このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください


中国−13 大連・長春のトイレ編



 中国旅行の必携アイテムがポケットティッシュである。なぜ「地球の歩き方106 大連と中国東北地方」の荷物チェックリストにポケットティッシュが含まれていないのか、理解に苦しむところである。今回、僕は成田空港でポケットティッシュ6個入りのパッケージを1つ購入した。それは売店でポケットティッシュを見た瞬間に前回の苦い記憶が甦ったからである。
 前回(1993年2月)の行程は、北京・西安・桂林・北京を全16日間で回ると言うものであった。それは最初の北京5日目のこと。翌日に万里の長城観光を控えた我々は、翌朝の朝食としてマクドナルドでフィレオフィッシュを購入した。確かそのマクドナルドは中国の栄えある第一号店だったはずだ。当日朝フィレオフィッシュを食べたとき、何か嫌な感じがしたのだ。ちょっと気分が悪くなったものの、その日は万里の長城に行かねばならないのだから、そんなことは言ってられない。すぐに回復するだろう、という簡単な気持ちでタクシーに乗った。その日の行程は、まず明の十三陵に行く予定だったが、途中航空博物館の看板を発見したので立ち寄ることとした。汚い話で恐縮だが、その航空博物館のトイレでまず一回吐いた。このときは一緒にいた友人K君に気分が悪いことは告げたが、乗り物酔いということで整理し、明の十三陵に向った。このときはまだ普通に歩いていた。
 明の十三陵ではトイレまで持たず、タクシーを下りるなり駐車場で吐いた。さすがに友人K君も心配し出した。とりあえずここまで来たのだから、ということで十三陵の観光を始めたが、途中歩くもの辛くなり、ベンチで休んだ。協議の結果、その日は万里の長城を諦め、引き返すこととした。ホテルまで戻ったときには悪寒で震えが止まらないというレベルまで病状は悪化していた。鍵を指し込むのに苦労したほどだ。そのままベッドに倒れこんだ。その日から腹を壊した。帰国するまでの残り11日間、ついに最後まで治らなかった。

 ほとんどの日本人は、中国に行くと5〜6日で腹を壊すと言う。原因は水と油である。中国では水道水を飲むことは出来ない。正確に言うと、中国人は平気で飲んでいるが、日本人が飲むと腹を壊すのだ。今回の旅行で、中国にもEvianなどのペットボトルが売られていることが分かった。僕は歯を磨くときや外から帰ってきたときのうがいにすらペットボトルの水を使った。それでも帰国する5日目、ついに腹を壊した。
 中国で腹を壊すほど、悲惨なことはない。悪名高き中国のトイレに入らざるを得ないからだ。前回の中国旅行でかなり衝撃を受けたのはトイレのひどさである。たとえば西安の兵馬俑の脇のトイレはさすがに男女は区別されていたが、男子用は大小共用で且つドアがなかった。つまり入っていったらいきなりおっさんがしゃがんでいる光景に出くわす危険性も有る。もちろん水洗ではない。備え付けのトイレットペーパーなど有るわけがない。
 用を足している姿と言うのは人間として一番見られたくない姿だ思うのだが、中国人はそうは考えていないようだ。たとえばよちよち歩きの男の子はオムツをしていない代わりにズボンに切りこみが入っている。後ろから見ればお尻丸出しだ。用が足したくなったらその辺に座ればいい、という考え方である。実際街中を歩いていると、道路に座りこんでいる2〜3才の男の子をよく見掛ける。親も人目を気にするわけでもなく、その脇に立っている。
 今回長春でチェックアウトした後にトイレに行きたくなった。もう部屋には戻れないのでフロントの脇のトイレに行った。大の方のトイレを開けてみたところ、おじさんと目が合ったので慌ててドアを閉めた。となりのトイレは誰も座っていなかったが、建付けが悪いので案の定ドアが閉まらない。誰もドアを開けないことを神に祈りながら用を足した。長春の空港は、ドアがやたら小さかった。ノックをしなくても、中に人が入っているか把握出来るという合理的なシステムだが、問題は用を足している人と視線が合ってしまうことだ。トイレの中で立ち上がったりしたら隣が丸見えだ。もちろん両方ともトイレットペーパーなど存在しない。大連の空港のトイレは綺麗だったけれど、やはりトイレットペーパーはなかった。
 ホテルや空港と言った公共の場所ですら、そのようなレベルのトイレだったのだから、一般家庭や公園などのトイレは想像するのも恐ろしい。文化の違いと言ってしまえばそれまでだけれど、トイレに関する教育と設備の充実を中国の国家的プロジェクトにすべきではないか、と僕は真剣に考えている。


 

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