と料理は一緒のところで売っているのが一般的だと思うが、あまり細かいことは気にしてもしょうがない。料理は蒸鶏にした。全品揃ったところで下の写真を撮った。

茴香豆、紹興酒
米飯、蒸鶏

 蒸鶏もなかなかの味であった。
 ところで、上の孔乙己が写っている写真では分かりにくいかもしれないが、咸亨酒店はオープンカフェ形式なので、ドアや窓はない。そのためにがどんどん入ってくる。あれほど蝿が飛び交う中で食事をしたのは、生まれて初めてである。最初は手で払っていたが、後の方はもうどうでもよくなった。蝿が止まった肉なんか食べられないという潔癖症の人は行かないほうがいいか、奥の方の席にすべきである。
 
 咸亨酒店の残りの食券15元分は捨てずに保管している。いつか使う日が来ることを信じて。



 食事が終わり、紹興駅までタクシーで急いだ。紹興市内の秋瑾故居、郊外の東湖や柯岩などを観光することが出来なかったのは残念である。
 紹興を観光したのは6時間ほどだが、古代の伝説の王朝から魯迅に至るまで中国の歴史に触れることが出来、大満足である。密度の濃い6時間だった。

紹興駅



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