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渡辺温 (わたなべ・おん) 1902〜1930。


赤い煙突  (青空文庫)
短編。可哀相なあたしの赤い煙突──。部屋の窓から見える三本の煙突を眺める病弱な少女は、一度も煙を吐かない真中の赤い煙突を、まるで自分のように感じていた。煙突の邸に住む青年と親しくなった彼女は、赤い煙突から煙が出るようになったことを喜ぶが、青年は彼女の前から去ってしまい、赤い煙突も再び煙を吐かなくなってしまう…。どんな悲しみも消えうせるほどに悲しすぎる物語。

或る母の話  (青空文庫)
掌編。ある商事会社に就職した智子は、物心がつく前に死んだ父親にソックリの青年技師・浅原礼介と出会い、恋に落ちる。浅原と婚約した智子は、母親に彼を引き合わせるが、衝撃の事実を知ることとなる…。「ねえ、お母さん、お父さんに似ているとお思いにならなくって?」、「ほんとうに、そっくりでいらっしゃること──」。一途に貫き通した純愛が美しくも物悲しい。どんでん返しものの好編。

アンドロギュノスの裔  (青空文庫)
掌編。有名な映画女優に身分不相応の片恋(かたおもい)をした下士官のY君。女優の家を眺めるのが休日の日課となるが、女優の家の女中・ベアトリイチェに恋していると勘違いされてしまう。成り行きで彼女に告白してしまうY君だが…。「いやいや、飛んでもない。そんな大それた願いを、どうして僕が抱くものでしょうか。は、は、は、は……」。とほほな恋のてん末と青春の終焉を描いた悲(喜)劇。

イワンとイワンの兄  (青空文庫)
掌編。父の遺言に従い、イワンの兄が全ての財産を相続し、出来の悪いイワンには「行末」の入った銀の小箱の鍵だけが渡される。兄の婚約者である美しい娘に恋をしたイワン。銀の小箱の鍵が欲しい兄は、鍵と交換に娘をイワンに譲ってしまうが…。考え深い父がイワンのために遺した、食うに困らぬ安楽な「行末」とは一体? こうなることを予見していた父は偉い!? 教訓めいた話が面白い。

 (青空文庫)
掌編。銀座通りを散歩中、穴のあいたオレンジ色のジャケツを着た少女と出会った井深君。食事をおごってあげた彼は、外套を買うお金をあげようとするが、少女は受け取ろうとしない。少女にお金をあげる立派な理由(わけ)があるという井深君は、ある日の出来事を話すが…。「…まあ、あなた! とてもいいネクタイピンをしていらっしゃるわね」、「これかい?」──。嘘のてん末&大ドンデン返し。

遺書に就て  (青空文庫)
短編。洋画家・葛飾龍造と、葛飾の妻・美代子、葛飾の同居人・小野潤平の三角関係の末に、小野が葛飾の画室で死亡した事件。美代子の陳述によって、小野がピストル自殺したものと思われたが、自殺に見せかけた他殺に違いないと考えた刑事は、葛飾のアリバイを調べる。そして、真相を突き止めたかに思えたが…。どちらが犯人? それとも…。二転三転のストーリーが楽しめるミステリー。

可哀相な姉  (青空文庫)
掌編。口のきけない姉と二人きりで暮らす少年。女優に恋した彼は、髭(ひげ)を生やし始めるが、なぜか姉は彼が大人になることを嫌う。髭を生やすことがなぜいけないのか? 姉の商売(花売り)に疑問を抱いた彼は、彼女を尾行するが…。「姉さんの花を売るところを僕に見せて下さい」、「バカ!」──。大人になるということが、どんなに悲しいことであるかを思い知らされる、そんな残酷な物語。

 (青空文庫)
掌編。海岸のホテルで出会った青年を見初めた女優。「あなたに、もしや、お兄さんが一人おありになりはしませんでしたろうか?」。青年から声をかけられた女優は、意外な話を聞かされる。幼少の頃に別れ別れになった女優の兄が、妹とは知らずに女優に恋をしているという。それを知った女優は…。「そう、そう……ですけれども、ああ、それが、それが……」。内気な青年の恋の冒険を描いて快い。

四月馬鹿  (青空文庫)
掌編。四月馬鹿(エプリル・フール)を知らないという夫の文太郎に悪戯をして遊ぶ妻のエミ子。「江の島へ二人っきりで出かけるの厭? 富士山や海が見える媾曳(あいびき)」。文太郎のメモを盗み読みしたエミ子は、文太郎が浮気をしに外出したことを知り、不安で江の島まで行くが、どこを探しても文太郎の姿は見当たらない…。文太郎の“怪しい所業”の種明かしは? オチが楽しいユーモア小説。

少女  (青空文庫)
掌編。赤坂を散歩中、料理店で何やら口論している現場に出くわした内気な青年・井深君。空色の水兵服を着た不良少女が無銭飲食したというのだ。その少女は、井深君が片想いしている園田男爵の娘・チエ子にそっくりであった。少女を救ってやる井深君だが…。「いい子にならなくてはいけない…ねえ、わかったかい…じゃあ、さよなら…」。“思い込み”が人間を大胆にするという、とってもいい話。

勝敗  (青空文庫)
短編。肺病の弟・旻を看病する兄・晃一の妻・幸子。幼い頃から晃一の許嫁として、兄弟と一緒に育てられた幸子は、学生時代に旻と駆け落ちしたことがあった。「あたし、死にかけた人間なんかに恋しなくってよ!」。断崖から転落死した幸子は、果たして過失死か? 他殺か? 自殺か? 幸子は晃一と旻のどちらを愛していたのか? 二転三転の真相は? 三角関係の悲劇を描いたミステリー。

象牙の牌  (青空文庫)
短編。命を狙われているので遺言状を作成してほしいと俳優・清水茂から依頼された弁護士・西村敬吉。七年前、上海で厳しい則(おきて)のある秘密倶楽部に入った清水は、麻雀で大勝ちし、負けた相手の男から高価な「象牙の牌(ふだ)」を貰うのだが…。「では、お気の毒ながらやっぱり遺言状をお作りしてあげなけりゃなりますまい……僕にはどうも、それ以上、お力になる事は出来ません。相手は象牙菊花倶楽部ですもの。どうしたって——左様、金輪際君の命は助かりませんね」。“小説的約束”を破る意表のラストが面白い。

花嫁の訂正  (青空文庫)
掌編。隣り合った新居に住む二組の新婚夫婦。一緒に外出したのがきっかけで、加速度的に惹かれ合ってゆくAとBの細君。二人の仲を知った生物学者のBが実行する“計画”とは? 「Bが僕に復讐を決心したのなら、平気でそれを受けて見せます」、「なぜ、神さまは、最初にあたしとあなたとを会わせて下さらなかったのでしょう」──。シリアスものかと思いきや、どんでん返しのラストが楽しい。

風船美人  (青空文庫)
掌編。上野の博覧会の軽気球に乗るのが日課となった私は、やはり毎日乗りに来る西洋人・ミハエルと懇意になる。双眼鏡を覗き込んで、“地上の宝”とやらを探しているというミハエル。博覧会の最終日、遂にその“地上の宝”を見つけるが…。「おお、地上の宝よ! 私の生命よ!」、「どれどれ! 何処にいるのですか? 私にも見せて下さい」──。奇蹟は起こらない方がいい場合もあるようで(笑)。

浪漫趣味者として  (青空文庫)
掌編。優美なロマンティストの生活に憧れていた私は、生粋のロマンティストであるH氏と懇意になり、指導を受ける。その甲斐あって、酒場の美しい女給「星の花」からデートに誘われた私は、彼女にどんな指輪をプレゼントしたらいいかH氏に相談するが…。「併し、ロマンティストとして、それはあまり…」、「いやいや、僕は生え抜きのロマンティストですから」──。ロマンティストって一体…(笑)。



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