このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください


1−3. 親知らず抜歯(左下)編

 2001年10月11日。ついにその日がやってきた。
 前回の右上は結構あっさり抜けたが、今日はついに左下を抜くのだ。左下の親知らずはもちろん横に生えている。本当は先々週だったのだが、抜いてすぐに南アフリカ出張になってしまうと、現地で痛んだときに対処しようがない。ということで南アフリカから帰ってきてから抜くことにしたのだ。僕の恐怖心がいかに大きいか、また最初に右下を抜いたときの記憶がいかに深刻なトラウマになっているか、ご理解いただきたい。
 予約をするとき、女医さんにこのように言われていた。
 「まあ、一時間くらいはかかるかもしれませんよ。」
 今日の予約は14時30分だ。会社からは歩いて5分くらいの距離であり、遅くとも16時には戻ると周囲に説明し、歯医者に向った。

 14時30分に歯医者に着いたところ、そのまま治療室に通された。女医さんの説明によれば、今回はドリルで歯を粉砕すると言う。前回のハンマーほどの衝撃はなさそうだ。女医さんのほかに助手も一人と言うVIP対応だ。麻酔を打ってから、女医さんのドリルがうなりを上げた。
 一時間くらい経過しただろうか。ふと、椅子が起きあがった。自分の歯の破片がいくつか皿の上に乗っているのが見えた。終わったのかな、などと思っていると、女医さんがこう言った。
 「レントゲンを撮りましょう。」
 よくわからないまま、歩いてレントゲンを撮った。写真を指差して、女医さんがこう言った。
 「もう大部分抜いたんですけど、ここに2つ破片が残っています。今からこれを抜きます。」
 なんと、まだ終わりではなかった。しかも麻酔が切れ始めてきていたため、その日2回目の麻酔を打った。

 さらに1時間が経過した。僕の左下あごには依然として破片が1つ残っていた。いつのまにか助手が2人に増えていた。なんでもあごの骨と歯がくっついているのでペンチが入らず、ドリルで少しずつ削っていくしかないという。そんな説明はいいから、お願いだから早く抜いてほしい、と思っていたその時だ。ついにベテラン女医がやってきた
 僕の顔の上にはタオルが掛けられているので視界はさえぎられているが、ドリルを担当するのがベテランのほうに切り替わったのは認識できた。ベテランは数分ドリルで削った後、今や助手となった女医にこう言った。
 「メス。」
 ベテランは僕の歯茎を切り開いているようだ。そして数分後。
 「今からハンマーで叩きます。」
 やっぱり今回もハンマーだった。脳髄に衝撃が響き渡った。

 ハンマーが最後の一撃となり、唯一残っていた破片も抜けた。それから歯茎を縫い、全ての治療が終わったのが17時15分だった。一本抜くのに2時間45分掛かった計算になる。帰り際、女医さんにこう言われた。
 「今回は歯茎を切って、下あごの骨もちょっと削ったので、
明日は絶対腫れます。
 明日の朝、僕はどんな顔になっているのだろうか。

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