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森田草平 (もりた・そうへい) 1881〜1949。


四十八人目  (青空文庫)
中編。
吉良邸への討ち入り準備に余念がない大石内蔵助ら赤穂浪士たち。大事を抱えた身でありながら、茶屋で働く娘・おしおと関係ができてしまった義士・毛利小平太の苦悩…。

「どんな苦労でも厭いませぬから、どうかわたしをおそばへ引取ってくださいませ。一人の母にさえ別れては、こうしているのが女の身では心細うてなりませぬ」。

相次ぐ脱盟者…、兄・新左衛門の反対…、おしおの妊娠…。果たして小平太は、“籾(もみ)”であるのか、それとも“糠(ぬか)”にすぎないのか?

 「そうだ、俺はまだ死ぬ覚悟がついていないのだ! ついていなければこそ、こうして亡者のようにふらふら歩き廻っているのだ。だが、死ぬ覚悟をするために、俺はどれだけ苦しんできたろう? なるほど、俺は命が惜しい! 生れついての卑怯者かもしれない。だが、命が惜しいからといって、俺はまだ一度も命を助かろうとしてもがいた覚えはない。ただどうしたら命が捨てられるか、安んじて死んで行かれるかと、ただそればかりを今日まで力(つと)めてきた。それがためには、俺はかわいい女房をも殺そうとした。兄に大事を打明けたのも、じつはそのためだ。それでいながら、俺にはまだ死ぬ覚悟がつかない——この期(ご)に及んで、この土壇場に莅(のぞ)んで! 俺はいったいどうしたらいいのだ?」。  

“四十八人目”の男の「心の動揺」(人間が持つ心の弱さ)を見事に描いた忠臣蔵物の好編。



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