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志賀直哉 (しが・なおや) 1883〜1971。 |
『赤西蠣太』 (新潮文庫「小僧の神様・城の崎にて」に収録) |
短編。仙台藩で起きたお家騒動「伊達騒動」前夜──。伊達兵部の家来・赤西蠣太(かきた)は中年の醜男。実は密偵である彼は、怪しまれずに仙台を離れるため、若くて美しい腰元・小江(さざえ)に恋文を書き、フラれて恥をかき、屋敷に居たたまれなくなって夜逃げするという計画を実行するが…。「私には新しい感情が湧いて参りました」。もてない男に希望をもたらす、そんな素敵な時代小説。 |
『城の崎にて』 (新潮文庫「小僧の神様・城の崎にて」などに収録) |
掌編。山手線にはねられ、重傷を負った自分は、療養のため城崎温泉に出掛ける。死んだ蜂や殺された鼠のこと、投げた石がたまたま当たってイモリが死んでしまった出来事を考える…。偶然に死ななかった自分と、偶然に死んだイモリ…。「生きている事と死んで了っている事と、それは両極ではなかった。それ程に差はないような気がした」──。生死の境を経験した作者の心境を描いた代表作。 |
『好人物の夫婦』 (電子文藝館) |
掌編。「旅行おしんなってもいいんだけど、いやな事をおしんなっちゃあいやよ」、「そりゃあ請け合わない」、「そんならいや。もう、いやいや」。そういうこと(不倫)を仕兼ねない危険性のある(というか現にしてきた過去がある)良人(おっと)と、そんな良人の性格が悩みの種になっている細君。若い女中の滝が妊娠するという“事件”が起きて…。“好人物の夫婦”に生じた要らざる“危機”を描いて面白い。 |
『佐々木の場合』 (新潮文庫「小僧の神様・城の崎にて」に収録) |
短編。山田家で書生をしている僕(佐々木)は、お嬢さん(山田家の幼い娘)の子守りをしている少女・富(とみ)と関係を持つ。「キッスだけよ」、「当り前だ」。僕が富を呼び出して、接吻しているわずかな間に、お嬢さんが大きな火傷を負うという悲劇が起きてしまう…。「十六年前に御別れした佐々木です」──。自分の妻になることが彼女の幸福だと考える男の苦悩(エゴイスティック)を描いて印象的。 |
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