酒井嘉七 - お気に入り読書ＷＥＢ

酒井嘉七（さかい・かしち）

『京鹿子娘道成寺』　（青空文庫）

短編。歌舞伎「京鹿子娘道成寺（きょうかのこむすめどうじょうじ）」の上演中、白拍子に扮した名優・岩井半四郎が、舞台の真中に伏せられた造りものの鐘の中で、何者かに殺害された。凶器となった三味線の撥（ばち）の持ち主・杵屋新次や弟子の新三郎らが取調べを受けるが…。傲慢で無慈悲な性格だった半四郎に強い恨みを持つ意外なる犯人は？　「道成寺」を題材にした本格ミステリー。

『静かな歩み』　（青空文庫）

掌編。「あすの朝までに一人殺してください」。八階・二十五号室「オベリスク社」の前を通り掛り、殺人依頼の会話を聞いてしまったガードマンの西山は、自分の中にいる残忍性を帯びた悪魔の心が飛び出してしまう…。警手が身に付ける巡回器の秘密と、殺人事件を推理する探偵役・坂部健作の正体は？　そして「オベリスク社」とは何の会社なのか？　どんでん返しが面白いユーモア・ミステリー。

『空飛ぶ悪魔』　（青空文庫）

掌編。「私はお二人とも同じほど好きよ」。恋人・沙里子と親友・清川と私（坂譲二）は、三角関係を解決するため、雑誌社が企画した飛行機による夜間の競技大会に参加することに。大阪国際飛行場を三機編隊で離陸した三人は、最初の目的地である飛行場を発見し、着陸を試みるが…。「…用意はいいか」、「うん、先に行くぞ」──。犯人の周到な計画と、思わぬ誤算を描いて面白い航空ミステリ。

『探偵法第13号』　（幻影城書庫）

短編。神戸の貿易商・ゴールドマンが射殺された事件の容疑者にされてしまった私（ゴールドマンの秘書）。ゴールドマンに強い恨みを持っていた私は、×宮警察署の土岐刑事の訊問によって、次第に追い詰められていく…。果たして私はゴールドマン殺害事件の犯人なのか？　「所で、このThirteenth Degree（探偵法第13号）ですが、あなたはどうお考えになります。第一回の試験では成功だった、と思われませんか、少なくとも、あなたと私とを親友にさせた、という点だけでも」──。殺人事件の意外な真相を描いた探偵小説。

『ながうた勧進帳（稽古屋殺人事件）』　（青空文庫）

短編。長唄の女師匠・杵屋（きねや）花吉が、稽古場で首を絞められて、殺害された。花吉の弟子の一人で、死体発見者である菓子屋の息子・幸吉に嫌疑がかかるが…。「幸吉さん、御心配なさいますな。私が、きっと、犯人を探してごらんに入れますわ」、「え、広ちゃんが……」、「ええ、私に思いあたることがございますの」──。「勧進帳」の唄（歌詞）がきっかけで事件が解決していく展開が鮮やか。

『両面競牡丹』　（青空文庫）

短編。三の宮の「でぱあと」で、もう一人の自分に出くわしたり、見覚えのない高価な指差が、いつの間にか居間に落ちていたり、不吉な出来事が続く中、小唄の師匠である私は、お弟子さんである資産家の御新造さまに連れられて、別府へ温泉旅行に出掛けるが…。「常こちらにもおくみさん。こちらにもお組さん。こりゃまあ、どうじゃ」──。常磐津の「双面（ふたおもて）」を巧く絡ませたミステリー。