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浜尾四郎 (はまお・しろう) 1896〜1935。


悪魔の弟子  (青空文庫)
短編。多量の催眠薬を飲まないと眠れない体質になってしまった私(島浦英三)。貞淑で従順で善良である妻・露子を理不尽にも憎むようになった私は、再会を果たした初恋の女・石原すえ子を愛するようになり、彼女の家に入り浸りとなる。催眠薬を使った完全犯罪によって露子の殺害を計画した私は、いよいよ実行するが…。「彼女は恐らく薬に関しては知識はあるまい、従って私が彼女に之を呑ませても気が付く筈はないのだ」。あの不思議な偶然の一致! 憎い妻と愛しい女!──。犯人にとってあいにくすぎる展開が面白い。

彼が殺したか  (青空文庫)
中編。相州K町の実業家・小田清三と妻・道子が別荘の二階の寝室で殺害され、道子と姦通していた大学生・大寺一郎が現行犯で逮捕される。道子が他の男に心移りしたことに憤慨しての犯行だと自白した大寺は、死刑となり、事件は完結する。大寺の弁護を担当した私は、彼の手記(遺書)を入手し、彼が嘘の自白をして、わざと死刑になったことを知る…。「法律家達よ。今こそ俺は真実をいう。君等は罪なき男に死刑を言渡した。俺は全く無罪なのだ」。不仲だと噂されていた夫婦の仰天すべき秘密! 小悪魔に翻弄され、法律を呪う青年の復讐と葛藤! 「一郎さん、あなた馬鹿ね。ほんとうに、ほほほほ」──。殺人事件の意外な真相を描いた秀作ミステリー。

彼は誰を殺したか  (青空文庫)
短編。妻・綾子と従弟(いとこ)・吉田豊との仲を嫉妬した某省役人・中条直一は、不慮の死を装って吉田を崖から転落死させるが、一年後、吉田の兄・細山伯爵が運転する車にひき殺されてしまう。事件は中条の自殺と判断され、細山は不起訴となるが、大谷検事はある仮説を細山に話し始める…。「神のいたずら?……自然の皮肉?」──。二つの事件の意外な真相を描いた探偵小説。

殺された天一坊  (青空文庫)
短編。立派な裁きで名高い江戸町奉行・大岡越前は、相次ぐ冤罪(えんざい)で自信を失いかけるが、自分に対する人々の盲目的な信仰という力を知り、自信を取り戻す。「悪人だから処刑になるのか、処刑になるから悪人なのだか、判るか」。徳川吉宗の落胤(らくいん)だと主張し、世間を騒がせた天一坊(てんいちぼう)を、「天下の御為」に裁く大岡越前だが…。大岡越前の苦悩と、天一坊の悲痛な運命…。人が人を裁くことの理不尽さを描く。 →菊池寛「奉行と人相学」 →林不忘「魔像 新版大岡政談」
→江見水蔭「備前天一坊」 →直木三十五「大岡越前の独立」 →山本周五郎「長屋天一坊」

殺人鬼  (青空文庫)
長編。
実業家・秋川駿三の長女・ひろ子からの依頼を受けた私立探偵・藤枝真太郎。駿三が何者かに脅迫され、神経衰弱になってしまったというのだ。

「ほほほほ、藤枝さん、余計なことに手を出すものじゃありませんよ。秋川家のことには手をお出しなさいますな!」。

秋川家を舞台とした連続殺人事件! 駿三の妻・徳子が毒殺されたのを皮切りに、長男・駿太郎、女中・さだ子が相次いで殺され…。

「オイ。いよいよグリーン殺人事件になって来たね」、「うん、似た所もあり、大いに違ってる所もありだよ」。

秋川一家というテーマの上に組み立てられた殺人シンフォニーは、遂に第三楽章へ…。

「風呂場の花嫁! おそろしい! 風呂場の花嫁!」、「ジョセフ・スミスだ! 風呂場の花嫁!」。

駿三がひた隠しにする秋川家の秘密とは一体? 過去をめぐる宿命の三角形!

「恐ろしい運命のいたずらだ。宿命の三角形だ。幾世の前からさだめられた深刻な運命だ」。

ひろ子と異母妹・さだ子の不仲…、さだ子の婚約者・伊達正男の素性…、藤枝の競争者である探偵・林田英三との推理対決…。

「父子、肉親! 世にこれほど大切な神秘的な重大なものでいて一方これほどたよりないものはない」──。

比較的、犯人が推理しやすい作品だという評を知りつつ読んだのだが、どうしてどうして、単純な私は、意外な犯人にビックリ! あの二人の内のどちらかが犯人だろうと思っていたんだけど…。犯行動機やトリックに弱さを感じるものの、全体的に古さを感じさせない内容で、最後まで気持ちよく楽しめました。作中、ヴァン・ダインの探偵小説「グリーン家殺人事件」のネタバレの記述があるので、未読の方はご注意を。ちなみに私は「グリーン〜」を読む前に「殺人鬼」を読んでしまいました。シマッタ(笑)。

死者の権利  (青空文庫)
短編。痴情のもつれから、カフェーの女給・秋田小夜子を突き飛ばして、死亡させてしまった実業家の息子・須山春一。殺人罪ではなく、傷害致死罪が適用され、懲役二年、執行猶予五年の判決となり、春一は実刑を科せられずに済み、事件は終結するのだが…。死人に口なしをいいことに、死者の人格を散々こき下ろす法廷への憤慨…。「清きままに殺された者は不正者を罰していいと思います。否、それは清浄なりし者の権利です。正しくそれは死者の権利であります」──。目には目を、法律には法律を、的な展開が面白い。

正義  (青空文庫)
短編。宿泊客・松村子爵を殺害した強盗殺人の容疑で起訴されたホテルのボーイ・森木国松の弁護を引き受けた弁護士・衣川柳太郎。大学の後輩で戯曲家の清川純の訪問を受けた衣川は、清川の知人Aが、実は事件を目撃していて、森木が無実であることを知っている事、しかし深い理由があって、Aはこの事実を訴え出ることができない事を聞かされるが…。「僕はただ正義をふみにじる事を恐れるばかりだ。この場合如何なる犠牲を払っても、森木国松を救うことが一番正しいことに違いないのだ。よし、君との妥協は不可能だ。あすにもEホテルについて取調べて必ずAの正体をつきとめてやる」。思いも寄らない展開! 正義(justice)とは何かを考える。

黄昏の告白  (青空文庫)
短編。結婚は平和な墓場ではない。静かな休息所ではない。結婚は恐ろしき呪いだ──。劇薬自殺事件を起こし、病院に担ぎ込まれた戯曲家・大川竜太郎。彼はなぜ自殺を企てたのか? 半年前、強盗犯に妻・蓉子を殺されたショックが原因だと思われたが…。黄昏(たそがれ)の病室で、親友である医師・山本正雄に、強盗殺人事件の意外な真相を告白する大川だが…。「大川、僕は君になんでもいう、だから君も最後にほんとうのことを云って死んでくれ!」──。どんでん返しのラストが楽しめる探偵小説。

途上の犯人  (青空文庫)
短編。「私がひろ子を殺そうと思い付いたのは、偶然あなたの探偵小説を読んだ時なのです」。法律家で探偵小説家の私は、列車に乗り合わせた田舎教師・相川俊夫から、彼が遂行した完全犯罪について打ち明けられる。妻・敏子の不義を疑い、二歳の娘・ひろ子を殺害してしまった相川の苦悩と悲劇…。「あなたは犯罪の方法を教えた。殺人をはっきり教えた。しかし、良心を捨てる事を教えなかったじゃないか」。探偵小説家は教唆犯人?──。二転三転の展開が楽しめる探偵小説。

夢の殺人  (青空文庫)
短編。「どうしたって此の儘ではおけない。…いっそやっつけちまおうか」──。新宿のレストランN亭のコック・藤次郎は、同僚の女給・美代子と仲良くなるが、新米の美青年・要之助の出現で状況は一変してしまう。要之助さえいなくなれば美代子は再び自分に好意を見せるだろうと考えた藤次郎は、要之助の病気(夢遊病)を利用した完全犯罪を企てるが…。──正当防衛ハ不正ノ侵害ニ対スルコトヲ必要トスル。責任無能者ノ行為、犯意過失無キ行為ニ対シテモ正当防衛ハ成立スル──。「正当防衛」を題材にした犯罪小説。



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