このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください

台湾−1 お客様との昼食編

  98年6月に初めて台湾出張の機会を得ることが出来た。真っ先に脳裏をよぎったのは乾杯の連続で酔いつぶれる自分の姿であった。僕の所属している部には、台湾出張時に必携とされる薬が有る。その名は「ハイチオールC」という。酒を飲む前に「ハイチオールC」を服用すれば、酔いを抑えることが出来ると当部では信じられている。ただ、効能の欄には二日酔い・全身倦怠・しみ・そばかすと書いてある。酔い止めとは全然書いていない。しかも、しみやそばかすと酔い止めに相関関係は有るのだろうか。ともかく僕は忘れずに成田でそれを購入した。
  台湾の第一印象はとにかく暑いということであった。沖縄のそばなのだから当然といえば当然なのだが、6月でも上着を着ることが出来ないほどの暑さである。湿度も高いように思う。台湾に行かれる方は4月でも夏物のスーツで十分ということに留意していただきたい。
  さて、台湾人と一緒に食事を取ったことがある方ならご存知だと思うが、彼らはいわゆる「一気呑み」が大好きである。知らない人のためにここでレクチャーしておきたい。まず酒は紹興酒である。酒は温めずに常温だ。ざらめを入れるのは邪道とされているようである。それをビーカーのような容器に入れて、一気にちょうど適したサイズのグラスに注ぐ。そして台湾人と目が合ったらグラスを手に取り、顔のあたりまで持ち上げる。相手の目を見てにっこりと笑い、「陳さん」「虎羽さん」とお互いの名前を呼んで一気に呑み干す。そして呑み終わったら、もう酒が残っていないことを相手にアピールすべく、グラスの底を相手に見せなければならない。会話に関しては、「虎羽さん」「謝々」などの変化型も有る。しまいにグラスでは物足りなくなって、ビーカーを一気しろ。」などと要求する性質の悪い客もいる。もちろん台湾人に悪気は無く、客がつぶれなかったときは自分のもてなしが不充分だ考えるらしい。もしあなたが酒に弱いタイプであったら、乾杯のとき以外は酒を口にしないことである。酒量に自信が有る方なら、思い切って勝負してみるという手も有るが、酒に弱い台湾人を僕は寡聞にして知らない。
  このときの出張は台北2泊→高雄1泊→台北1泊というスケジュールであった。台北の連夜の飲みは気合でクリアした。「俺もなかなか飲めるじゃないか。」などと自信も芽生え始めていた。高雄の夜もクリアした。後は高雄で客と昼食を取りさえすれば、夜は台北に戻って客抜きで当社社員との食事である。これは一気大会にはならないはずだ。台湾出張の際にはこれほど慎重に飲み方を考えるということをご理解いただきたい。
  高雄の客との商談は順調であった。今回もメーカー同行だったが、その場で成約という最高の結果が出た。後は昼食だけだ。客が日本料理屋に連れて行ってくれるという。もちろんわれわれは承諾した。オフィスを出る前に「今日はこのワインを飲もう。」といって客が一本かばんに入れた。日本料理屋に着くと、客がそのワインを店員に渡して何かか話している。
  昼食のメンバーは、客1人・メーカー1人・当社現地スタッフ(台湾人)・僕の4人である。まずは昼からビールで乾杯だ。勢い良く2本くらい空けてから、「それじゃワインを飲もう。」と客が言い、ウェイトレスに持ってくるように頼んだ。ウェイトレスがワインを持ってきたのを見て、僕は驚愕した。
ワインクーラーに6本も入っている! しかも全て栓が抜いてある!!
「今日はこれを全部飲むぞ。」などと客は上機嫌だ。僕は計算した。4人で6本ということは一人あたり1本半である。これは僕のキャパシティをはるかに超える量である。「行けるところまで行こう。」僕はひそかに悲壮な決意を固めた。予想通り、ワインも一気呑みだ。その後のことはあまり記憶に残っていない。
 

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