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甲賀三郎 (こうが・さぶろう) 1893〜1945。 |
『悪戯』 (網迫の「質より量」) (網迫の「質より量」(新館)) |
掌編。友人と自宅で将棋を指す私だが、彼の何気ない言葉にブチ切れて、彼を殺してしまう。庭に死骸を埋めた私だが、彼の手駒だった角と歩だけがなぜか紛失していることに気づく。死骸を掘り起こす私だが…。思わぬ形から犯行が露見してしまう犯罪心理小説。 |
『急行十三時間』 (青空文庫) |
短編。脅迫団の手口を真似て、高利貸を営む父親からまんまと大金を捲き上げた息子のAとAの友人である私。大阪にいるAに大金を手渡すため、夜行列車に乗車した私だが、知らぬ間に偽札にすり替えられてしまう…。向かいの座席に座っていた怪しい二人(五十くらいの頬骨の出た男と、七十近い白髪の老翁)のどちらかの仕業なのか? すり替え事件のとんだ顛末を描いたユーモア・ミステリー。 |
『蜘蛛』 (青空文庫) |
短編。突如として大学を辞め、専門外の蜘蛛の研究を始めた辻川博士だが、不注意から毒蜘蛛に咬まれて死んでしまう。辻川の研究室の始末を任された私(大学の助手)は、秘密の日記を発見するが…。辻川の同僚・潮見博士が研究室の階段から転落死した事件の真相と、円筒形の奇妙な研究室の驚愕の構造とは? 「眼だ眼だ。おそろしい蜘蛛の眼だ」。蜘蛛の恐怖を描いたホラー・ミステリー。 |
『血液型殺人事件』 (青空文庫) |
短編。毛沼博士が自宅の寝室で変死した事件の渦中に引き摺り込まれてしまった私(医学生の鵜澤憲一)。過失によるガス中毒死という毛沼の死因に疑問を抱いた私は、密室トリックを解明するが…。「二十二年以前(まえ)を思い出せ。なぜO×A→B?」。血液型を暗示した奇怪な脅迫状の謎と、長年に渡って競争関係にあった毛沼博士と笠神博士の奇しき因縁!──恋の三角関係の末の悲劇や、遺書による真相の告白など、夏目漱石の「こころ」をちょっと想起させる。血液型を巡る意外な結末が面白いミステリー小説の秀作。 |
『黄鳥の嘆き』 (青空文庫) |
中編。「そういえば、例の雪渓の発掘ですね。あれはどういう目的だったか、あなたはご存じありませんか」、「分りません。私はやっぱり頭が変になった所為(せい)じゃないかと思っているんですが——」。突如として乗鞍岳の雪渓発掘という無謀を始めた子爵・二川重明が、毒薬を飲んで自殺した。二川家の顧問弁護士だった父の日記や、重明の遺書を読んだ友人・野村は、二川家の出生や相続にまつわる秘密を知り、重明の自殺に疑念を抱く…。鉱山でも温泉でもなく、ましてや発狂でもない、意外なる雪渓発掘の目的とは一体? 日記や遺書、“講演速記”といった独白体を用いて描くことで文体が多彩となり、楽しく読み進めることができる。ミステリーの秀作。 |
『琥珀のパイプ』 (青空文庫) |
短編。暴風雨の夜、新築住宅で不可解な放火殺人事件が発生した。昨年起きた二つの事件(謎の男の奇妙な万引事件と、白昼宝石強盗事件)との関連は? 水銀を利用した犯行トリックを見事に解明して見せた青年記者・松本順三だが…。「松本さん、あなたは恐るべき方じゃ、あなたのような方が我が警察界に入って下されば実に幸いですがなあ」。三つの事件の意外な真相がめちゃ面白い。 |
『情況証拠』 (網迫の「質より量」) (網迫の「質より量」(新館)) |
短編。情況証拠ばかりで確証のない困難な殺人事件を弁護する法学博士・青山周吉。真犯人を突き止めるため、ある手段に打って出た青山だが、見知らぬアパートの一室で、奇怪な死を遂げてしまう…。「本人の自白なくして、之を罰せますか」、「駄目だ。情況証拠にしかならない」。奸智(かんち)にたけた犯人の殺害トリック! 探偵役の謎の青年・松沢某を登場させたことで、面白味が増した。 |
『真珠塔の秘密』 (青空文庫) |
掌編。美術工芸品展覧会に出展された「真珠塔」が何者かによって模造品とすり替えられた! 犯人は高い窓から侵入していたと推測されたが、あれだけの塔を高い窓から運び出し、偽物を運び入れるなんてことが果たして可能なのかどうか? 「今度の事件は頗(すこぶ)る簡単だよ。君。つまり二から一引く一さ」。意表のすり替え方法が面白い。名探偵・橋本敏(びん)の活躍を描いた探偵小説。 |
『ニッケルの文鎮』 (青空文庫) |
短編。ええ、お話しするわ、あたしどうせお喋りだわ──。研究者でもある診察所の先生が何者かに殴殺された。兇器の文鎮に付いていた指紋と、先生の遺書から、犯人は高利貸の清水だと思われたが、実はそうではなかった。書生の内野と下村の推理によって、事件は意外な形で解決するのだが…。ニッケルの文鎮を使った巧妙なトリック! 世間を騒がせている泥坊「無電(ラジオ)小僧」の正体! 散り散りになった研究原稿を巡る騒動を描いた探偵小説。女性の独白形式(診察所の小間使い・八重の一人しゃべり)が楽しい。 |
『罠に掛った人』 (青空文庫) |
短編。高利貸しの玉島から借りた金の返済に窮した友木は、玉島を殺して自殺する決心をするが、玉島の家の前で大金を拾うという幸運に恵まれる。わくわく顔で帰宅した友木だが、「玉島を殺して自殺する」という妻・伸子の書き置きを目にし、大急ぎで再び玉島の家へ行くが…。「運命だよ。運命と云う奴はいつでも罠を掛けて待っているんだよ。それが人生なんだ」。運命という罠を巡るサスペンス。 |
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