このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください |
江見水蔭 (えみ・すいいん) 1869〜1934。 |
『悪因縁の怨』 (青空文庫) |
短編。羽田の弁天様を参詣した旗本・六浦琴之丞は、川船の女船頭・お玉と出会い、恋に落ちる。しかし、お玉の父親が海賊・竜神松五郎であったことが分かり、琴之丞は落胆する。何とかして琴之丞とお玉を夫婦にしたい中間の市助は、知恵を絞るのだが…。「お前さんは実に偉い。智慧者(ちえしゃ)だねえ」──。敵同士の恋愛の悲しいてん末。この際、ハッピーエンドで良かった気もするけど…。 |
『怪異暗闇祭』 (青空文庫) |
短編。府中の暗闇祭で起きた、男の鼻がそぎ取られ、女の尻が斬られるという怪事件。不思議と夜目が利く剣士・小机源八郎は、やはり夜目が利く掏摸(すり)の七三郎と、さらにもっと夜目が利く山伏の大滝院泰雲と共に、暗闇の中、犯人を捜すが…。「や、いくら夜目が利くからって、お前さん達は本統の目先が利かねえのだから駄目の皮だ」。それぞれ夜目が利くようになった経緯がちょっと面白い。 →岡本綺堂「半七捕物帳68・二人女房」 →久生十蘭「顎十郎捕物帳23・猫眼の男」 |
『怪異黒姫おろし』 (青空文庫) |
短編。越後高田の松平家に恨みを持っている十四歳の美少年・滝之助は、信州黒姫山の埋蔵金を探している洞斎老人から、霧隠れ雲隠れの秘薬を伝授される。江戸へ向かう松平家の行列を付け狙う滝之助だが…。「何んとかして敵(かたき)を討つ! 怨恨(うらみ)を晴さいで措(お)こうかッ」──。乱心で有名な松平忠直の妻で、二代将軍・秀忠の三女である高田殿が“敵役”で登場して興味深い。 →菊池寛「忠直卿行状記」 →野村胡堂「大江戸黄金狂」 |
『死剣と生縄』 (青空文庫) |
短編。剣の修行のため、常陸国・阿波村の大杉明神までやって来た旗本の次男・磯貝竜次郎だが、女侠客“生縄のお鉄”に捕まり、囚虜(とらわれ)の身となってしまう。お鉄から特別に江戸へ行くことが許された竜次郎は、途中、美人軽業師・小虎と道連れになり、利根川の渡し場まで来るが、無慈悲な悪僧に行く手を阻まれてしまう…。「それに最(も)一つ私は念を押して置きますよ。久々で江戸へ帰ったとて、女という女は、どんな女とでも、仲良くすると承知しませんよ」──。大年増の猛烈な嫉妬心が恐ろしくて面白い。女は強し! |
『女房殺し』 (電子文藝館) |
短編。逗留先の逗子で出会った少女・お柳(りゅう)を見初めた天文家志望の青年・堅吉。彼女の身上を知り、衝撃を受ける堅吉だが、それを承知で結婚を決める。お柳と彼女の祖母・お美代を養うため単身、日本を離れる堅吉だが…。「お柳さん、僕はもう極めた。お前を引取る事に極めた。何んにも言はずにお前を女房にするだけそれほど僕はお前を思うて居るんだから、其つもりでお前も来て呉れねばならぬ。そんな事もあるまいが、僕の家へ来てから萬一の事があったなら、好いか、そんな事は決してあるまいが、僕ア了簡仕ないよ」──ラストシーンの臨場感はなかなかのもの。個人的には敵役である参事官・薄井への復讐もありかなと。著者の代表作。 |
『備前天一坊』 (青空文庫) |
短編。備前岡山藩主・池田光政の落胤(らくいん)だと名乗る浪人・小笠原金三郎を、タダで宿泊させる旅籠屋の主人・半田屋九兵衛。金三郎が出世することを見越して、娘のお綾と金三郎をくっつけてしまおうと企む九兵衛だが…。「でも、確かに拙者は落胤で、証拠の脇差も持参の事故(ことゆえ)」──。有名な“天一坊(てんいちぼう)”とは違い、こちらは本当の落胤だというところがミソで面白い。 →直木三十五「大岡越前の独立」 →浜尾四郎「殺された天一坊」 →山本周五郎「長屋天一坊」 |
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