このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください

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岩野泡鳴 (いわの・ほうめい) 1873〜1920。


醜婦  (電子文藝館)
短編。「もしあの人と二人ッ切りでさし向いになるをりがあれば、もッと情愛を見せて呉れるだろうに」。人付合いが苦手で家に引きこもっている京子。そのことで母や弟夫婦(信一と政子)は手を焼いている。実は、妹・勝子の亭主に好意を抱いている京子は、妹の嫁ぎ先である房州へたびたび遊びに行くのを楽しみにしていたのだが…。「房州は、ね、ねえさん、お勝がかたづいて行ったところで、あなたが行ったのぢゃアありませんよ」──。月に一、二度しか風呂に入りに行かない縁遠い京子の、どこまでも自分本位な性格が面白い。

耽溺  (青空文庫)
中編。
「これからは、あなたの、め──か──け」。国府津にある料理店「井筒屋」の芸者・吉弥(きちや、本名・渡瀬菊子)にすっかり耽溺(たんでき)した僕(作家・田村義雄)。井筒屋をやめて東京に帰りたがっている彼女を女優にしようと熱心になるが、吉弥を自分のものにしたがっている男たち(古道具屋の青木や、銀行員の田島、区役所の野沢)の存在もあって、なかなかうまく事が運ばない。成り行き上、彼女を身請けすることになった僕は、お金の工面など、妻・千代にさんざん心労をかけた末に…。

「あなたは色気狂(いろきちが)いになったのですか?——性根が抜けたんですか?——うちを忘れたんですか? お父さんが大変おこってらッしゃるのを知らないでしょう?——」
「………」

中年男の卑小な現実を描いて超おもしろい。自然主義小説の秀作。

猫八  (青空文庫)
短編。寄席を終えて長屋へ帰宅する途中、知人の高見さんに誘われ、文士たちの研究会に呼ばれた、動物啼き真似で人気の芸人・江戸屋猫八。題目となった久米正雄の短編「虎」が、まるで自分のことを描いたような内容で、主人公の動物役者に共感を覚えるが…。「君がそういうことをするようになった動機を聴きたい、ね」、「動機と申しますと——?」、「まア、言ってみれば、初まりの思いつき、さ」、「なるほど、な。——わたくしはこれでも初めから百姓、いや、ドン芸人じゃアございません」──。芸人の悲哀を描いて印象に残る。
→久米正雄「虎」



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