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22. カツラボクサー(その1)
Yahoo!のトピックスに次のようなニュースが載った。
小口 ヅラずるり…相手も脱帽
セミファイナルのSフェザー級8回戦で前代未聞の珍事が起こった。小口雅之(28)=草加有沢=が着用していたカツラが試合途中にずれまくり、リング上で思わぬ“カミングアウト”。5回からカツラを外し、邪念も消えた小口は怒とうの猛ラッシュし、力強い連打で柴田を追い込み、見事7回TKO勝ちを飾った。
“異変”は3回途中から。頭頂部を覆う形のカツラが、相手のパンチをもらうたびにフワリ、フワリと浮き上がる。リング上のかつてない光景を“聖地”のファンはかたずをのんで見守った。4回には一層、ずれ具合が顕著となり、ついに4回終了後にトレーナーがカツラを取り外した。一瞬の間を置き、会場から「その方がかっこいいぞ」との声援が飛び交った。
小口は普段は丸刈りで、カツラを着用したのはこの試合が初めて。「3ラウンドあたりから浮き出して落ち着かなかった。次はもうつけません」と恥ずかしそうに苦笑い。日本ボクシングコミッションは、リング上ではシューズ、トランクス、ノー・ファウル・カップ以外の着用は認めていないが、今回は「悪意のないもの」と判断し“特例”として認められた。(デイリースポーツ) - 12月14日11時17分更新
なんとしても映像を見たいと思っていたところ、本日(2005年12月17日)のブロードキャスターで放送された。これは、カツラをかぶってリング上で激戦を繰り広げた、ある勇敢な戦士の記録である。
<第1ラウンド>
2005年12月13日(火)。ボクサーの聖地、 後楽園ホール でスーパーフェザー級8回戦が行われた。僕は取引先と一緒に何回か後楽園ホールに行ったことがある。華やかで50,000人を集める東京ドームのすぐ隣に、収容人員2,000人ほどの小さな後楽園ホールは立っている。殴りあう音が暗い会場に響き、怒号や歓声、溜息が混じる独特な雰囲気である。
そんな中、小口雅之と柴田大地の試合が始まった。白いトランクスが「カツラボクサー」の小口である。
この試合は、小口の田舎から親族が見に来ていた。孫の晴れ姿を見たおばあちゃんは大喜びだ。
一方、相手の柴田は戸惑っていた。数ヶ月前に見た小口は坊主だったからだ。「髪が伸びるのが早いんだな。」と柴田は思ったという。
<第2ラウンド>
第1ラウンドは乗り切った小口だったが、第2ラウンド途中で柴田の左フックがヒット。カツラがめくれてしまった。この後、小口はカツラが取れるのが気になり、クリンチを避けた。柴田は「接近戦を嫌がっている。」と考えていた。
<第3・第4ラウンド>
髪ではなく、かつらを振り乱して戦う小口だったが、どうしても頭上が気になって集中できない。小口のフットワークは重いが、頭上のかつらは華麗に舞う。第3・第4ラウンドは防戦が中心になってしまった。
トレーナーはハラハラしていた。かつらがリングに落ちてしまうと、負けになってしまうからだ。せめて、このラウンドが終わるまで、かつらよ持ち応えてほしい、とトレーナーは祈った。
<第4ラウンド終了後>
トレーナーが苦渋の決断を下した。
「今から、おまえのかつらを取る。」
<第5ラウンド>
柴田は、ニュートラルコーナーから出てきた小口を見て驚いた。前のラウンドまで髪が生えていたのに、ゴングが鳴ったらいきなり坊主になっていたからだ。
一方、邪念を捨てた小口は、目の前の敵に集中した。
<第6・第7ラウンド>
第6・第7ラウンドは壮絶な殴り合いとなった。判定では負けてしまうと感じた小口は、KO狙いで猛然と攻める。そして、第7ラウンドについにTKO勝ち。勇敢な戦士の、戦いは終わった。
<試合後>
小口は反省し、もうカツラは付けないという。「カツラボクサー」として売り出してほしかっただけに残念である。カツラが何ラウンドまで持つか、毎試合見に来るファンも出来たに違いない。
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