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南アフリカ−14 隣国ナミビア編(その3)
一人になっても、やはりやることが無い。とりあえずまた散歩でもするかと思って外に出た。雲一つ無い快晴だ。考えてみれば前日も雲一つ無い快晴だった。ちなみに翌日も、さらに次の日も雲一つ無い快晴だった。ナミビアという国は雲が形成されないようだ。資料によると、首都Windhoekの年間降水量はわずか365mmであり、しかも6割程度が1月から3月に集中するらしい。4月に行っても快晴続きと言うわけだ。
その日は土曜日だったので午前中は店も開いており、短い商店街もわりと活気があった。何軒か旅行代理店に入ってみたが、やはり日帰り旅行どころか、1泊や2泊の旅行さえ無かった。ナミビアの旅行と言うのは砂漠の中をキャンピングカーで走り続けて7泊や10泊というのが一般的である。レンタカーにも電話してみたが、キャンピングカー専用と言うところが多く、しかも最低3日以上というところが多かった。オートマのクーペもしくはセダンを1日借りるのは難しいらしい。
こうなれば移動はタクシーしかない。前日の空港からホテルまでのタクシーが気さくな運転手だったので、彼の名刺に電話をしてみたところ、半日でも一日でもOKだというので来てもらうことにした。ホテルのロビーで待っていると、愛想のかけらも無い男がやってきた。聞いてみると、気さくな運転手の弟だと言う。何か怪しげな気もしたが、確かに名刺は同じものだ。にこりともしない黒人と言うのはやや不気味だが、それでも誠実そうに見えないことも無く、ロビーで行き先を相談することにした。
その時点で確か14時くらいだったので、それほど遠くには行けない。聞いてみると、90km先にRehobothという村があるらしい。とりあえず行ってみることにしたが、走って10分もしないで民家が無くなった。Rehobothまでの90km、その間はブッシュだけで民家が一軒も無い。この国の人口密度はどのくらいなのだろうか。愛想の無い運転手との会話はほとんど無く、窓の外だけを眺めていた。ブッシュと言うのは日本では見ることの出来ない光景なのでそれなりに見応えが有るのだけれど、走っても走っても景色が変わらない。若干のアップダウンがあるだけだ。たまに動物がいるのが見えるくらいである。
想像はしていたものの、Rehobothは何も無いところだった。下りてもすることが無いので、来た道を黙って引き返す。途中ダムを発見したので寄ってみたが、泥水の溜まった大きな沼という印象だ。もちろん遊歩道のような気の効いたものはない。写真だけ撮って引き返した。とりあえず3時間くらいは潰せた。往復180kmも走って1万円はしなかったように記憶している。
翌日も愛想の無い運転手を朝から呼んで、今度は205km離れたGobabisという町に出かけた。快晴の空の下、ブッシュを眺めて時間を過ごす。こちらのルートはアップダウンすらない。想像はしていたものの、Gobabisもまた何も無いところだった。とりあえずスーパーマーケットを1軒発見したのでジュースを買った。全然時間が潰れない。愛想の無い運転手が気を利かしてガソリンスタンドで何か時間を潰せる場所がないか、店員に聞いてみてくれたところ、すぐそばに小さな公園があって動物を見ることが出来ると言う。とりあえず寄ってみたら、なんと1時間掛けて散歩できるコースが有ると言うではないか。もちろんそのコースを歩いてみることとした。
雲一つ無い空の下、強烈な日差しが照りつける。空は怖いくらいに青い。日本の秋晴れの空よりももっと色の濃い青だ。水牛やダチョウがのんびりと歩いている。見たことも無い虫が目の前を横切る。物音はほとんど何も聞こえない。このままずっと歩いていたい、そんなことを考えていたところ、予期せぬ事態が発生した。一緒に歩いていた愛想の無い運転手がばてたのだ。肩で息をしており、ちょっと座らせてくれ、などと言っている。君はここに住んで暮らしているのではないのか。ちょうど広場のようなところに出たので、運転手をそこに座らせて僕は周囲を歩き回った。散歩好きの僕にとっては、ナミビアで一番充実した楽しい時間だった。
Rehobothの路上
Rehobothの路上
Gobabisの公園
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