このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください

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黒島伝治 (くろしま・でんじ) 1898〜1943。


渦巻ける烏の群  (青空文庫)
短編。極寒の西伯利亜(シベリア)に駐屯している日本軍。家庭恋しさに露西亜(ロシア)人女性の家に通う兵卒たち。愛嬌のあるガーリヤの家を訪れた松木と武石だが、よりによって大隊長とかち合ってしまう。大隊長の怒りを買ってしまった彼らは、パルチザンの巣窟がある過酷な地帯へ送られてしまう…。「中隊がイイシ守備に行かなけりゃならんのは誰れのためだと思うんだ! お前等、二人が脱柵(だっさく)して女のところで遊びよったせいじゃないか!」。悲劇を象徴する陰鬱な烏(からす)の群れが強く印象に残る反戦小説。

電報  (青空文庫)
掌編。息子の将来を考え、中学を受験させる貧農の源作だが、貧乏人のくせに生意気だと村中の評判になってしまう。「銭が仰山あるせになんぼでも入れたらえいわいな。ひゝゝゝ」と村人たちに皮肉られ、「子供を学校にやって生意気にするよりや、税金を一人前納めるのが肝心じゃ」と村会議員の小川に嫌味を言われ…。結末が何ともやるせない。金持ち連中の傲岸さに憤りを覚える。小川ムカッ。

二銭銅貨  (青空文庫)
掌編。独楽(こま)廻しに夢中になっている六ツの藤二。お母さんに新しい独楽の緒を買ってもらうが、二銭安い分、みんなのよりも短かった。家が貧乏なため、お寺の角力(すもう)を見に行けない藤二は、仕方なく家の手伝いである牛の番をするが…。「そんなに引っぱったら緒が切れるがな」、「ええい。皆のよれ短いんじゃもん!」、「引っぱったって延びせん——そんなことしよったらうしろへころぶぞ!」。ああすべきだった、こうすべきだったと、自分を責めながらこの先生きていかなければならないこと程つらく悲しいものはない。

「紋」  (青空文庫)
掌編。飼い猫の「紋」が、他家の魚を盗んだり、鶏をねらったりするようになったため、近所の村人たちにすっかり嫌われてしまったばあさん(おりく)。「捨てる云うたって、家に生まれ育った猫じゃのに可愛そうじゃの」。じいさんと相談して、仕方なく「紋」を捨てに行くおりくだが、「紋」は家に戻って来てしまう…。「今度見つけたら、見つけ次第に叩き殺してやる!」。猫好きの人には何ともやるせないお話。



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