このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください

24. 明日があるさ  

 僕にしては珍しくシングルを購入した。ウルフルズの「明日があるさ(ジョージアで行きましょう編)」だ。オリジナルとは異なり、家庭を持つサラリーマンの応援歌となっている。吉本興業のお笑い芸人が大勢出演しているジョージアのCMで使用されている曲だ。僕はサラリーマンとしてあのCMを気に入っている。
 もちろん僕はオリジナルも所蔵しているので、10年以上も前からこの歌には注目していた。オリジナルは坂本九のアルバムに収録されている。作詞・作曲は豪華な組み合わせだ。

作詞 : 
青島幸男 「スーダラ節」、「ハイそれまでョ」
作曲 : 
中村八大 「上を向いて歩こう」、「笑点のオープニング」

 オリジナルの歌詞は、好きな子になかなかアタックできない男子高校生を爽やかに描いたものである。歌詞は6番まである。1・2番では声を掛けることも出来ず、遠くから見つめるのみ。3番では下校する女の子の後をつけるというストーカー行為に出るが思いとどまり、4番で電話作戦に切り替える(思いきってダイヤルをふるえる指で回したよ、という歌詞が時代を感じさせる)。5番では喫茶店に行くまで進展するが、6番でも「いつかきっとわかってくれるだろう」ということで、正式合意には至っていないようだ。それでも若い僕には夢がある。明日があるさ。

 実に共感できる歌詞である。このような歌詞を書く人が、「チョイト1杯のつもりで飲んで」というスーダラ節を書くのだから世の中わからないものだ。この「明日があるさ」は1963年の曲だが、同じ年に青島幸男は
「ホンダラ行進曲」を書いている。「一つ山越しゃ ホンダラダ ホイホイ もう一つ越しても ホンダラダ ホイホイ」というナンセンスについて歌ったという名曲だ。作曲は萩原哲晶というゴールデンコンビで、歌はもちろんハナ肇とクレイジー・キャッツである。1番植木等、2番ハナ肇、3番谷啓、4番全員という順番で歌っている。
 大滝詠一によれば、クレイジーの全盛期は1961年から65年までとなっている。その間に青島−萩原コンビが世に送り出したクレイジーソングは以下のようなラインナップだ。

61スーダラ節 & こりゃシャクだった
62ドント節 & 五万節
ハイそれまでョ & 無責任一代男
これが男の生きる道 & ショボクレ人生
63いろいろ節 & ホンダラ行進曲
どうしてこんなにもてるんだろう
ホラ吹き節
64だまって俺について来い
65ゴマスリ行進曲
遺憾に存じます & 大冒険マーチ

 クレイジーソングは両A面の色彩が強い。上の表で「&」が付いているのが両方とも青島−萩原コンビ、付いていないのがもう片方の曲を別の作詞家(塚田茂など)もしくは作曲家(山本直純)が担当している場合である。このように表にしてみると名曲の多さに驚嘆せざるを得ない。「わかっちゃいるけどやめられない」という
「スーダラ節」の歌詞は親鸞の教えに通ずるものがあるという。「ドント節」は高橋克典が「そんな気楽な稼業じゃないっすよ!」と熱くシャウトするマグナムドライのCMで使用されていた。ムード歌謡風の暗いイントロから「てなこと言われてその気になって」の歌詞と共にアップテンポに切りかえる「ハイそれまでョ」はその転調に次ぐ転調が日本ポップス史上の傑作と評価されている。「遺憾に存じます」はBeatlesの「I want to hold your hand(邦題:抱きしめたい)」と同じイントロで始まるという実験的作品だ。クレイジーは日本史上に残るコミックソングを多数残したが、その存在はコミックバンドをはるかに超越している。
 
 思わず熱くなってクレイジーについて書いてしまったが、話を戻したい。坂本九といえばやはり
「上を向いて歩こう」だ。永六輔・中村八大・坂本九の六八九トリオの最高傑作だ。後世に残したい曲でかならずランクインする。そのほかの六八九トリオの曲と言えば「一人ぼっちの二人」、「あの娘の名前はなんてんかな」などがある。
 坂本九といえば他に有名な曲といえば、定時制高校の青春を歌った
「見上げてごらん夜の星を」があるが、これは作詞:永六輔、作曲:いずみたくである。また、「涙くんさよなら」は作詞・作曲浜口庫之助である。
 いずみたくは
「夜明けのスキャット」(由紀さおり)「太陽がくれた季節」(青い三角定規)浜口庫之助は「黄色いサクランボ」などで有名だ。
 
永六輔以外の方は皆亡くなられたが、残した名曲は歌い継がれていく。
次にカラオケに行かざるをえなくなったときには、「明日があるさ」だ。今までは曲目リストに入っておらず、歌ったとしても誰も知らないという悲しい状態であった。今度ヒットしたことで全カラオケ会社が取り上げるのは確実だ。歌わざるを得なくなったときはこの歌で数年は逃げ切れそうだ。



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