このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください

与謝野晶子の歌碑


温海温泉

温海温泉「萬国屋」 の前に、与謝野晶子の歌碑がある。


さみだれの出羽の谷間の朝市に傘して売るはおほむね女

 与謝野晶子歌集白櫻集よりの1首である。

 昭和10年6月30日、温海温泉を訪れ、名物朝市風景を詠まれたものである。他にも「長岡に今朝雨を聞き夕べには出羽の温海の吊橋を行く」等、10首ほど詠まれている。(下手の橋は当時吊橋であった)

 平子恭子編著『年表作歌読本与謝野晶子』によれば、与謝野晶子は6月28日に上野を発ち、長岡に2泊、30日出雲崎に1泊、温海温泉を訪れたのは7月1日で、海老屋に1泊して翌日帰京している。

越より出羽へ

長岡に今朝雨を聞き夕には出羽の温海の吊橋を行く
吊橋を吹きてはかなし庄内も近きさかひの山の夕風
朝市の初まりぬとて起されぬほととぎすなど聞くべき時刻
さみだれの出羽の谷間の朝市に傘して賣るはおほむね女
我が借れる湯治座敷も窓あれど暗しいではの山のさみだれ
二日して湯の香混りの五月雨に馴れし出羽の温海山かな
ほととぎす通ふに足らん御空をば上に残せる出羽の夏山
出羽とて北の空のみ明るきも慣ひ變れる山の湯の宿
湯場の屋根濡れて光れば岩燕岩と見なして遊ぶさみだれ
温海の湯色を變ふてふ浴む身に随ふならば悲しからまし

短歌雑誌『冬柏』第6巻・第7号(昭和10年7月発行初出)

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