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台湾−8 鼎泰豊編
国父紀念館で巨大孫文像を見終わった頃には二日酔いも治りつつあり、だいぶ体調も回復した。次の目的地である中正紀念堂までは仁愛路を歩いていくことになる。地図を見たところ、一本南の信義路に鼎泰豊が有ることに気付いた。
台湾一有名なレストラン、鼎泰豊。その昔、ニューヨーク・タイムズが世界十大レストランに選出したことで有名である。台北には本店の他に一つの支店しかないが、日本では新宿・横浜・名古屋・京都の高島屋と熊本の鶴屋の5支店があり、かなり充実している。そのほかでは香港とカリフォルニアに支店が有るそうだ。今まで台北には6回も出張しており、何回も食事を取っているのだが、なぜかここは行ったことが無かった。聞くところによれば、店の前には開店前から行列が出来ているという。どこにあるのか場所だけでも確認しておこう、と思って信義路沿いの本店を探した。
本店の前まで来てみたところ、意外なことに行列が出来ていない。時間は午前11時をちょっと回ったくらいだったと記憶している。これは、ひょっとしたら千載一遇のチャンスではないか。そう思った瞬間に、空腹感は全然無いにもかかわらず、僕は店内に入っていった。
店の入口は案外狭い。思ったより小さな店だ、などと思っていると、「4階に行ってください。」と指示を受けた。なるほど1フロアは狭くても4階建て(だったと思う。)であれば、かなりの客をさばける訳だ。4階まで階段で上っていったが、さすがにどのフロアも満席であった。4階の隅に2人用のテーブルが有り、そこに案内された。ちゃんと日本語で書かれたメニューがあり、日本語の話せるウェイトレスもいた。
鼎泰豊に来たからには小籠包を食べなければならない。なぜなら、この店を有名にしたのは小籠包だからである。まさに世界一有名な小籠包と言っても過言では有るまい。ウェイトレスに聞いてみると、一人前が10個入りで170NTドルだという。それだけで満腹になりそうだが、鶏肉スープも注文した。悩んだ末に台湾ビールも注文した。二日酔いがやっと抜けたところでまたビールを飲むという迎え酒状態だが、世界一有名な小籠包をビール抜きで食べるというのも失礼ではないか。
東京の浜松町に新亜飯店という小籠包で有名な店が有るが、ここの小籠包は、男性が口の中に入れるのがやっと、という大きさである。女性は箸で切らねばならず、中の肉汁がこぼれてしまう。男性限定の味と言えるかもしれない。ちなみに、ここの小籠包はものすごく熱い。その熱さは暴力的とさえ言える。これを一気に口に入れると肉汁の熱さに涙が出るが、ハフハフしながら食べると、次第に熱さに慣れて美味しさがわかってくる。ちなみに、何も知らない人にここの小籠包を一口で食べさせて、その熱がるリアクションを見て笑うというのが、この店の楽しみ方の一つである。僕の中で、究極の小籠包といえば、ここである。鼎泰豊は、新亜飯店よりもおいしいのだろうか。
注文してから意外に早く小籠包はやって来た。セイロの蓋を取ると、湯気が立ち上る。世界一有名な小籠包が、これだ。
世界一有名な小籠包
セイロの右が生姜入り醤油
手前は鶏肉スープ、左がビール
鼎泰豊の小籠包は、思っていたよりも小さかった。でも、これなら女性も一口で食べることが出来るだろう。皮を破らないように細心の注意を払って、小籠包を生姜入り醤油につけて口に入れる。噛み締めると、肉汁があふれ出てくる。確かに美味しい。新亜飯店ほど暴力的な熱さではなく、適度な熱さと言えようか。十分に美味しさを味わえる。日本の中華料理屋でよく出てくるパサパサして肉汁も出ない、ただ皮が熱いだけの小籠包とは比較にならない美味しさである。小籠包を飲みこんでから、冷えたビールを飲む。幸せだ。続いて二つ目の小籠包に箸を伸ばし、またビールを飲む。実に幸せだ。台北に来てよかった、と実感した。
ただ、惜しいのは、僕が一人で来てしまったことだ。いくら美味しい小籠包であっても、10個目ではさすがに冷めてきており、僕も飽きてきている。中華料理はやっぱり何人かで来て、いろいろな種類の料理を食べるべきである。他にも蟹入り小籠包やえび蒸し餃子などの気になるメニューが有ったが、残念ながら食べることが出来なかった。
十分に満足して店を出ると、店の前はごった返していた。さすが、鼎泰豊。午前11時30分には激混みである。僕が待たずに入れたのはラッキーとしか言いようがない。次に台北に行くときには、この店に何人かで来て、小籠包と他のメニューを食べてみたいものだ。
順番を待つ人々
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