このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください

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矢田津世子 (やだ・つせこ)1907〜1944。


女心拾遺(おんなごころしゅうい)』  (青空文庫)
短編。常は無駄口の少ない老夫・唐沢周得が、近ごろ妙に浮き立って、上機嫌であることに不安を感じる老夫人・伊予子。良人(おっと)と女中・おしもの関係に気づいた老夫人は、激しい嫉妬を覚える。これまで良人の放蕩を自分の落ち度に考えてきた老夫人だが…。「おしものことで、この間から相談をしてみたいと思うていたけれど、あの娘ももう年頃ですからねえ、どこか堅気なところへ嫁にやりたいと思うて…」。十九の小娘に妬情を掻き立てられ、却って、気力の弾みを感じ、若やぐ老夫人の姿が面白い。妾(めかけ)の効用?

 (青空文庫)
短編。母が死んでから気難しくなった父の機嫌をなおすため、鉄工場のある新潟に父が囲っている妾・おきえさんを家に迎えたらどうかと提案する麻布の姉に、素直には頷けない紀久子。おきえさんは言わば、父と母が不和であった原因でもあったからだ…。「あの、わたし悪いところはどんどん仰言って頂きたいのですけど。わたし、紀久子さんの仰言ることでしたらどんなことでもききますわ」。父の妾であるおきえさんと、母の幼友達である老婦人・飯尾さんが同居するという風変わりな家に暮らす娘・紀久子の心情を描いて面白い。

凍雲(とううん)』  (青空文庫)
短編。学生時代からの付き合いで、お互いに惚れ合って結婚した仙太とお高だが、ふとした貸金のことから、親どうしの張り合いになり、お高は実家に連れ戻されてしまう。二人の仲人である柳屋先生が仲裁に入るも、徒労に終わり、二人は離婚させられてしまう…。「いいじゃないか、夫婦だもの」、「あえ、この人ったら! だれか見てるして」──。秋田にある小さな町・五城目(ごじょうめ)を舞台に、「家同士の結婚」の悲劇を描いた作品。しっかりした若者に成長した(らしい)仙一(仙太とお高の子)に期待することにしましょう。



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