このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください |
高村光太郎ゆかりの地
「智恵子抄詩碑」
人つ子ひとり居ない九十九里の砂浜の | |
砂にすわつて智恵子は遊ぶ。 | |
無数の友だちが智恵子の名をよぶ。 | |
ちい、ちい、ちい、ちい、ちい—— | |
砂に小さな趾あとをつけて | |
千鳥が智恵子に寄つて来る。 | |
口の中でいつでも何か言つてる智恵子が | |
両手をあげてよびかへす。 | |
ちい、ちい、ちい—— | |
両手の貝を千鳥がねだる。 | |
智恵子はそれをぱらぱら投げる。 | |
群れ立つ千鳥が智恵子をよぶ。 | |
ちい、ちい、ちい、ちい、ちい—— | |
人間商売さらりとやめて、 | |
もう天然の向うへ行つてしまつた智恵子の | |
うしろ姿がぽつんと見える。 | |
二丁も離れた防風林の夕日の中で | |
松の花粉をあびながら私はいつまでも立ち尽す。 |
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