このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください |
平林初之輔 (ひらばやし・はつのすけ) 1892〜1931。 |
『アパートの殺人』 (青空文庫) |
短編。東京キネマの女優・山上みさをがアパートの自室で絞殺された事件。彼女と関係のあった三人の男(野球選手の神村進、雑誌記者の村井保、実業家の松木久作)は、いずれも犯行を否認するが、陳述と事実の相違が次第に明らかになっていく…。主に関係者の証言だけで構成された推理小説。女の部屋で実は三人の男たちが“鉢合わせ”していたというシチュエーションが漫画チックで面白い。 |
『オパール色の手紙』 (青空文庫) |
掌編。また手紙が来た。あの恐ろしいオパール色の手紙が──。夫宛てに届く手紙を盗み読んだ妾(わたし)。夫は愛人と頻繁に愛の文通をしていた。激しい嫉妬と苦痛を感じる中、女の手紙がまた届く…。普通のどんでん返しものとは一味違った心理サスペンス。 |
『犠牲者』 (青空文庫) |
短編。「君は昨夜、浅野護謨(ゴム)会社の小使を殺したろう?」。無実の罪で警察に拘引されてしまった会社事務員の今村謹太郎。殺人事件の真相を推理する弁護士の私だが、友人の瀬川秀太郎は意外な解釈を披露する…。人間の過誤の犠牲となる善良すぎる男の悲劇! 「今の社会に生きてゆくためには、もう少し悪ずれのしていることが絶対に必要である」。人間社会の現実を描いた推理小説。 |
『少年探偵 呉田博士と与一』 (青空文庫) |
掌編。幼児が次々と誘拐される謎の事件。呉田博士が養っている不良少年に嫌疑が掛かるが…。呉田博士の論文をきっかけに事件を解決していく少年・浅田与一君の活躍を描いた探偵小説。中学生の与一君と警察官の父親との会話による展開が軽快で楽しい。 |
『人造人間』 (青空文庫) |
短編。「今度の実験は私の生命と名誉とをかけての実験ですから、万一しくじったら私は何もかも破滅なんだから」。試験管の中で人造胎児を育てるという世界的にセンセーショナルな実験を進行している村木博士。妻も子供もある村木と不倫関係に陥った助手の内藤房子は、村木の子を孕み、出産するが…。家族を捨てる事も、愛人と別れる事もできず、紳士としての体面を気にする男の破滅を描く。 |
『探偵戯曲 仮面の男』 (青空文庫) |
短編。戯曲。世間を騒がせている“仮面強盗”を利用して、自邸で開く園遊会を盛り上げようと考えた成金実業家・青木健作。仮面強盗に化けて、皆を驚かせようとするが、本物の仮面強盗が現れて…。「自分の生活の保障もたたんうちに、恋だとか愛だとかいう人並みな考えを起こすのはよしたがいいぞ」、「何をっ!」。金持ちの宝石・貴金属しか盗まない仮面強盗の正体と苦悩(復讐の是非)を描く。 |
『謎の女』 (青空文庫) |
短編。「あたし、妙なお願いなんですけれど貴方の奥さんにして、どっかへつれてって下さらない?」。熱海のホテルで出会った謎の女「山野さん」からの意外な頼みに、驚きながらも承諾した新聞記者の島龍之介。偽名を使って姿を隠しているという彼女を連れて、東京のホテルに移った龍之介は、奇妙なアバンチュールに胸を躍らせるが…。なかなか面白い展開だと思ったところで残念ながら未完。 |
『夏の夜の冒険』 (青空文庫) |
掌編。線路の土手にうずくまっていた九歳の子供(しげる)を保護した会社員の私と同僚の時国。ぶたれるから家に帰りたくないという子供をカフェに預け、二人は子供の家を訪ねるが…。親になってはいけない親の存在と、親を選べない子供の不幸…。実に今日的だ。 |
『秘密』 (青空文庫) |
短編。四年前に結婚を約束したまま離ればなれになっていた元恋人の浅田雪子からの突然の手紙。外務省の翻訳官である三浦は、妻のみな子には内緒で、雪子に会いに横浜へ行くが、電車の中で、妻にそっくりな女を見かけたり、ホテルの中で、妻と同姓同名の女が現れたり…。自分の秘密を知られたくない男が、期せずして妻の“秘密”を知ってしまうという意外な展開が面白いミステリー。 |
『山吹町の殺人』 (青空文庫) |
短編。牛込区山吹町に住む元カフェの女給・朝吹光子が殺害された。光子の生活を援助していた役人・大宅三四郎は、同棲している許嫁の嘉子が、嫉妬に駆られて犯行に及んだのではないかと疑うが…。犯人が弄したアリバイ工作(列車トリック)を看破する私立探偵・上野陽太郎の活躍を描いた探偵小説。推理ものとしては今一つだが、互いに犯人だと疑い心配する三四郎と嘉子の心理が面白い。 |
『予審調書』 (青空文庫) |
短編。空き家で発見された女性の変死体。過失による殺人を自首した息子を助けたい原田老教授は、息子の精神異常を主張するが、篠崎予審判事は、冷ややかな調子でそれを否定し、原田をさんざん苦しめる…。「せがれはどのくらいな罪になるのでしょう?」、「謀殺となると、まず、九分通り死刑ですかね」。玄関で殺された死体が、どうして台所へ移動していたのか? 二転三転の展開が面白い。 |
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