１１．　街かどカラオケ族　　


　　この番組を記憶されている方はおそらく少ないと思う。ではなぜこの番組をここでご紹介するのか。それは、僕が今までの人生で一番大きくテレビに映ったからである。


　　１９９１年９月４日（写真で確認）。街かどカラオケ族が、僕の家から自転車で１０分の距離に有る忠実屋というデパートにやってきた。この番組は司会が素晴らしい組み合わせである。なぎらけんいちと松居直美だ。なぎらけんいちといえば、「いっぽんでもニンジン」（作詞前田利博・作曲佐瀬寿一）である。彼が主張するところによれば、「およげ！たいやきくん」と「いっぽんでもニンジン」は両Ａ面だ。僕はこのレコードを持っているのだが、ジャケットを見てみると、確かに両Ａ面の形式を取っている。ちなみに歌詞カードは子供が対象なので、ひらがなとカタカナのみで記述されている。「およげ！たいやきくん」のレコード売上は確か４５０万枚前後と記憶しているが、そのうち半分とは行かないまでも、四分の一程度は「いっぽんでもニンジン」が貢献していると言えるだろう。したがって「いっぽんでもニンジン」だけでもミリオンセラーになったかもしれない。

　　これはなぎらの若い頃の話である。フォークシンガーだった彼はご多分に漏れず金が無く、さらに友達も金が無かった。ある日、みんなの有り金を全部合計しても１，０００円にしかならないという緊急事態が発生した。このままではみんな餓死してしまう。そのとき、なぎらの友達がすっくと立ち上がった。「みんな、俺に任せてくれ。」と言い残して彼はみんなの金を持って出ていった。待つこと一時間、彼は一冊の本を買ってきた。なぎらと友達は激怒した。本なんか腹の足しにもならないではないか。いやに自信たっぷりの彼は本のカバーを取った。タイトルにはこう書いてあった。
「食べられる野草図鑑」
なぎらと友達はみんなで近所の河原に出かけ、食べることが出来そうな野草を摘んではその図鑑で判定し、一週間以上食いつないだと言う。


　　そのなぎらとコンビを組む司会が松居直美である。彼女の代表曲と言えば、やはり「微妙なとこネ」（１９８３年発売）であろう。作詞売野雅勇、作曲井上大輔というゴールデンコンビだ。自慢ではないが、僕はこのレコードも持っている。ジャケットが松居直美のシールになっているところがファンの心理をくすぐる。それもあごの下で指を組み合わせる典型的なアイドルポーズだ。シールを下敷きに貼って学校に持っていった少年が何人もいたかと思うと感慨深い。ジャケット裏でファンクラブ会員の募集もされている。会員数が何人いたのか、いつまで存続していたのか、気になるところだ。初期の欽ドン出演時とその後のバラドル化してからではファン層が違うと推測されるので、世代間格差は無かったのだろうか、など興味は尽きない。

　　司会の二人の紹介でつい熱が入ってしまったが、当日僕は高校のバレー部の友人Ｎ君と二人で見に行った。N君は２枚組ライブＣＤを持っているくらいのなぎらファンなので、生でなぎらを見ることが出来て大満足の様子であった。僕も生で松居直美を見ることが出来て大感激だ。その日のゲストは藤あや子だった。まだマイナーで紅白にも出ていなかったが、やはりプロはうまいと感じたものである。審査員がつのだ☆ひろと平山みきという濃すぎる組み合わせだ。この５人がステージ上で並んでいる写真は僕の一生の宝物である。
　　この番組は生放送だったため、家に帰ってビデオを早速チェックした。最初のほうから客席にちらちらと映っているのが確認できた。そして、あるおじさんが「憧れのハワイ航路」を歌っているとき、ついにＮ君と僕が画面で大映しになった。おじさんの歌に合わせて手拍子を取る幸せそうな大学生二人。あまりにも馬鹿面だ。自分の顔をテレビで見るというのがこんなに恥ずかしいとは思わなかった。それでも自慢したくて両親と妹にも見せたが、やはり苦笑していた。


これが僕の一生の宝物だ。撮影Ｎ君。

左から、当時独身の松居直美、ミリオンセラー歌手のなぎらけんいち、代表曲「メリー・ジェーン」のつのだ☆ひろ、
いつも黄色い服の平山みき、まだ紅白にもでていなかった藤あや子。




　　ご参考まで、その他の僕の出演記録をご紹介したい。
　　１９９２年。この年はなぜかテレビに連続して映る機会があった。まず４月に当時ＮＨＫで放送されていた「クイズ百点満点」に出た。これは大学の友達のつてで参加したものである。今フジテレビで「めざましテレビ」を担当している大塚範一アナが司会であった。会場にいる百人の大学生がクイズに答えていって、間違えると帽子を脱いでいくと言う形式である。僕が出た日は「アメリカ大統領選挙」の特集だった。この番組は生放送だったので、夕方６時くらいにＮＨＫ集合だったと記憶している。テレビ映りを一応意識して、集合前に床屋に行ったのだからお恥ずかしい。このときは一問目でいきなり間違えてしまった。家に帰ってビデオを確認したところ、帽子を取った姿で画面に映っていた。

　　２回目は６月だ。就職活動の真っ只中で多忙な時期だったにもかかわらず、マスコミを志望している友達から話があったのでつい行ってしまった。その友達によれば、今度こういう番組をやるから観客として学生を何人か集めて欲しい、という依頼をＯＢ訪問で会った先輩から受けたとのことである。行ってみたところ、ジャズを聞くという番組であった。家に帰ってビデオで確認したところ、神妙な顔つきでジャズを聞いている姿が画面に映っていた。

　　３回目は８月のウルトラクイズだ。後日ビデオで確認したところ、非常に小さいものの、なんとか自分と確認できるようなサイズで映っていたように記憶している。ところが、この間実家に帰ってビデオを見なおしたところ、どの部分で映っていたかすっかり忘れてしまっていた。何度か見たのだが、自分の姿を発見できなかった。
　　
　　会社に入ってからテレビに映ったことはない。いつの日か、インタビューでも受けて音声を電波に乗せてみたいものだ。