このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください


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. 恐怖のカード犯罪(その2)
 「虎羽さん、JRからお電話です。」
 AAAカードからの電話から10分ほど経ってから、その電話はかかってきた。以前所属していた部のほうにかかったため、3列離れた席にいる女子社員がその電話を取った。彼女は何の配慮も無く、大声で僕に呼びかけた。僕の周囲で失笑が漏れる。上司までにやにやしている。なぜなら、僕が鉄道マニアということは部員の誰もが知っていることだからだ。この人は仕事もしないで鉄道旅行のプランなんか立てている、きっと切符の予約だわ、まったくしょうがない人ね、などと部員一同が誤解したに違いない。ただ、僕には思い当たる節が有った。
 「もしもし、お電話替わりました。虎羽です。」
 「JRのMです。失礼ですが、当社のカードにて本日☆☆☆(家電量販店)で買い物をされましたか?」
 「いえ、買ってません。」
 「そうですか、実は本日12時30分頃、☆☆☆の###店で30万円の実績が上がっております。ビジネスマンの方が平日昼間に家電製品を30万円も購入するとは考えにくいため、当社のシステムでチェックが入りました。」
 「そうですか、先程実は同じような内容の電話が別のカード会社からも有ったのですが。」
 「え、失礼ですが、どちらのカード会社ですか?」
 「AAAカードです。」
 「もし、そうであれば、持っているカードの会社に全部電話をかけて確認することをお薦めします。ところで、本人の確認をしたいのですが、現在当社のカードはお持ちですか?」
 「はい。 (以下省略)」

 JRとの電話を切った後、僕はカード会社と銀行に掛けたが、被害はこの2件だけであった。被害と言っても、金銭の負担はない。新しいカードが届くまでの約1ヶ月間、クレジットカードが使えないということだけである。
 どこかの誰かが僕のカードを偽造して使用したのは間違い無い。腑に落ちないのはどこから僕のカード番号を盗み出したのか、ということだ。1枚であれば、適当なナンバーを書いてカードを作り、崩した文字でサインをすれば店員を欺くことはできるかもしれない。
 しかし、2枚となると話しは別だ。犯人は僕の持っているカードの種類とその番号を両方とも把握していることになる。つまり、カードの関する僕のデータを完璧に把握しているかもしれないのだ。確かにAAAカードは使用頻度が高い。インターネットで本や株を買うときに入力するのはこのカードである。このカードだけが偽造されたのであれば、インターネットで入力した情報がどこかに漏洩したのではないかと推測される。一方、JRの方は切符購入時以外に使用したことは無い。このカードはJRの駅でしか使用しないため、インターネット取引にも使用したことはない。このカードの番号は入手困難なはずである。
 僕のカードを偽造した犯人が入手したデータは、はたして何だったのだろうか。カード会社は自分のカードを持っている会員の名簿はあるが、その会員が他にどの会社のカードを持っているか、と言うことを把握することは出来ないはずである。カード協会のような組織があり、個人が所有するカードの種類と番号をその組織が一元管理しているのだろうか。
 さらに恐ろしいのは、この犯人はいったい何人のデータを持ち出したのだろうか、ということだ。まさか僕だけということはあるまい。カード会社が被害を負担するのかは分からないが、被害総額はかなりの額になってしまうかもしれない。きっと航空券は金券ショップで換金され、家電製品も売られたか、自分で使用していることだろう。

<教訓>
1. クレジットカードは、たとえ所持人が紛失していなくても偽造されることがある。今回は犯人が派手な買い物をしたためにチェックに引っかかったが、これが航空券1枚であれば見逃されていたかもしれない。したがって使用明細書は念入りに確認すること。

2. カード会社は個人の実績を完全に把握している。そして何か異常な買い方があったらすぐにチェックが入るようなシステムを構築している。今回犯人が偽造カードを使用してから、2時間以内に僕に通知が入った。もちろんデータ管理は厳重なはずだが、もし何らかの形で漏洩してしまった場合、そこには個人の生活が克明に記載されていると考えたほうがよい。

3. クレジットカードだったので金銭の被害は無かったが、これがキャッシュカードだったらどうなっていたのだろうか。見知らぬ口座に勝手に振り込まれるという事態が発生したかもしれない。その場合、偽造カードで振り込んだ金額を銀行が返金するというのは考えにくい。


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