このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください

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岸田国士 (きしだ・くにお) 1890〜1954。


浅間山  (青空文庫)
短編。戯曲。浅間山の麓で土地開発をしている父・丹羽州太と、東京の青年と婚約した娘・二葉。温泉を掘り当てた州太は、事業が軌道に乗り始めたかと思われ、二葉も婚約者とうまくいっているかと思われたが…。「やっと、わかったわ。お父さんは、あたしを…あたしを…此処まで…」、「そうだ。お前を一緒に連れて行きたいんだ」。上辺ではうかがい知れない、父娘の心の苦しみを描いた衝撃作。

運を主義にまかす男  (青空文庫)
短編。戯曲。郊外の借家で共同生活している貧乏・無職な二人の青年・底野と飛田。底野は「果報は寝て待て」主義(就職難を口実に部屋で寝転んでいる)を、飛田は「犬も歩けば棒に当る」主義(好機を求めて外を駆け廻っている)を毎日実行しているのだが…。「犬は、歩かずに寝ていても棒に当るんだ。万歳」、「果報は歩きながら待てだ。万歳」。訪問者とのやり取りも楽しい愉快なコメディー。

温室の前  (青空文庫)
短編。戯曲。温室で草花を作って暮らしている兄・大里貢と妹・牧子。友人・西原敏夫と高尾より江が遊びに来てくれたことで、変化のない兄妹二人っきりの暗い生活に希望の光が射すが…。「より江さんがおれの細君になり、西原がだよ、お前の旦那さんになってくれてさ、そういう二組の新しい生活が始まるとしたら、お互に、よろこんでもいいじゃないか」。やるせない閉塞感・寂寥感を描いて現代的。

髪の毛と花びら  (青空文庫)
短編。盲学校での勤務の傍ら、自宅で鍼(はり)とマッサージをしている盲目の青年・佐伯歳男と結婚した美津子。小説の点字化に打ち込んでいる歳男の手伝いをするなど、張りのある生活を送る美津子だが、若い警官・藤岡重信が治療を受けにやって来て…。「一度だけ、ね、一度だけ……」、「いけないわ、そんなこと…ほんとに、それだけはゆるして……」。見栄坊と自惚れ屋の夫婦を描いた悲劇。

記憶のいたづら  (青空文庫)
短編。妻の順子が急に産気づいた。駅前の看板で「産婆大野登志」の名を知っていた鈴村博志は、急いで産婆さんに来てもらい、無事に妻は女児を出産する。鈴村にとって「オオノトシ」という名前は、小学生の頃に近所に住んでいた綺麗なお姉さんと同名であり、とても懐かしい思い出であった…。「じゃ、その後、なんですか、ずっとおひとりで……?」──。平穏ならざるラストがいい感じで面白い。

喧嘩上手  (青空文庫)
短編。戯曲。展覧会に出品された漫画で、名誉を傷つけられた映画女優・天城更子。漫画家・三堂微々を相手取り損害賠償の訴えを起こすが、この事件を機に、三堂には漫画の依頼が殺到し、更子の映画も大ヒットして…。「この次ぎ、こんなことをしたら、只ではすましませんぞ」、「へえ、何ができるの、あんたに?」、「また、漫画に描いてやる」、「ふん、もう免疫ですよだ」──。面白くて素敵な喜劇。

この握りめし  (青空文庫)
短編。群馬県のN村に駐在している青年巡査の増田健次は、職務に忠実で、評判のいいお巡りさんだ。旅館の主人から、一ヶ月もの間、無銭宿泊している貧乏画家・岡本弘について相談を受けた彼は、岡本に会って話を聞くが…。「あの握り飯……おれはあんな握り飯がこの世の中に在ることを、すっかり忘れていたんだ」──。同い年である二人の青年の胸襟を開いた交流を描いて素晴らしい。

五月晴れ  (青空文庫)
掌編。戯曲。大庭悠吉と空子の夫婦喧嘩の仲裁に乗り出した仲人の児玉的外。庭から大庭夫婦の会話を盗み聞きする児玉だが…。「あの爺さんのお蔭で僕は君と仲直りをする気になったんだ」、「仲直りなんかさせてくれって頼みやしないわ」、「児玉のお爺さんもいってたが、君は少し我儘すぎるよ」、「あいつ、そんなことをいった?」。“夫婦喧嘩は犬も食わぬ”とはまさにこのこと。楽しい喜劇。

沢氏の二人娘  (青空文庫)
短編。戯曲。一見地味な扮りをした姉は、何処となく朗らかで、妹はパッとした服装のわりに、冷たく取澄ましている──。独身の二人の娘(悦子と愛子)に対して放任主義を取っている元副領事・沢一寿だが、愛子に深刻な問題が持ち上がり…。「一に勇気、二にお金、三に時間よ。名誉心や、同情がなんになるもんですか」。放任主義の功罪と姉妹の確執を描いて、家族の問題を浮き彫りにした作品。

驟雨  (青空文庫)
短編。戯曲。妹・恒子が新婚旅行を途中で切り上げて帰って来たことに驚く朋子。デリカシィの欠片もない結婚相手に愛想を尽かしたのだという。離婚して実家に戻るという恒子を説得する朋子と朋子の夫・譲だが…。「こいつは、何かっていうと、僕の処へ来て、ねえ、あなた、どうしましょう…」、「うそばっかし…」。恒子を心配する中、皮肉にも朋子と譲の夫婦の問題が浮かび出てくる展開が面白い。

それができたら  (青空文庫)
短編。養狐場を営む星住省吾だが、戦争の影響で毛皮が売れなくなり、廃業を決断する。仕事の能率が悪い雇い人・為木音也に同情してきた星住は、やむなく為木に解雇を告げるのだが…。 「わしは、なんと言われても、暇を出されるような、わるいことをした覚えはねえだ」、「わるいことをした、なんて、誰が言った? 気に入らん、とも、言ってやしないぜ」──。この際、同情は禁物のようで…(笑)。

菜の花は赤い  (青空文庫)
掌編。国文学者の奥山恩は、妻・凜子に新しい日本語の言葉使いを提案し、実行するが…。「あなたの代りに、『な』、あたしの代りに、『わ』ね。これは、ちょっと面白そうだわ」──。結婚生活十年の間に知らず知らず生じた夫婦のひずみ…。皮肉なラストが面白い。



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