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加能作次郎 (かのう・さくじろう) 1885〜1941。


乳の匂い  (青空文庫)
中編。京都の伯父の家で丁稚として働き始めた私(十三歳の少年)は、伯父の養女であるお信さんの優しい真実な思いやりに触れて、肉親の姉のように思慕し、また異性としての意識も芽生える。元は乞食の子という哀しい生い立ちのお信さんは、出張で京都にやって来る逓信省の技師・森田との子供を産んだため、伯父から勘当されていた…。「治らはったか」、「へえ、おおきに」、「よかったえな。これで顔をお拭きやす」──。あの眩(まばゆ)く、微笑ましい“最後の別れの夜”の場面で、この小説が終わっていたらと、どんなにか思ってしまう…。好編。

厄年  (青空文庫)
中編。「然り身体が大切だ、だから帰郷したくないのだ、妹が肺病だ、伝染したら何うする?! 己は今年は二十五の厄年(やくどし)だ、ひょっとすると伝染するかも知れぬ、恐しい!」──。夏季休暇で京都へ遊びに行こうかどうか迷った挙句に、田舎の村へ帰省した東京の学生・平三。肺病で死にかかっている義妹・お桐(継母の子)に対してあまりに冷淡であったと悔恨するが…。「あい、妾(わたし)も早う死にたい、こんなに世話して貰うて治られんのなら、一日も早く楽になりたい、先に行って居るさかい、お前様達は後から来てくんさいませ」──。肺病で苦しむお桐の姿が悲痛すぎる。一連の自伝的作品の一つ。

世の中へ  (青空文庫)
長編。
「これから世の中へ出るのだ。どんな運命が自分を待って居るだろう?」──。京都で事業をしている伯父を頼って、能登の片田舎から一人出て来た十三歳の少年・恭三だが、学問をしたいという望みもかなわず、丁稚(でっち)として働かされる…。子供の時分から手に負えない暴(あば)れ者だったという事業好きの伯父と、本妻(お文)を押しやって家を切り盛りするお雪(伯父の妾)との寂しく冷やかな生活の中で、肉体的にも精神的にも成長していく恭三の姿を描いた私小説。
恭三が恋心を抱く看護婦の藤本さんや、生い立ちの不幸な伯父の養女・お信、伯母の家で奉公している姉・お君など、登場する女性たちの“現実”が描かれていて印象に残る。養女・お信については中編「乳の匂い」に詳しい。



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