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広津柳浪 (ひろつ・りゅうろう) 1861〜1928。


今戸心中  (青空文庫)
中編。
死ぬほど惚れている馴染みの平田(学生?)と余儀なく別離(わかれ)た吉原の娼妓(おいらん)・吉里(よしざと)。故郷(くに)へ帰ってしまった平田のことをどうしても断念(おもいき)ることができない彼女は、深く人生の無常を感じる。

「平田さんと別れちゃ生きてる甲斐がない。死んでも平田さんと夫婦(いっしょ)にならないじゃおかない。自由にならない身の上だし、自由に行かれない身の上だし、心ばかりは平田さんの傍を放れない。一しょにいるつもりだ。一しょに行くつもりだ。一しょに行ッてるんだ。どんなことがあッても平田さんの傍は放れない。平田さんと別れて、どうしてこうしていられるものか。体は吉原にいても、心は岡山の平田さんの傍にいるんだ」。

吉里がずっと冷遇してきた客・善吉(古着屋の中年男)が、吉原通いが原因で破産したことを知った吉里は、平田への恋しさと相成って、善吉のことを気の毒に思うが…。

「西宮さんと言やア、あの人とよく一しょに来た平田さんは、好男子(いいおとこ)だッたッけね」
「吉里さんは死ぬほど惚れていたんだね」
「そうだろうさ。あの善さんたア比較物(くらべもの)にもなりゃしないもの」
「どうして善さんを吉里さんは情夫(いいひと)にしたんだろうね。最初は、気の毒になるほど冷遇(いやが)ッてたじゃアないかね」。

二枚の写真で誠の心を表すラストに感涙。深く心に沁みる心中ものの名作。



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